第二章 37話 楽しいサーカスを
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シュウ「……」
小張「……」
二人はノブの過去が思っていた以上に過酷でバンシャとの絆も強く、サーカスでショーをするという事がどれほど重要かが痛いほど分かった。
ただ一人バカを除いて。
ワグ「へぇーそっか大変だったんだな。…それで、何で来れないんだ?」
どうやら考えるというネジを無くしたようだ。ノブは怪訝そうな顔をする。アダはハッハッと笑い、シュウと小張はビックリする。
小張「え!この話聞いてなにも分からないの!?」
シュウ「そうですよ!ノブさんはショーがやりたくて、バンシャさんに恩を返したくてやってるんですよ!?」
ワグは分からないなと困った顔で答える。
ワグ「でもよ、別にこっち来て団長とかと縁を切る訳でもないんだぜ?保った状態のまま来れば良いじゃねぇか。そんでもってこのサーカスともBARKERsが手を組んでさ、うちのやつら貸してサーカスやればwin-winじゃね?」
ワグにしてみたらよく考えていた発言だった。それを聞いた二人もうーん。と言葉を濁す。
ノブも視線が下を向き、何かを考えているようだ。
ワグ「まぁさ、強制させる訳にはいかねぇからさ。この条件を聞いても駄目なら仕方ないと思う。」
そして、ワグは急にテンションを上げてはしゃぎだす。
ワグ「ってか!ってかってかってか!!見てくれよ!三日目のショーの内容!超テンション上がるやつ作ってきたぜ!」
紙をノブに見せる。ノブはその紙を反射的に受け取ってしまい目を通すはめになった。
ワグ「これは一人じゃ出来ねぇからさ!手を貸して欲しいんだよ!ノブ!アダ!」
アダも一緒に紙の内容を覗く。
ノブはハハッと笑い、アダはニヤリと笑った。
アダ「本当、子どもっぽいね。でもやってみたいかも。」
ノブ「俺は面白いと思う。団長に許可を取ろう。きっと採用してくれるはずだ。」
ワグはめちゃくちゃ喜んでいる。
ワグ「やったぜ!!良いショーにしような!!」
その後、何故かシュウと小張には見せてくれず、理由は「それまでワクワクしててほしいから。」だそうだ。団長に内容を見せたところ、即採用してくれたようだ。団長曰く、
バンシャ「そうか!そういうやりかたもあったな!今後も取り入れていこう!」
っと絶賛していたようだ。ワグはサーカス団の才能がもしかしたらあるのかもしれない。
このあと三人は時間まで睡眠を取った。
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三日目の公演が間近になる。辺りの団員はバタバタと用意をしていた。今回の内容は一通りは同じでワグの出演はノブの後になっていた。
シュウ「凄いですね、ノブさんの後ですよ。」
小張「奇跡のホープだからね。」
ワグ「おうよ!ホープ見せてやるぜ!」
最後のワグの発言にシュウは違和感を感じつつもワグを心から応援した。
今回のシュウ達の仕事は途中までは二回目と変わらないアシスタントをする。休憩後は着替えてワグの手伝いをするらしい。ワグがサーカス衣装に着替えるのが楽しみだ。
シュウ「よし!頑張りましょう!!」
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今回のショーも順調だった。いつも通り五つ子オーケストラがしっかり前座として観客達の掴みを果たす。その後はハーバートさんが出て流れを抑えつつフリークの何とも言えない不思議な感覚を植え付けさせていく形だ。
控え室にはクランとフランが居た。小張と楽しく話している。
フラン「本当小張ちゃん可愛いよねー!好きな人とかいるの?」
小張「え!?す、好きな人!?」
小張の顔は一瞬で真っ赤になる。
クラン「ちょっとフラン、迷惑になるよ?」
フラン「えー!聞きたい!やっぱ女の子は恋ばなしたいじゃん!」
クラン「私もしてみたいけどぉ…」
小張「わ、私は大丈夫ですよ、」
フラン「やったー!じゃあじゃあシュウくん?」
シュウ(うわ、気不味っ!)
小張「シュウじゃないなー!あ、ワグでもないから絶対。」
フラン「え!ってことはいるんだー!!」
小張は赤面を保ったまま照れた感じで答える。
小張「ま、まぁねぇーとても素敵な人なんだよね、」
フラン「フゥー!良いねー!」
クラン「本当ごめんなさいね、」
団員「クランフラン!出番だよ!」
話が盛り上がってきた所でクランとフランは呼ばれてしまう。
フラン「うぅ残念…また後で続き話そうね!」
クラン「すいません、付き合ってやってください。」
小張「はい!また!」
バタンと扉は閉まる。
小張「まぁ今日でさよなら、なんだけどね…なんか少し寂しくなってきたかも。」
シュウ「皆さん良い人たちでしたからね。」
次は順番が変わっておりクランフランの次はオジーの出番だ。オジーが控え室にやってくる。
オジーは本当気さくでかつ、大胆で豪快だ。話をしていると昔は本当にプロレスラーだったようだ。どんどん話が続き、オジーの過去の話になった。サーカス団に入団するきっかけだ。
オジー「俺はな、観客の歓声が大好きなんだ。だからこそプロレスラーをやり続け、皆のヒーローになっていた。だけど、ある時、膝を怪我しちまった。プロレスラーに膝の怪我は選手生命を脅かす爆弾だ。俺は泣く泣くプロレスラーを辞めることになったんだ。」
オジーは膝を擦る。
オジー「そこで気晴らしに見たのがこのフリークショーだったんだ。exciteな物が見れるって言うからな、その時のジムの会長に連れてってもらった。俺は最高な物が見れたと思ったよ、俺もやってみたいと思った。その後、団長に頭下げて頼み込んで団員になったんだぜ。」
シュウ「なるほど、そんな過去があったんですね…」
Ha!Ha!っと笑うオジー。
オジー「たまに毒虫に刺されるのがたまったもんじゃねぇけどな!あのあとすぐ血清を射つんだぜ?」
その言葉を聞いてシュウと小張は血の気が引いた。
小張「え…じゃあ、あの時、間一髪って感じだったんですか?」
オジー「That's right!死にかけてるぜ!」
シュウ「プロレスラーって…本当に強いんだなぁ…」
団員「オジー!出番だぞー!」
オジー「おっと、呼ばれちまったよ、行ってくるぜ!」
オジーはショーへ向かう。
到頭、このあとは休憩時間。ワグと段取りを組む時間だ。