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第二章 45話 閉幕─サーカスの絆 ☆


 Bfの方々やMfの方々のお陰で動物達の大きな反逆は完璧に鎮圧された。しかし、この被害は決して小さいものでは無かった。


 死者47名、負傷者60名。



 中には一角雑技団、五つ子オーケストラ、ハーバートというショーをこなす貴重な団員も居た。


 今回の事件はバンシャの能力によっての犯行だという事実はノブの強い頼みにより他の団員に伝え無かった。代わりに今回の事件は、動物達の檻の不具合や老朽化によるもの。ということになった。


 今は団員達の供養をBARKERsが手伝っている。一人一人の団員をこの島の奥で焼いて埋めているのだ。


 シュウは一人、倒れた倒木に座り、頭を深く抱えて苦悩していた。



シュウ「……こんな終わり方……良いわけが無い…」



 シュウは自分が間接的にもバンシャを含めた団員を殺してしまったのだと苦悩する。



シュウ「もっと…もっと良いやり方があったはずだ…団長も死ない…良い方法が…」




 そして、頭のなかに巌鉄の言った足手まといの一言が過る。



シュウ「俺は…足手まといだからか…?」



 今回の任務を思い返して自分は何も出来ていないことを責める。そして、また人を殺してしまったことも頭に過りシュウの精神はズタボロになっていく。



シュウ「トモ…美香…俺は……」



 「そう悔やまないでくれ。」



 シュウは声がした方へ頭を上げる。そこには顔が疲弊しきっているノブが居た。体中、土や泥で汚れている。きっと、埋葬を手伝っていたのだろう。



シュウ「ノブさん…」


ノブ「シュウ…俺は今回の事はどこも、誰も恨んでは居ない。」



 ノブはシュウの隣に座る。そしてもう暗くなった綺麗な夜空を見上げて話を続けた。


ノブ「きっと皆も…ladyもそう思っているだろう。」


シュウ「でも…でも俺たちが来てなかったら…」


 ノブは手をシュウの前に出して続く言葉を遮った。


ノブ「じゃあお前たちのせいだと言っているようなものだぞ?」


シュウ「…はい……それも歪めない…」



 ノブは手を下ろしシュウの背中をポンポンと叩く。そして穏やかな口調で言った。


ノブ「俺は誰も悪いやつでは無かったと思っている。……誰のせいでもないんだ。今回の事は…団長でも…お前たちでも、勿論、動物達のせいでも無い。お前たちが来なかったら遅かれ早かれ何か起こっていたかもしれないしな。」


 そして一息いれてフッと笑いながら立ちあがる。


ノブ「それと…俺は最後に団長に会わせてくれたシュウに感謝してる。俺はあの時、会えてなかったらきっとマイクが全てを喰っていただろう。」



 そしてそのまま少し歩き、振り返らずに言う。


ノブ「俺はまた埋葬の手伝いをしてくる。一緒に来てくれないか?ハーバートもきっと喜ぶ。」



 シュウはノブの言った言葉に呆気を取られていた。ノブの言った言葉は心の救いになったが、予想していなかった言葉だからだ。


 シュウは立ちあがり、前を向く。


シュウ「すいません、ありがとうございます。少し…救われました…俺も行きます!」



 ノブは横目でシュウをチラリと見てフッと笑った。


-------------------



 埋葬には大分時間がかかった。空は少し明るくもなってきている。残った団員達は休まずテントを片付けていた。BARKERsの皆も掃除や片付けを手伝った。


 ただ、サーカスの主要メンバーは小さなテントで集まって今後の話をしていた。クランフランは噛まれた腕を三角巾で吊り、オジーは身体中包帯だらけだ。



オジー「なぁ…どうするよ?これから俺たち。」


アダ「どうする…か…」



 二人がこう言うとフランは大声を出した。


フラン「どうするって!?サーカスを続けていくに決まってるじゃん!!ハーバートにも、オジーにも助けてもらったこの命なんだから続けていかないと死んだ仲間に顔向け出来ないよ!」


