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第二章 30話 馬鹿正直が似合う男


バンシャ「さあさあこっちだ!きっと皆歓迎してくれるだろう!」


 バンシャは三人を引っ張る勢いで出て、向かいの扉までつれていく。


 そして、ガチャンと扉を開けた─



バンシャ「ようこそ!バンシャフリークサーカスへ!」

     

      パーンパパパーン!!

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

  ピューーィ フゥゥゥー!!

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

 

「「ようこそ!バンシャフリークサーカスへ!」」


 クラッカーや口笛等の大歓迎がシュウ達を迎えた。

 バンシャも含めた四人は驚いた顔でフリーズする。クランとフランが恥ずかしさと照れを混ぜた笑みを浮かべ、前に出てくる。


フラン「ごめん!楽しみ過ぎてまだ正式に入ったのか分からないのに…我慢出来なくて皆に言っちゃった。」

クラン「本当フランったらワクワクし過ぎよ本当。」

フラン「はぁー?クランもワクワクしてた癖に!分かるんだから!共犯よ共犯!」

クラン「うぅ、私のせいでもあるの…?」


 二人が喧嘩を始めている矢先にバンシャは


バンシャ「いやぁ…既に情報は行き渡って居ましたか…驚きました。では皆さん和久さんの一芸もご存知で?」


フラン「あ、私達は生で見たけど他の方はまだよ?」

クラン「そうね。ノブさんと似たようなものを見てる感覚だったかも。」


バンシャ「確かにです。では皆さんにも一度見てもらい、」

 ミセロミセロ!! ミセテー!!!

  ハヤクハヤク!! ミタイミタイ!!


バンシャの言葉を遮る程の周りの興奮。その中には見える範囲でハーバートや蟹男、蛇男、無敵男のオジーが見えた。


バンシャ「では、お願い出来ますか?」


ワグ「おう!!任せてくれ!」


 ワグは皆の前に立ちバンシャに見せたようにグルグルと体の部位を回す。


 その光景に周りの人達は息をのんだ。


 マジカヨ…ヤベェ…スゲェ…ドウナッテルノ…?


 など驚きの囁きが聞こえてくる。そして我慢できずに一人の男が叫びだす。


「un!!believable!!bravo!bravo!!great!!very very crazyだ!!」


 そう叫び大きい拍手をするのは無敵のオジーだ。


オジー「こんなものを見てじっとしてられるか!是非とも触らせてほしい!」


 オジーはガツガツと前に出てワグの目の前まで行く。


ワグ「良いぜ!腕触ってみなよ!」


 オジーは興奮で震えた手でワグの腕を掴んだ。


オジー「oh my god!!!こりゃまたすげぇフリークな奴が入ったな!!!」


 その発言に俺も私もと声がかかる。ワグは得意気な顔で頷き、周りの人はワグに群がった。



小張「ノブが見当たらないわね。」ボソッ


 小張はシュウに耳打ちをする。


シュウ「確かに…そうですね…」


小張「今ワグに注目が集まってる間にこっそり周りを探し回ってきてくれる?」


シュウ「分かりました。」


 周りは木々が立っており皆が集まってる所は広場になっていた。

 取り合えずシュウは皆の注目が当たらないよう、木々の方へ進んで行った。





 予想をしているよりすぐノブは見付かった。広場に近く離れて1分程の木に寄っ掛かって座っていた。


シュウ「あ、、どうも、、」


 近付いた瞬間、ノブの足下と隠れて見えなかった方の手の方から小鳥が飛び出す。


ノブ「……」


 黙ってノブは飛んでいく鳥を見る。


シュウ「あ、あの、すいません。」


 ノブはシュウを見ずに言う。


ノブ「何のようだ。ここへは一般の人間は入れないはずだが。」


 その声は落ち着いており、目は据わっていた。怒っているような感じはしなかった。だが、返答次第ではどうなるか分からない怖さをシュウは感じていた。


シュウ「あ、あの、えっと、俺は、、」


 緊張でしどろもどろになるシュウをじっと見つめ続けるノブ。すると愛すべきアホな先輩の声が聞こえてくきた。


ワグ「おーい!シュウー!歓迎の証のBBQだってよ!何してんだよー!」


 ワグはシュウに近付いた所でノブに気付く。ノブは近付くワグの事をじっと見ていた。


ワグ「あ!どうも!和久です!新しく入団させてもらいました!よろしくっす!」


ノブ「……」


 ノブは黙ってワグを見る。ワグはニコニコ笑いながらノブに近付き握手を求める。


ワグ「よろしくな!」


 ノブはフッと笑い立ち上がる。


 

 その感想としては、近くで立ったノブを見ると非常にデカイ。席から見たノブは大きいなと思ったが近くで見ると更にだった。


 ノブはワグの手をギュッと握り、


ノブ「なるほどな。そう言うことだったのか。」


 っと何か理解したかのように言った。


ワグ「なあノブ!あんたも能力者なんだろ?」


ノブ「?」


 ノブは、何を言ってるんだこいつ。と言わんばかりの顔をする。


ワグ「ほら!こんなん!」


 握手した手を離しグルグルと手首を回す。ノブは目を見開き驚いた顔をした。


ノブ「確かに、俺と似ているな……不思議な物を感じる。」


ワグ「そうだろそうだろ!これを俺らは能力者って読んでるんだ!」


ノブ「能力者…?」




 そして、とうとうアホなワグは大変アホな発言をしてしまう─




ワグ「なあ!実は俺らあんたを勧誘しに来たんだ!サーカス抜けて俺らの所に来ないか?皆あんたと同じ物を持ってる集団なんだ!」


シュウ「ワグさん!!それは流石に急ですよ!!」


 ノブはまたもや驚いた顔をする。


ワグ「なあなあどうだ?入ってくれないか?」


 ノブはじっとワグの目を見て言う。



ノブ「俺はな…団長に拾われ、育てられた。だから俺は何がなんでも恩を返さないといけない。団長はいい人だ、裏切る訳にもいかない。」


 そしてフッと笑い、


ノブ「きっとお前らもこのサーカス団を気に入る。お前達こそ、やめてここに居ればいい。」


 そう言い残して去っていった。




シュウ「何であんな急に言ったんですか!!」


ワグ「え、今のタイミングで言わないといつ言うんだよ?」


シュウ「もう!!バカなんですか!?」


ワグ「え、」




 今のシュウの頭には大きく「失敗」という言葉が頭に浮かんでいた。ワグのお陰で。

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