第一章 7話 必死の捜索
結局トモは家に居なかった。
トモは俺と同じく母子家庭。違うのは弟が一人いる。だが、その母親も居なく、弟もいない。車はあるのに、母親は仕事場にも行っていないという。弟も学校には居なかった。
シュウ「何で……どこ行っちゃったんだよ……」
美香もトモと連絡が未だに取れないというし、この状況に異変を感じた教師陣は、警察に連絡をとり、取り合えず三日間は学校を休校させるらしい。生徒はその間外出の禁止と多大な宿題という難儀を課せられた。
美香『私も探すよ。シュウ一人じゃ危ないし、シュウまで居なくなったら私……』
電話越しでも不安が伝わる美香の声。今にも泣きそうで、震えていた。
シュウ「いや、美香は家に居て?大丈夫!俺は居なくならないし!何て言ったって浮けるしさ俺!信じてないけどさ二人とも!」
美香『フフ、あんたは未だにそんな事言ってるの?……じゃあ今日のところは警察に任せよ?もう18時だしさ、危ないよ……』
シュウ「……ああ。分かったよ。今日は帰る。じゃあ明日二人で探そう!心当たりのあるところ全部行ってさ!」
美香『そうね、そうしよ!あ、そう言えば今日放課後、近藤先生が放送で呼んでたよ?』
シュウ「近藤先生が?何だろう、テストの点数でも悪かったのかな?まぁ、でも会えてもまた、三日後だし聞かなかったことにしとくよ」
シュウは悪戯っぽく笑みをかける。
美香『うん、じゃあ…早く無事に家まで帰ってね?』
シュウ「うんありがとう!もう家近くだし大丈夫だよ本当!」
そして、二人ともじゃあねと言い合って電話を切った。
もし、あのとき近藤先生の元に行っていたらどんな未来が待っていたのだろうか……
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トモが居なくなってから二日が経った。
この二日、俺と美香は二人で心当たりの有りそうな所を探し歩いていた。トモが通っていた塾、俺らが登校していた中学や小学校、所属していたサッカーチーム、トモの親戚の家、近場の警察署や交番……どこに行っても本人は疎か情報すらも手に入らなかった。
二人「…………」
最初の頃は話こそしたが、ここまで探して何一つ得るものが無いと二人は話す気力すらも消え失せ、体を冷たくする不安が初日の倍ほどに膨れ上がっていた。
シュウ「今日はこれまでにしようか、もう19時だしさ、親も心配するだろうし……」
美香「朝からずっと探してるのにね。もう見つからないのかな……?」
シュウ「きっと、きっと見つかると思うよ!あいつの事だし!あれ?お前ら何してんの?ってヒョコッて出てくるよ!」
美香「ん……だと良いけど……」
シュウ「家まで送るよ!」
美香「ありがとうシュウ」
このような話をしながら美香の家までシュウは送っていった。
お互い悲しみとやるせなさを混ぜたような声で別れを言いシュウは帰路へつき、帰宅した。
シュウは今日の事、昨日の事、居なくなった日、その前日、トモと美香と遊んだ楽しい毎日、トモとの思い出、明日、トモを見つけた妄想など頭の中で凄まじい交錯を繰り広げるも、無情にも時は過ぎいつのまにか深夜2時ちょっと前になる。
シュウ(あ、こんな時間か……明日も探しにいくと思うし寝とかなきゃな……)
そうして、ウトウトし始め眠りにつく頃、ふと思い出し居ても経ってもいれなくなる─
シュウ(あの公園……あ、あの公園行ってない!!)
寝間着の上から上着を羽織り自転車をあの公園へ走らせた──
シュウ「トモ!!!!!!!」
そこには突然姿を消した我が愛すべき幼馴染がいた。