クラン「フラン…」


オジー「お、おうよ、俺も死んじまったやつの為にも続けていくつもりだぜ。…そちらの二人はどうするよ。」


 アダは目を瞑り考え込む。ノブはテンポが少し遅れて声をあげた。


ノブ「……俺もやる。」


オジー「アダは?アダはどうする。」


フラン「まさかやらないなんて言わないでしょうねアダ?」

クラン「こら。フランせかさないよ。」

フラン「ごめんお姉ちゃん。」


 

 アダは眉間に皺を寄せ、視線を下にして答える。


アダ「……考えさせてくれ。」


オジー「マジかよアダ!」

フラン「アダ!!」

クラン「アダさん…」


ノブ「……」



 アダは立ちあがり、一人外に出てしまった。



--------------


 片付けも終わり、BARKERsの皆も出発の準備を進める。もう午前の8時になってしまった。流石のBARKERsの面々も疲労困憊という感じだ。ヘリが近くに止まっており、サーカス団の皆は見送ろうと集まっている。


剣崎「おら、さっさとずらかるぜ。」


エミリア「はぁ疲れた。やっぱ肉体労働はやりたくありませんね、ダン?」


ダン「ハッハッハ、まだまだだなぁエミリア!僕はまだまだ働けるぞー!」


エミリア「流石ダン!愛してる!!」


剣崎「…お前らずっと寝てたじゃねぇか。」



 ワグはヘリの操縦士に担架ごと運ばれていく。


ワグ「なんて不遇な扱い…じゃあな!サーカス団の皆!」


オジー「じゃあな!HERO!楽しかったぜ!」



 小張はクランフランと最後に話をしていた。



小張「クランさん、フランさん。本当にごめんなさい。鎮圧や救出がもっと上手くいっていれば…」


 クランフランは怪我をしていない方の手を差し伸べ握手を望む。それに小張は答え、ギュッと握手をする。


クラン「確かに大変な事が起こってしまい、沢山の死者や損害が出ました…でも、」

フラン「私達や残された人達の団結は強くなった。そんな気がするわ!少なくとも私達の絆は強くなったわ!ね!お姉ちゃん!」


 フランはクランに頬をすり寄せる。


クラン「こらこら…でも…まだまだあなたと一緒に居たかったわ、小張さん。」

フラン「私もあなたともっと仲良くなりたかった!」


 クランフランは小張を抱き締める。


小張「クランさん、フランさん…」


クラン「過酷な所に居るのね…これからも頑張ってね、無理しちゃ駄目よ?」

フラン「死んじゃったら許さないんだから…」


 クランフランは涙を溢す。小張もギュッと抱き締め返してからゆっくり離れる。小張は腕を捲り、前腕や腕から突起を出してニッと笑う。


小張「大丈夫よ!私はこの能力が有るから。そんでこれからどんどん人助けをしていくんだから!二人も元気で居ててね?」


クラン「はい…!」

フラン「うん…!」


小張「うんうん!じゃあ私行くね!さようなら!クラン!フラン!」


 小張は手を振り、クランフランは手を振り返す。小張はヘリに乗り込むが、後ろを向いた瞬間我慢していた涙が流れ出る。


小張「うぅやっぱ別れは寂しいなぁ」


妖華「よしよし。」


 妖華は小張の頭を優しく撫でた。


 一方シュウはアダとノブが居ないことに気付く。


オジー「じゃあな少年!達者でな!!」


シュウ「あ、はい!オジーさんも!…あの、アダさんとノブさんは?二人にも別れを伝えたいんですが…」


オジー「ん?ああ、そう言えば居ねぇなこんなときに。何してるんだあいつら。」


----------


 周りから少し離れた所─


ノブ「どうしたんだlady?こんなところに呼び出して…」


 ノブはアダに呼ばれ周りから少し離れた所の木々の中に居た。アダはじっとノブを見つめていた。その目は真っ直ぐノブの目を見ている。



アダ「ノブ、お前はあっちに行け。」


 

 衝撃的だった─



ノブ「何故だ、lady!俺も残った皆とサーカスを建て直したいんだ!」


アダ「それはダメだノブ。」


ノブ「…どうしてだ……?」


アダ「私たちとは生きる世界が違うからだ。」

 

