第16話 バッシブスキルと伯爵位
キースの持っていたお金の換金のために、国営銀行へ来たが、冒険者ギルド同様に、グダグダな展開が起こってしまった。
換金は出来たのだが、神罰が起こってしまったのだ。
それも頭取と支配人が死んだのである。
クロートさんが仲介役として居たのにもかかわらず、俺の事をチンピラだと思い因縁を付けられ、俺がチート能力を使ってしまったのである。
冒険者ギルドでも酷かったがそれ以上に銀行職員の態度は悪かったので俺は切れてしまった。
結局神のご意向を逆手に、チート能力を使い幕を下ろしたのだ。
犠牲者が何人か出たけどそれは自業自得で仕方ないだろう。
「それじゃクロートさん帰りましょうか」
「そうですね。新しく取締役がかわったせいですか。
国営銀行がこんなに腐敗しているとは私も思いませんでしたよ。
私も上の方に報告しなければなりません。
神罰が当たって当然です。
私も神罰が当たった事に納得できます」
「そうですね、ここまで酷いとは神も見ているのでお怒りになったのでしょう。
職員の方々、気を付けた方が良いですよ。
失礼します」
俺達は国営銀行の店を出る。
国営銀行の中は冒険者ギルド同様に静まり返り、銀行員、一般客が青ざめて震えているのだ。
神の意向により銀行の職員数人と頭取、支配人、その他チンピラが数人が死んだのを目のあたりにしていたのだった。
・・・
今回も酷い目にあったな、しかしそのせいかわからないが俺のチート能力が進化したかも知れない。
新たに自動発動 が追加されたようなのだ。
銀行での交渉がいきずまり、途中に変なやつらが乱入しようとこちらへ来たのだ。
おそらくだが、冒険者ギルドと同じく銀行側がチンピラまがいの男を俺達にけしかけに来たんだろう。
しかし、俺が能力を使う前に倒れて動かなくなってしまった。
殺気を感じて、俺のチート能力が無意識の危険を察知し、発動したみたいだ。
今回、自分の意思ではチート能力を使っていなかった。しかし、チート能力に関して心当たりがあったのだ。
クロートさんに国営銀行に案内されている途中、嫌な予感がふとよぎった。
冒険者ギルドで、さすがにやりすぎてしまったのではないかとな。
もしかしたら、冒険者ギルドに恨みを買い、闇討ちで暴漢が襲ってくる可能性もあるかと思ってしまったのだ。
いきなり暴漢に襲われては対応ができない。
そのために、自動的にチート能力が使えればいいのになあとずっと考えていた。
自動発動 スキルが使えれば、暴漢が襲ってきても大丈夫だろう。
俺に危険が及んだら発動する自動発動 スキルがあれば・・・
考えていたらそれが現実に使えたのだ。
偶然かどうかわからないが交渉の途中、がらの悪いチンピラが殺気をはなって近づいて来たのだ。
俺に対し殺気を放った、その時点で近づいて来たチンピラどもは突然倒れてしまった。
客が倒れだしたのを見て、悲鳴をあげた時振り返ってみたら倒れていたのがわかった。
チンピラの人数と場所がわかったのはそれからで、私は全員の事は把握していなかった。
それも結構距離がある場所に倒れているやからもいた。
銀行員が大丈夫かと名前を言って開放していたので、銀行の関係者だとやはり推測される。
迷惑客を追い出す。ボディーガードで雇っていたものだろうな。
その為に職員以外に9人のチンピラが神罰を受けた。
・・・
今はクロートさんにキースが契約している宿屋に案内されている。
借りていた宿屋も料金先払いで契約をおこなっているらしく、それも引き継ぎ契約が切れるまで俺のものになったのだ。
契約がきれるまで宿屋を利用しておこうと思っている。
宿屋に付く前に自動発動スキルの事を考えておこう。
本当に使えるのであったらで条件を指定をしておいた方が良いだろう。
試しだ、発動条件を考えておくか。
自動発動スキルの発動条件は俺に危害を加えようとするものをチート能力の発動対象とする。
また俺が指定する者に対しても同じチート能力が自動で発動する。
範囲指定は能力が届く全範囲で発動する。
任意で外した者は能力はどのような時でも発動しない。
今はこのような条件を考えているのだ。
3人のエルフの少女たちが俺の元にきたので、彼女たちにも危害を加えるものにも同じようにチート能力が発動する事にした。
俺の安全もそうだが彼女たちの安全を確保したい。
しかし、彼女達が俺を攻撃した場合は発動はしない。
俺が彼女たちを引き取ったのだ。俺に危害を加えるのだったらなにか不備があったのだろう。
それだったら攻撃されても仕方がなく、自業自得になるので彼女たちは除外した。
それにあんな奇麗なエルフの娘さんたちに殺されても良いなと、変な考えが浮かんでしまったのだ。俺っておかしいだろうか。
