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第二章 34話 情報捜査3─ノブの能力


 団長はこの控え室に顔を出すことはなかった。今回の団長はオウギワシのソニー、ミミヒダハゲワシのマイクという二匹のハゲワシに芸をさせるために色々と仕込みが必要らしく、違う場所で準備をしているようだ。




 そして、今はアダの出番のため、次の次の番のノブはまだ来ない。




小張「……」


シュウ「……」 




 二人は暇になってしまった。




小張「はぁ……今のうちに椎名に状況、話とこうか…」




シュウ「そうですね…何だか複雑な気持ちです、やりきれない感じというか…色々な罪悪感というか…」




小張「まぁ、ポジティブに考えましょ。ノブやこのサーカス団が犯罪とかに関わって無さそうだし、何よりもみんないい人達だしね。一旦ワグを抜いた三人で話しましょ。」




 小張は椎名に通信を入れる。








小張「もしもし、椎名?」






椎名「何?ワグじゃないってことは緊急事態?」




 椎名は言葉とは裏腹に気だるそうな言い方をする。




小張「んー任務の色々な変更を相談しようかなって。」




椎名「ふーん。やけに唐突じゃん。ワグをサーカス団に捨てるんなら大賛成。」




小張「あ、そうしようかな。」




シュウ「本人居ないところでこう言われるのは流石に不憫ですね。」






小張「ってそうじゃなくてさ、今少ししか時間無いから手短に話すけど、ノブの勧誘は無理だと思うんだ。」




椎名「へー。良いんじゃない?帰ってきちゃえば。」




シュウ「そ、そんな適当に判断しないでくださいよ!何も聞いてないのに!」




椎名「あ~煩いぃ。」




 シュウは椎名に強く注意する。小張はシュウを制止した。




小張「いや、椎名は適当に物を言ってないわ。どう予想ついてたの椎名?」




椎名「んー、まぁ色々と予想はついていたよ。このサーカス団からノブを抜くのは難しいんじゃないかなっとかね。さっさとこの任務から手を引いて帰ろうーもし、何かあったら上のやつらに任せればいいよー。」




シュウ「うーん…本当にそれで良いんですかね…」




小張「……」




 小張は深く考える─






小張「椎名。何か引っ掛かるところがあるの?」




 椎名は答える─




椎名「嫌な予感はするよ。明後日の早朝に迎えを送る。」






 そう椎名が言った瞬間、外が騒がしくなった。






  オツカレサンアダ!!


     キョウモサイコウダッタゼ!!






 どうやらアダの出番が終わったようだ。






シュウ「あ、アダさんのショーが終わったみたいです。」




小張「そろそろノブが来ちゃうわね、」


椎名「あー了解了解、じゃあまた。」




 プツンと椎名との通信は切れた。






シュウ「嫌な予感…一体どうしてそう思ったんですかね…?」




 小張はまたうーんっと深く考えるが…




小張「分からない。全然分からない。皆いい人達だから…椎名は現場に居ないから色々分からなくて感じない所あるから…でも三者の視点から何か感じ取ったのかもしれないね…」






 ガチャンと扉が開き、ノブが入室する。




ノブ「……」




シュウ「あ、」




小張「あっノブさん!何か必要な物とかありますか?」




 二人は急に来たノブに焦りを見せてしまう。




ノブ「……いや、特には無いな。」




 そう言って席に座りふーっと息を吐く。そしてじっとシュウを見て言った。




ノブ「何か重要な隠し事でもしていたような感じだったな。席を外そうか?」




 そう言ったノブの顔や態度からは感情が一切見えなかった。探っているようにも感じたし本当に遠慮して言ってるようにも感じる。






小張「いや、大丈夫ですよ!全然大したことない話をしていたんです!ね!シュウ?」




シュウ「そうですそうです!」




ノブ「そうか。」






 ノブはそのまま目を瞑ってしまった。




小張「えっとー何か必要な物はあります?」




 小張は再度聞いてみる。ノブは目を瞑ったまま答える。




ノブ「そうだな…俺はずっと団長と共に移動してきた。お前達の話が聞きたい。俺と同じようなやつはお前達が初めてだし、どんな生活をしているのか興味がある、聞いてみたい。」






