第二章 43話 動物達との死闘
俺はプロレスラーだ。プロレスラーは皆のヒーローだ。だから、俺もヒーローなのだ。誰にも負けず、何をされても倒れない。俺は…
一人の男は立ちすくんでいた。恐怖で男のチキンレッグな足が震えていた。
オジー「冗談じゃねぇぜおい…」
目の前でジャガーが女の子を襲っている。悲痛な叫び声を聞き、助けを呼ばれ、助けないプロレスラーは居ない。
だが、男は動けなかった。ジャガーは大きく、爪は全てを引き裂き、噛まれたらただでは済まない。
…周りを見るも助けられる人物は自分しか居ない。
オジー「やるしかねぇ!!」
オジーは雄たけびをあげてジャガーに突っ込んだ─
-----------------
クラン「大好きよ、フラン。」
フラン「やめてぇ!!!!クラン!!!!!!」
ジャガーがクランフランの腕に噛み付き、腕を引っ張り、引き千切ろうとしたその時だった。
「Rrrrrrrrrrrrrraaaaa!!!!!」
ビート「グギャン!!」
謎の雄たけびが聞こえ、ジャガーのビートはぶっ飛んでいった。その雄たけびの主はオジーだった。オジーが強力なタックルでジャガーをぶっ飛ばしたのだ。
フラン「オジー!!」
クラン「はぁ…くっ…オジーさん…」
オジーは自分の胸に親指を指して声高々に言った。
オジー「この俺が来たぜ!!!俺はヒーローだ!!」
ジャガーのビートは殺気を出して歯を剥き出し唸る。
オジー「俺は、今日死んだっていい!!」
オジーはプロレスラーだった頃の構えをする。
オジー「この獣をぶっ倒す!!!」
ジャガーのビートは前足を振り上げながら突っ込んでくる。
オジー「URrrrrrrrraaaaaaa!!!!!」
-------------------
シュウはアフリカ象のジュディの目の前まで来た。だがそこには先客がすでに来ていた。
シュウ「アダさん!」
アダはジュディを何とか抑えようと懸命にナイフを投げていた。
だが象の皮膚は分厚くナイフが思いの外浅くしか刺さらない。
アダ「クソ…シュウ、どうすれば良い!」
シュウは焦る。
シュウ「うっ、どうすれば…どうすれば止まるんだ…」
--------------------
ワグは足をローラーにして団員を順調に助けていた。
ワグ「あー!!キリがねぇ!!人手が足りなすぎんだろ!!」
ワグは奮闘していた。団員を襲う猿を引放し放り投げたり、足を噛んでくる狼を蹴り飛ばしたりしていた。
ワグは疲弊していた。それが油断の元になっていた。
ドガッ
ワグ「うぐぇ!」
強い衝撃がワグを襲う。ワグは一瞬だがその衝撃を与えたものを見ることができた。白い塊だった。ワグは数m飛ばされて倒れてしまう。
ワグ「ガハッ、ぐっ、」
ワグは察した。受けてはならないものだったことを。何故ならそれは、自分が少しの時間でも横になってしまったこと。そしてもう一つは…
ワグ(折れたのか…ぐっ息がっ!)
ワグの肋が三本折れたのだ。強い痛みがワグを襲った。
その白い塊はチャンスとばかりにワグの上にまたがる。白い塊はもう分かりきっていた。白熊のベティだ。ベティは勝ち誇ったかのように、ワグを嘲笑するかのように吠えるとワグの顔を噛み砕こうとした。
ワグ(終わるっ!!)
ワグは横に落ちていたあるものを拾った─
ワグ「終わってたまるかっ!!!!!」
ワグはそのあるものを掴み、手の中を高速に回しドリルのようにあるものをベティの目に刺した。
ベティ「グゴオオオオオ!!!!」
ベティの目に角が刺さった。
─────────────────────
25話 軟体の鬼─break timeにて
オーケストラのアルバムCD、ハーバートの毛むくじゃら人形、ペットとして飼える小さな蛇と蟹、フランとクランを模したクネクネに絡んだチュロス、軟体一角雑技団を真似できる作り物の角などが売ってあった。
ワグ「えぇーどれも欲しい!!角付けて見ようかな!!それとも部屋に蛇飼おうか…迷う!」
シュウ「角だけでお願いします。」
──────────────────────
あの時、おもむろにボールペン強ほどの長さの一角をポケットに入れていたのだ。
ベティは怯む。その隙をワグは逃さなかった。すぐさま自分の手の平、ふくらはぎ、首の後ろをローラー化して逃げたのだ。
ワグ「買ってて…良かった、ぜ。」
すぐにベティはワグを追いかける。しかし、ローラー化させたワグは負けずと逃げる。
ワグ「いってぇ…しつけぇな本当。」
「助けるよ!ワグ!」
ワグにとって神の一声だった。ワグの上を声の主が飛び越えそのまま威力を失わずにベティに突っ込んだのだ。
その声の主は小張だ。小張は背中を針鼠のように突起させベティに突っ込んだ。ベティは悲痛に小さく吠えると仰向けに倒れた。
ワグ「はぁ…へっ、へっ、小張、背中丸見えだぜ…?」
小張は、はぁ。と呆れるようにタメ息する。
小張「あなた、意外と元気じゃん。」
------------------
周りは団員たちと動物の戦いになっていた。団員たちは武器を持ち戦った。小動物や虫や蛇はなんとかなる。やはりあの動物だけはどうしようもなかった。
アダ「ダメだ!もうナイフが無い!!」
シュウ「くっ!どうする!俺は、俺はどうしたらいい!?」
ジュディは数々の過激なショーをこなしていた分、他の象よりも皮膚が固かった。その為、ナイフは刺さらず、人間の繰り出す打撃もものともしない。
その時─通信機が鳴り始めた─
シュウ「なんだよこんなときに!!」
それは強制的に繋り、あの気だるげな声が聞こえる。
椎名「みんな生きてるー?」
シュウは焦りからか怒りが先に込み上げた。
シュウ「今大変なんだ!!!そんなほのぼのと、」
椎名「そんな気がしたんだ。あとはもう任せてよ。」
シュウ「は!?意味が、」
その時、強大な音が目の前で鳴った。
次に聞こえた音は象の悲痛な叫び。
そしてまた大きな地面を叩くような音。
頭上に聞こえるヘリの音。
椎名「暇なやつ呼んどいたから。」
シュウ「は……え、?」
アダ「な、なんだい、これ…」
二人だけではなく周りの団員も唖然としていた。急に象が目の前で血を吹き出したのだ。そして…落ちてきたものは…岩?
「このクソ野郎共がぁ!!!俺の可愛い部下達になにさらすんじゃああ!!!」
上を飛んでいたヘリからそう言って落ちてきたのは、あのBattle Faction隊長だった。