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第二章 41話 小柄の男の大きな野心 ☆


バンシャ「歓迎するよ!Ms.小張!!」




 ワグの顔面を殴り飛ばした小張はぼうっと立ち尽くしていた。殴られたワグは首を回転させて衝撃を緩和させたが、鼻血が出ていた。




ワグ「ぐっ…小張…これはなんの作戦だ?聞いてねぇぞ?」




シュウ「小針さん…?どうしたんですか?」




 しかし、小張はまだ黙って立ったままだった。バンシャがイラついた言葉を放つ。




バンシャ「んー、クソ…能力は使わせる事が出来ないのか、役立たずめ。寝ていろ邪魔だ。」




 小張はドサッと膝を崩して倒れる。




シュウ「ど…どういうことなんだ?」




 バンシャは疲れて寝てしまっていた白熊のベティの頭を撫でる。




バンシャ「フッフッフッ、分からんか?分からんかね!?ガッハッハッハッ!!!これがショーのネタバラシよ!!お前たちだけが特別ではないということだ!!」




 その言葉にシュウとワグはサーッと血の気が引いていく。




シュウ「まさか…」


ワグ「能力者…なのか…っ」


 


バンシャ「そう!そうだとも!!君たちの言葉で言うならば、さながら[従う]能力とでも言っておこうか!」




シュウ「そうか…だからか、だからNofaceと関わりがあるんだな!?」




バンシャ「ほほう、Nofaceを知っていたのか。あれには世話になっているよ。お陰で世界各国でショーが出来るようになったし、良いコネも出来るようになった。」




ワグ「最悪だぜ…まさかのNofaceかよ…」




 そして、シュウはある言葉を思い出す。




---------------------




 39話 ヒーローショー─最後の挨拶へより




アチク「へっ、まぁ直ぐに戻ってくるかもしれねぇしな、一角雑技団みたいによ!」




シュウ「?何かあったんですか?ってか全然見ないですね一角雑技団の方々。」




デニス「た、た、確か、一角雑技団は退団するって言って直ぐに戻ってきてやっぱやりたいって、」




--------------------




 シュウは更に頭のなかで考察し、まさか。と狂気的な考えに至った。




シュウ「まさか…まさか、人に能力を使ったのは初めてじゃないな!」




バンシャ「いきなり何だと言うのだ、当たり前じゃないか。」




シュウ「……不自然だと思った。おかしいと思った!あまりにも偶然過ぎると!!」




 シュウは狂気染みた発言をバンシャにぶつけた。








シュウ「五つ子オーケストラも、一角雑技団も、本当は普通の人だったんだ…お前が…お前がフリークにしたんだな!!?」




ワグ「ど、どういうことだシュウ、それって…」




 バンシャはニヤニヤと笑い答えた。




バンシャ「フフフフ、勘が鋭いな君は。一角雑技団は体が軟体なのは一人だけ、五つ子は…」








バンシャ「五つ子だと言うだけで珍しいじゃないか。そのものたちに特殊な特技を身につけさせて、何が悪い。売れるため、名を売るためには必要なのだ。」




 ワグははっきりと意味が分かり、激怒した。




ワグ「無理矢理芸を身に付けさせたってことか!!!まるで動物のようじゃねぇか!!!」




 バンシャは笑う。ワグのその言葉を嘲笑うかのように。




バンシャ「甘い、甘いんだよなぁ、動物の方がたちが悪い。人間はな、頭が良い、感情がある。考える事が出来る。そのせいでな、考える事を停止してしまえば簡単に従ってくれる。動物は本能が強いからな。」




シュウ「そうやって自分の言うことを聞かせて、無理矢理芸をさせて、それでサーカスの団長!?それでフリーク達にスポットを当てたいだと!?罪悪感はないのか!!」




 バンシャは大袈裟に腕を広げて二人に言う。




バンシャ「言うことを聞かせた?違うな。一生俺の物になったんだ!こいつらはスターになれる団員なのだ!俺がそうさせたのだ!!俺が!!俺がこのサーカス団を作ったのだ!!!このサーカス団に入ったらもう、俺のものなのだ!!!!」




 バンシャは振りかぶり、鞭をシュウに当てようとする。




ワグ「やべぇ!!シュウ!!」




シュウ「ぐっ!!」




 シュウは目を瞑ってしまう。痛みに堪えるよう歯を食い縛り、両手で受ける形で顔を防御する。








 が、その衝撃や痛みは無かった。






シュウ「……?」




 恐る恐る顔を上げる─






バンシャ「グガァァァァァッ!!!!」




 バンシャはひざまずき、悲痛の叫びをしていた。




シュウ「え…これは…」




ワグ「……ナイフ、アダか!?」




 シュウとワグは上の観客席を見る─






 なんとそこにはアダとノブが立っていた。




 二人の顔は悲しみと怒りに満ちていた。特にノブは涙を流している。




アダ「団長…最悪よあなた。」




ノブ「団長、、何で…だ…」






バンシャ「グウウウウウッ!!!」


 バンシャは歯を食い縛り膝に刺さったナイフを抜く。




 そして、ナイフを見て、次に観客席を見る。バンシャは消え失せそうな声で呟いた。




バンシャ「……お前達…何でここに…この時間は睡眠のはずでは…っ!」




 シュウは叫ぶ。




シュウ「アダさん!ノブさん!何でここに!ここは危険だ!!」




アダ「大丈夫よ。それと、あんなに血相変えて走り出したら心配になるわよ。」


ノブ「……」




 バンシャは唖然とした生気の無くなった顔で聞いた。






バンシャ「…お前達……どこから聞いていた?」




ノブ「……小張がワグを殴った辺りからだ。最初は次のショーの打ち合わせかと思ったから、声をかけなかった。まさか、こんなことになるなんて…」




アダ「色々と察しがついた。私達を騙してたのね。」




バンシャ「ぐうっ…待て、、これは俺らのサーカスの為だ。」




アダ「ふざけるな。私達を何だと思ってるんだ。」



ノブ「……早く動物たちを解放しろ。」




 バンシャは痛みからか汗が大量に出ていた。血も大量に出ている。




バンシャ「はあ…はあ…ぐっ、うう、もう少しなんだぞ…もう少しで…バンシャ、サーカス団は…っ…」




ワグ「もう終わりだぜバンシャ。大人しく小張と

サーカス団員、全ての動物を解放しろ。そんでもってBARKERsのお縄につきな。」


 