俺は一度は言われてみたい言葉がある。貴方を殺して私も死ぬ。
怖い話だけど、死ぬまで思われたいほど愛されているならば羨ましいと前から思っていたのだ。
そこまで俺の事を思ってくれる女性に会いたいなと思っているしだいだ。
まてよ、俺のチート能力ってオールマイティで使えないよな。
この世界に脳みそがない幽霊など存在した場合効きめはない。そこが怖いところだな。
天使? 小悪魔がいるので幽霊がいる可能性が高い。
ゲームでいる死霊系は効果がないだろう。
先日倒した人面木樹 にはチート能力がきいたな、脳みそあったのか? そこがちょっと不可解に思っている。
それはそれで、能力がきいたので良いかな。あの時発動しなかったら確実に死んでいたからな。幸いな事だったのかも知れない。
それにチート能力が上がっているらしい?
自動発動 スキルで発動した時にかなり遠くに居たものまで倒れたのだ。
キースと戦った時は、最大範囲の10メートル前後だったと思われる。
今は、20メートルくらいに範囲が広がっている。
経験値が入りレベルが上がったのか?
チート能力を使うたび経験値がはいる? それって人が死ぬたび経験値がはいってくるというのか。
俺のチート能力って危なすぎるな。
人を殺すたびに能力があがる可能性があるのかも知れない。
それも自動発動スキルでおこなって勝手にレベルがあがってくれる。
楽で便利なのは良いが恐ろしい仕様になっているな。
これは本当に出来るのかが、はっきりわかっていないが、後々検証していこう。
でも検証するにも、人を殺さなくてはいけないので怖い話だな。
「アンドウ様、ここのホテルになります。
私が話をつけてきますので少々お待ち下さい」
「頼むよ、クロートさん」
へー、ここがキースが借りていた宿屋か、昨日泊まったホテルにはかなわないけど結構大きいな。
上流階級が利用するホテルって感じでいいね。
キースが契約した宿屋は残り半年くらいは自由に使える。料金は貴族という事で格安で借りているらしい。
もっともクロートさんいわく、貴族の場合お金を払わないのがあたり前だと聞いた。
払う事が珍しく、搾取する立場なので必要ないそうだ。
ここでの貴族ってどんな立場なんだろう?
俺はキースとの決闘で己のすべての物をかけて決闘をした。
その中にはキースが持っていた貴族の爵位も受け継いでいるみたいだ。
俺はキースに勝った時点で貴族になったのだ。階級社会のこの異世界ではぜひ欲しい位だ。
キースの家柄はかなり高く公爵家につらなるものだと聞いた。
王族とつながりがある家系だと言う。
? 公爵ってどういう立場の人か知らないけど王家に関係しているならば相当高い身分だよな。
キースは成人した時に伯爵の爵位を親からもらった。
伯爵位と領地をいただいたが、統治するのをいやがり家をでてしまった。
叔父に領地を譲って、自分は準伯爵の立場にいると言う話だ。
統治して税金を国庫に納めないと伯爵の地位は得られないみたいだ。
叔父に領地を譲り、かわりに国庫に税金を納めているので、準伯爵としてとおっているみたいだ。
準伯爵も伯爵と同じ立場の位と考えていいみたいだ。
? 伯爵ってどのくらい偉いの、俺には良くわからないがとりあえず持っていても良いだろう。
貴族の家に生まれ血筋だけで親からもらった爵位で地位がまかり通るとは嫌な世界だな。
その立場を使ってキースは好き勝手に冒険者家業をやっていたみたいだ。
見た目も、俺と同じで浮いていたし、貴族の威を借りて好き勝手にやっていたんだろう。
エルフの奴隷は貴族でも手に入れるのは難しいと言うらしいから、よほど悪いことを好きにしていたんだろうな。
一通り話を聞いて、クロートさんに退職金替わりの金を多めに渡した。
教会でキースの供養の手配をやってくれるようにもお願いした。
あとはキースを死んだ事を親族に知らせる役目も頼んでしまった。
クロートさんは元々キースに雇われたのではなく、監視目的で本家から雇われていたみたいだ。
何かあれば本家に報告をしていたらしい。問題があった時には本家が動いて金で対応していたみたいだな。
一族の中でも問題児だったみたいだ。
本家からの報復とか怖いのでキースを殺した俺のことはどうなのかと聞いたら、契約の神ミストラースの正式な決闘証明書があるので問題なくご安心下さいといわれた。
神の契約は絶対なので手を出さないと言われたが本当にそうなのかがわからない。
あとから報復があるかも知れないので怖い次第だ。
と言うかおれって冒険ギルドに喧嘩を売り、国営銀行にも喧嘩お売り、公爵家にも喧嘩を売っている?