ノブ「…っ!?lady!」



 ノブはアダの言った発言に傷ついた。まるで正体を知った化物をいきなり捨てるように聞こえたからだ。ノブは見捨てられた悲しさと能力持ちという罪悪感に襲われ後ろを向いてしまった。


 しかし、アダの口調は暖かかった。



アダ「勘違いするなノブ。私は、いや、私達はお前の事が嫌いになった訳ではないよ。むしろ、大好きさ。」


ノブ「lady……」



アダ「お前はきっと、そこに行ったらもっと良い仲間が増えるはずだ。BARKERsの人達は心から良い人達だった。私には分かったよ、彼らの善意が。」


ノブ「……確かに良いやつらだった。一緒に居て楽しかった…正直…あいつらの生活を聞き、能力を見て、心が踊った、興奮した…」

 

アダ「そうだろう?だから、お前には行ってほしいんだ、BARKERsに。きっとお前はそこに行くべきだし…行ってみたいんだろう?」


ノブ「……」


アダ「ハハハッ!そんな私達に気を使うなよノブ。サーカスは私に任せて、行ってきなノブ。」


ノブ「lady…俺は…」



 ノブは横を向き、アダを見る。アダはノブや団員達が見たことが無いほどの暖かい笑みを浮かべて拳を出していた。



挿絵(By みてみん)



アダ「ほら、行ってきな。」



ノブ「………アダ…ありがとう。」



 ノブはアダに拳を合わせた─


---------------------



 シュウは少しアダ達を待ったが、来る気配が全くしなかった。


シュウ「……」


小張「行こう、シュウ。きっとアダさんとノブさんは忙しいんだよ。」


シュウ「うん…そうかもしれない。」


 シュウは諦めてヘリに乗った。



オジー「Thank You guys!! good bye!!」


クラン「さよなら!お元気でー!!」

フラン「じゃあねー!!」


 サヨナラー!! アリガトー!!

  ジャアナー!! タノシカッタゾー!!


    待ってくれ!!!



 団員達の言葉の中から一言だけ引き止める言葉が入った。団員達がざわめく。走って来たのはノブだった。


シュウ「ノブさん!?」


小張「え!ノブさん!?」

ワグ「ノブだって?」



 ノブは腕をグンッと伸ばし、まだ空いていたヘリの扉に手をかけて飛んできた。



 ドガッ!!



 無理矢理中に入る形になったノブ。中に居たメンバーは驚きを隠せなかった。



ノブ「すまない、待たせた。飛ばしてくれ、BARKERsまで。」


シュウ「え、ノブさん!それって!」


ワグ「お前…マジか!」


 ヘリは宙を浮き始め、ノブは団員達に最後の声をかける。



ノブ「皆!!後は任せた!!俺はBARKERsに入る!!お互い成長して…またサーカスをしよう!!!」



 ウオオオオオオオオ!!!!!!



 団員達は歓声を上げた。皆、ノブの門出を喜んだ。ノブがBARKERsに興味があったことは実は勘づいていたし、ノブ自身がこのように動いた事を感動しているのだ。


オジー「ノブーー!!!!!good luck to you!!!」


クラン「ノブさーーん!!そちらでも頑張って下さいねー!!」

フラン「嫌よー!!寂しいじゃない別れなんてぇー!!」

クラン「こら、フラン!もしノブさんがそうするって言ったら了承する約束だったでしょ?」

フラン「うぇぇぇぇん!!」



ノブ「さあ!行こう!」


 

シュウ「ああ!よろしく!ノブさん!」



 ヘリは高く飛んでいく─




オジー「おい、アダ!もう皆行ってしまったぞ?」


 アダはヘリが高く飛んでいった頃に歩いてやってきた。



 空を見上げるアダ─



 すると、風に吹かれてあるものが飛んでくる─



 それは小柄の野心ある─



 いや、親代わりにもなったある男のシルクハットだった─



 アダはそのシルクハットを掴み、頭に乗せた─



 腕で目を拭うアダ、そしてフッと笑い─



アダ「さて、サーカスを建て直すよ!」


 いつしか、メディアで引っ張りだこになるほどの有名なサーカス団になる。のはまた未来の話である─



  ─二章 奇怪至極なサーカス団 閉幕─

イラストはそらとさんからです!

ありがとうございますヽ(・∀・)ノ

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