 バンシャはワグの声など耳にも届かない様子でアダとノブに語りかける。


バンシャ「うぐ…っ…なあ…アダ、ノブ、俺はお前らに何をした。ハーバートも、クランもフランも…オジーや…ぐっ…アチクやデニス…他の団員達…彼らの顔は…死んでいたか…?」




 バンシャは痛みからか涙が流れそうになっているように見えた。




ノブ「団長…」


アダ「団長…もうあんたは駄目だ。裏切られたのは私達の方だよ。」




 バンシャは笑う。




バンシャ「クックック…俺は…特にお前達だけは…特別視していたんだがな…」





 バンシャは下を向き、目を瞑り歯を食い縛る─



 そして、怒りの形相でアダとノブを睨んだ─




バンシャ「もう終わりだぁ!!!!!!!」


オウギワシ「ガァァァァァ!!!」




 オウギワシが大きな爪を向けてアダに飛んでいく。アダは反射的にナイフを取り出して投げる。




オウギワシ「グェ」




ノブ「うっ!lady!!」




アダ「……」




 ノブはアダが動物を殺してしまった事を咎めるが、アダは真っ直ぐ次の行動に移すバンシャをじっと見ていた。




シュウ「待てバンシャ!!」


ワグ「逃がすか!!」



 バンシャは白熊のベティの背に乗り逃げ出そうとしていた。




バンシャ「動物の解放だったな!良いだろう、してやろう!!これが俺の最後のショーだ!!!俺の手でバンシャサーカス団は終わるんだ!!」




 ヒグマのケイティがシュウとワグに襲いかかる。




ワグ「クソッ近付けられねぇ!」




 シュウはハゲワシが寝てる小張を襲おうとしてるところに気付く。




シュウ「やばい!!小張さんが!!」






 ハゲワシが小張を啄むその瞬間、長い腕が小張に巻き付き救出する。小張は観客席の方へ凄い勢いで引っ張られていった。




シュウ「ありがとうございます!ノブさん!!」




ノブ「気を付けろ!!ケイティが来るぞ!!」




 ケイティがシュウに向かって前足を振り上げる。




アダ「させないよ!!」ヒュンヒュン




ケイティ「グモオオオ!」






 ケイティの前足と鼻にナイフが突き刺さる。




ノブ「Lady!!!」




アダ「仕方無いんだ、眼を瞑りなノブ。」




 ケイティは怯み、その場に止まった。それをチャンスと言わんばかりに一本のナイフを取り出し、止めをさそうとする。




アダ「終わりだ、ケイティ。」




 振りかぶる瞬間だった。




ノブ「やめろlady!!!殺さないでくれ!!!」




 アダはピクッと反応するが、虚しくもナイフは飛んでいく─




 ナイフはケイティの脳天に直撃した。





ノブ「ああ…ケイティ…ケイティ!!」




 ノブは観客席を走って飛び降りる。




アダ「……」



 アダはぼうっと刺したケイティを眺める。



シュウ「ノブさん…」


ワグ「ノブ…」




 ハゲワシはバサバサと器用に飛んでどこかへ飛んでいってしまった…






 ノブはケイティの横に座り、頭を撫でる。




ノブ「ケイティ!死ぬなケイティ!!長年ずっと居たじゃないか!!こんなお別れは嫌だ!!」




 ノブは涙を流してケイティの頭を抱える。




ケイティ「グモ…」




 ケイティは顔を起こすと、ノブの顔をなんと舐めたのだ。




ノブ「ケイティ……」




 そして、ケイティの意識は無くなった─






---------------




 動物テント─




 バンシャは息を切らしていた。バンシャの心はもうズタボロになっていた。




バンシャ「はぁ…はぁ…もう終わりだ。もう…終わりなんだ…」




 全ての檻の鍵を開け、白熊のベティの背から降りてハゲワシのマイクにも外へ出るよう命じていた。




バンシャ「はぁ…うぐっ…クソッ…お前らを…お前らを解放する。もう自由だ。さあ…最後にお前らのその鬱憤を晴らすがいい…!」








 物凄い音が動物テントから鳴った。動物の大きな怒号が鳴り響く。檻をひしゃげる音も重なり鳴き声なのか分からないくらいの音。








 足からの出血が酷く、両ひざを着くバンシャ。大地が揺れる程の足音を鳴らしたのはアフリカ象のジュディだった。バンシャを見かけるなり雄叫びをあげ、走って寄ってくる。






バンシャ「ぐっ…あぁ……何で…何でだ!!!何でこんなことに!!!俺は…俺は…日を浴びたかったんだ!!浴びせたかったんだよ!!お前らに!!!」




 アフリカ象は止まる気配無く、バンシャのもとへ。足がバンシャの頭を捉えた─




バンシャ「あぁ…クソ…なぁ…俺らは長年の仲じゃねぇか…」




挿絵(By みてみん)












   グシャァ─






 能力によって眠らされ、圧力をかけショーを行い従っていた動物達は怒り狂いテントを出ていった…

イラストはそらとさんからです!ヽ(・∀・)ノ

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