なんかやばい状況ではないか、四面楚歌ってやつかよ。
改めて自分の立場をわかってきたのであった。
おれって絶対長生き出来ないな、せめて痛くないように安らかに死にたいなとネガティブに思ってしまった。
しかしどういう事だろう? 神って本当に存在するのか。
俺が見た神の使いは小悪魔に見えたけど、不可解な事が多すぎるな、情報がほしい。
帰るまぎわクロートさんはキースの髪の毛の一部を譲ってほしいと言ったので渡してあげた。
本家に持っていくそうだ。
教会での供養をクロートさんに任せてあるから、別にことわらなくても持っていっていいのにね。
冒険者ギルドで見て慎重になったのかな、勝手に髪の毛をもらっていくと神罰が当たると思ったのかも知れない。
俺が譲ってくれるのを確認して、最後に挨拶して去っていった。
去る前に家紋が入ったメダルの付いたペンダントを渡された。
それとキースから預かっていたアイテムとお金を渡してきた。
アイテムは何かわからないが受け取り、お金は手間賃だと言ってすべて渡してしまった。
メダルの付いたペンダントは家柄の証として、本家の人に渡されていたみたいだが、俺がもっていていいのだろうか?
とりあえず預かっておくか、これを使って悪事をはたらかなければ問題はないだろう。
そういえば、準白爵らしいがどのくらいの地位か聞いてみたら、このせかいでは神、大天使、天使、王族、公爵、伯爵、準伯爵、子爵、準子爵、男爵、準男爵、無役、と言う順で位の高さがあるようだね。
準伯爵って結構位が高くないか、驚いてしまったね。
それと無役の貴族と違って爵位持ちは生脱世脱権があるらしい。
生脱世脱権とはなんぞと聞いてみたらどんなことをしても平民など身分の低い者達を殺しても罪に問われないらしいな。
爵位がある者ってそんなに特権があるのか、怖すぎるだろうこの異世界、慎重に行動しないといけないとあらためて痛感する。
今日はキースが借りている宿屋で休むことにしよう。
契約が半年もあるのだ、せっかくだ有効活用しようと思う。
貴族の場合は搾取する立場だからお金を払わなくても問題はないみたいだ。
でも、それをやると突然に不審者に襲われ、お亡くなりになる事がまれにあるそうだからね。
恨みを買わないようにしよう。
俺はもう遅いかな。
クロートさんが事情を話してくれたのでホテルに入ろうとしたがトラブルにみまわれた。
3人の奴隷のエルフを入れようとしたら止められて、一悶着騒動があったのだ。
奴隷は宿屋の敷居さえまたぐことは許されないと言われてしまった。
哀願用に使うのだと言って裏口からなんとか入れてもらえた。
奴隷の立場は相当に低いみたいだ。宿屋にも泊まれないとは。
普段はキースが所持している馬車の中で寝ていると言う話をきいた。
幸いにも宿屋の敷地内に馬車が管理されていた区域があり、馬の世話係としていることを許されていたみたいだな。
この宿屋は最高級とは言えないが、高級な宿屋らしくそれなりの設備が整っていて、安全は確保できていたようだ。
それだけは救いだったみたいだ。
馬車もキースは持っていたので俺の物になった。移動が楽にできるようになったのかな。
でも、馬って世話が大変じゃないのか? コストも多くかかるよな。
それはエルフの少女たちに任せるしかないか、幸い金はあるので餌代は何とかなるだろう。
世話をするのが大変そうだが、俺は絶対にやりたくない。
まかせるとしよう。




