第二章 38話 ショーのオオトリ
三日目の公演の休憩時間。シュウと小張は小道具室へ行き団員からワグの衣装を貰った。二人はその服を見て、ワグが着ているところを想像し、ニヤニヤする。大きく吹き出しそうになるのを我慢しながら、ワグの待つ控え室に向かう。
小張「ワグー緊張してるー?」
シュウ「大丈夫ですかー?ワグさーん。」
そう言って、がちゃんと扉を開けるとワグは暇そうに椅子に座りだらだらしていた。
ワグ「お!来たな!暇で死にそうだったぜ!」
ワグはニコニコと出迎えた。小張は意外そうな顔をする。
小張「あれ、初めてのショーなのに緊張しないの?」
ワグは、はぁー?と言った後に否定した。
ワグ「俺が緊張なんかするはずないって!逆に楽しみで楽しみで仕方ないくらいだぜ!」
ワグの強心臓さに感心する二人だった。
シュウ「あ、衣装!衣装来ましたよ!ワグさんの!」
ワグにサーカスの衣装を渡すシュウ。それを受け取ったワグは少し不服そうな顔で答える。
ワグ「いや…分かってたけどよ…やっぱ派手すぎるしダサいよなぁ…これ…」
ワグの着る衣装はやはり蛍光色が入り交じるド派手な作りになっていた。
シュウと小張は笑いを我慢できず、プフフと溢しながら言う。
小張「フフフ、似合いだよワグ、」
シュウ「た、確かにお似合いですよ、」
ワグ「お前らなぁ…しゃーねぇから着るけどもよー、あ、お前らもショーに参加するんだからな?」
シュウ「えっ!!?」
小張「私たちも!?」
それは初耳であった。
ワグ「そうだぜ?」
シュウ「き、聞いてないですよ!」
小張「そんないきなり言われても!」
ワグは手を二人に突きだし制止する。
ワグ「まぁ待ちたまえ、今から俺のプランを話すぜ。大丈夫、簡単な事しかねぇからさ!」
シュウ「うーん…」
小張「本当でしょうね?」
シュウと小張はワグの今回のショーの内容を深く聞いた。
小張「へぇー面白いわね!ワグらしいわ!」
シュウ「確かにワグさんらしいです!」
ワグ「へっへー!そうだろう?まぁ楽しくやろうぜ!サーカス!」
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時間はどんどん過ぎていき、もうワグの出番になった。アダもノブもショーは上手くいき、ノブのショーの内容はいつもと違い、体を伸ばすだけのショーを見せた。
そして、待ちに待ったワグの出番がやってきた。
バンシャ「Ladies・a-nd・gentleman!!摩訶不思議、最高至高なフリークショーのオオトリはなんと新人!!彼の織り成す芸は類を見ない別次元の技!!さぁ皆様!最後にたんと驚いてください!!」
スポットライトが入り口を照らす。観客達は前のノブのショーで衝撃を受け、興奮から若干恐怖が混じり、ざわついていた。
そこで陽気に出て来るのが和久廻。まるで数ミリ浮いてスライドしての登場だ。
ワグの能力は回る能力。これはBARKERsの人達なら皆知っている動きだった。なんと、ワグは足の裏の肉をローラーのようにして回す事が出来るのだ。ワグはよく歩くのが面倒だから。と、まるで透明のスケボーを乗っているかのように移動している。因みにガラスなどを轢くと普通に刺さるので安全な所でしかやらないそうだ。
ワグ「ウェーイ!!皆盛り上がってるかー!!」
ワグは手を大きく観客達に振り言うが、ノブと比べて地味な芸なので観客達は更にざわつき始める。
ワグ「今日はなー!!見に来てくれた皆のために!」
パァァン!!!
ワグがそう言ったとたん、銃声が鳴り響いた。覆面を被った人が銃を持ち、ところせましに現れ叫びだした。
覆面の男A「テメェら!!!黙ってろ!!!ここは占拠した!!」
観客達は大パニックとなった。
キャーー!!! フザケルナ!!!
タスケテクレー!!! ヨルナ!!!
そして、銃を向けていた覆面の者達は到頭、一人の観客を人質に取った。
覆面の男B「こ、こっちに来い!お、お前は人質だ!」
「キャッ!助けて!誰か!!」
捕まったのは女性。肌が浅黒くて、髪はショート、緑色の髪色をした……小張が捕まった。