 二人は少し驚いた。ノブはとても警戒して会話もシャットダウンするかと思っていたからだ。それに興味があるときた。




シュウ「いいんです…かね?話して。」




 シュウは小張に問い掛ける。




小張「うん。まぁノブさんはワグのバカ野郎のせいで私達の目的とかも知ってるだろうしね。あまり深くは言えないけど、言っても良いわ。」




 小張が許可を出すとノブは目を開けてシュウを見る。心なしかノブの目が期待が帯びているように見えた。




シュウ「どんな話を聞きたいんですか?」




ノブ「何でもいい、他愛もない日常で構わない。」




シュウ「日常…ですか、まぁ言うほど長くは過ごしてないのですが、それでも良いのなら。」






 シュウは話始めた。普段の日常を騒がしくも楽しい日常を。最初は戸惑っていたシュウだったが、話してみると会話が止まらなく、話していて楽しかった。ノブはじっと聞いていた。








シュウ「って感じなんですよ!」


 (ついつい話しすぎてしまったな…)




ノブ「なるほどな…寮、皆で食事、トレーニング、遊び…とても楽しそうだな。こんな世界があるなんて思わなかったよ。」




シュウ「本当…皆さんいい人なんです。」




 ノブはフッと笑い




ノブ「そうなんだろうな。」




 今度は前のめりになってまでこう言った。




ノブ「君達も君らが言う能力者、なのだろう?」




 二人は答える。




シュウ「はい!」


小張「ええ。」




 その言葉にノブは我慢してきたように期待を込めて言った。




ノブ「少しで良いから見せてほしい!」




 二人は初めて見るノブの反応に顔を見合わせる。




ノブ「…やはり駄目だろうか?」




小張「いえ、良いですよ。ここまで話してしまったし。」




シュウ「俺の能力はあまり派手ではないですが、、」




 ノブは笑顔になる。




ノブ「ありがとう!ワクワクしてきたよ!」






 小張とシュウは軽く能力をノブに見せた。小張は手を尖らせたり、頬や額に突起を出したりした。シュウは軽くジャンプして空中を浮き、ホバリングした。




 ノブは椅子の背にもたれ掛かるようにして驚いていた。






ノブ「これは…本当に夢でも見ているようだ。君達もショーに出たら良いのに。歓声が沸くぞ。」




小張「それは駄目なんです。出来る限り目立ちたくはないんで…組織として動いてることもバレたくはないし。」




ノブ「なるほどな…君達と同じステージでショーをしたかったものだな。こんなにも凄い特技は無いぞ。」






シュウ「いやいや、ノブさんも相当な能力ですよ!伸びてパシーン!とやったり檻ごと投げたり!」




 ノブはその言葉を聞いて苦笑いをする。




ノブ「君が思っているより良いものではないよ。」




シュウ「え!強そうなのに!」




 そう、シュウが言うとおもむろにノブは左手を振りかぶった。




シュウ「え、」


小張「ちょ!」




 そして、ノブはシュウに向かって手を急に伸ばしたのだ。




シュウ「うわっ!!!」






 両手で顔面に飛んで来たものを防ぐ─






      ペシ。






シュウ「……ん?」




ノブ「そう。これが真実だ。」




 ノブからの打撃…全く衝撃が無かった。柔らかい餅がペシっとのしかかったような感覚だった。全然痛くない。




小張「大丈夫なの?」




シュウ「う、うん。大丈夫だった…」




ノブ「俺の能力は強くない。伸びるのに精一杯で威力が乗らない。ただ引っ張ったり巻き込むことにはよく使える。それだけだ。」






 ノブー!サッサトコーイ!デバンダゾー!






ノブ「うん、呼ばれてしまった。行かなくては。」




 そして、ノブは最後に振りかえって二人に言う。




ノブ「そこも楽しいんだろうが、ここも楽しいだろ?」






 ガチャンと扉が閉まる。






小張「本当に痛くなかったの?」




シュウ「全くですね…」






 最後のノブのショーでこの日の公演は終わり。二日目だが他のメンバーとの仲も深まり団員一人一人の素も分かってきた。だが…やはり椎名の嫌な予感とは何だったのか気になる所だ。






 それと何か忘れているような気がする。






 シュウはそう思ったが終わりの片付けに呼ばれそちらで忙しく動いているうちにそう思っていたことすらも忘れてしまった。

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