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第二章 29話 奇跡のホープ?


ワグ「俺、サーカスやるわ!」



 

シュウ「え?」


小張「は?」


 ワグのバカのような単純発言に二人は理解が後から追い付いた。

 この状況は高校でよく見た光景だ。凄いと思い、感動し、心踊った体験をした後、俺もやっちゃおうかなぁ!っていう無謀なやつだ。


シュウ(イキりたいのかなぁ)「どうしたんですか?イキっちゃったんですか?」


小張「あ、シュウ心の言葉出てる、出てる。」


ワグ「おいおい!お前も当たり強くなってんな!別にイキりてぇ訳じゃねぇよ!」


 んん!っとワグはわざとらしく咳ばらいをして言う。

ワグ「きっと俺の作戦は成功する!椎名を含めて作戦会議だ!」





-----------



 サーカスのテントから少し離れた所で椎名に連絡をとった。



ワグ「おーい!椎名!」


椎名「………」


 椎名からの返事は無い。


ワグ「あれ?椎名?寝てるのかー?椎名ー!!」


椎名「あー!!煩い!!今50killチャレンジ中なんだけど!!真剣なんだよね今!!」


 返事が来た椎名の言葉は非常にイラついていた。


ワグ「……あー…俺こいつの言ってる意味がわかんねぇんだけど…俺大丈夫かな?」


 ワグはシュウと小張に顔を向ける。


シュウ「あ…えっと…そこのところは大丈夫だと思います、まだ。」


小張「ギリギリね。」


ワグ「はー良かったー。で!おい!お前今ゲームやってのかよ!」


椎名「今、38killだから。」


ワグ「……後12kill待てるかー!!」


椎名「あー煩い!分かったよ!さっさと言えよ!もう!」


 何とかゲームから切り離せたワグは満足気に

言う。


ワグ「よしよし、あのな俺サーカス団に入ろうかと思ってるんだ!」


椎名「そうなんだお疲れ。もう会うことも無いな残念だったよバイバイ。」

 ダダダダダッ


ワグ「再開すんなよ!!ってか手厳し過ぎるだろお前!!」


椎名「はぁ…何でそうなったわけ…芦屋修二、教えて。」


シュウ「あ、俺ですか!?分かりました、経緯を言いますね!」


ワグ「何でだよおい。」



 これまでの経緯を椎名に伝えた。どんな雰囲気だったのか、サーカスの内容や、団長とノブの雰囲気等色々と。



椎名「ふーん、それでこれ。」


ワグ「これ呼ばわりとは失礼な!中々良い作戦だと思わないか?」


小張「どうやって入団するのよ。」


ワグ「そりゃあ真っ向から話し合いっしょ!」


シュウ「……どう思います?椎名さん?」


椎名「あー、良いんじゃない?」


シュウ「良いの!?」

小張「え!?」



 椎名の意見は予想外だった。反対か、どっちでも良いんじゃない?とでも言うと思っていたが、


椎名「適当に、とかじゃなくて、予想、勘なんだけど。」


シュウ「勘……」


ワグ「だろだろ?良いだろ?」


小張「何でそう予想ついたわけ?」


椎名「んー、色々話聞いててそのバンシャって奴はもっとサーカスを売りに出したいと思うんだよ。その為に大勢のメンバーを集めてるみたいだし、能力者の異質さは他の奴と比べたら更に異質だし、だったらワグなんて喉から手が出るほど欲しい人材だろ。ワグのくせにね。ざっと考えて成功する確率は90%くらいかなーと。残りの10%はワグが調子こいてヘタなことをした場合。」


ワグ「何か軽くバカにされた気がするけどそういうことだ!」


小張「何がそういうことなのか分からないけど、椎名の意見は尊重すべきね。椎名の予想は当たるんだ。」


シュウ「これが〔予想する〕能力なんですね。」


椎名「ま、失敗するかもしれないけど行動するのはあんた達だし私のせいじゃないからねー。あー疲れた。もう切るね、疲れたし。」


 そう言い残し一方的に連絡を切る椎名。


小張「じゃあどうするの?」


ワグ「もう設定は俺の中で出来てるからそれを実行するだけだ!」


シュウ「え、心配しかないんですが。」



------------------


 サーカステント前─


 サーカスを行ったテント付近にはカラーコーンやバーで入れないようになっている。


団員「はー?駄目だ駄目だ。何を言ってるんだお前達は、入りたいと言って簡単に入れる所じゃないんだぞ。」


 既にシュウ達は門前払いを受けていた…



 作戦はこうだった。


 三人ともしっかりとスーツを着込み、小張はマネージャー、シュウはアシスタントとしてワグを売り出しに来たという設定だ。

 適当な団員を見つけて話をつけ、能力を少し見せれば団長へ面会出来るだろうという浅はかな作戦。



小張「きっとこの和久廻はこのサーカスにうってつけだと思うのです!是非とも一芸見ていただきませんか?」


団員「はぁ…困るんだよね、そういう輩が増えてるんだ、簡単に入れる程バンシャサーカス団は敷居低くない。それに今皆さん1日目が終わってオフの時だ。非常に迷惑だから帰ってくれ。団長も暇じゃないしな。」


シュウ「せ、せめて一瞬でも!」


団員「力ずくで帰ってもらいますよ?」



 団員の顔が非常にイラついて胸ぐらを掴むんじゃないかという勢いで近付いて来た時、


?「あら、そんなに自信があるなら見せてもらいましょうよ。」

?「一瞬で出来る芸…気になりますね。」


 助け舟を出してくれたのはあの双子。クランとフランだった。


 小張はあっと驚いた顔をし、クランとフランはフフッと小張に笑いかける。


団員「うーん…クランフランさんが言うなら…ほら、すぐ見せて。」


小張「あ、はい!和久!じゃあお願い!」


ワグ「OK!しっかり見ててくれよな!」


 ワグはグルグルと両手首と首を回す。




団員「」

フラン「」

クラン「」


 三人はこの状況に驚き目を見開いて唖然としてる。ワグを見るととても得意気だ。


フラン「あ、あなたもフリークだったのね!」

クラン「ビックリしたわ…」



ワグ「どうどう!?合格でしょこれ!」


団員「ど、どうでしょうか?」


 団員は動揺しながらクランとフランに問いかける。


フラン「こんなの合格に決まってるじゃない!きっと団長は喜ぶわ!」

クラン「合格ですね、驚きを隠せないです、心臓がバクバク言ってます!」


 この言葉にワグは満面な笑みを浮かべる。


シュウ(めちゃくちゃ嬉しそう。)

小張(21にもなって少年みたいね。)


ワグ「へっへっへ!じゃあ今すぐにでも団長と面会したいんだけど!」


 クランとフランは喜んで答える。


フラン「良いわよ!早く団長に会わせたいわ!」

クラン「良いですよ!団長に一刻も早く会わせたいもの!」


ワグ「やったぜ。」


 ワグはこっちを見てVサインをする。


シュウ「良かった、、」

小張「何とかなったわね。」


 三人はクランとフランに着いていく形でサーカステントの中へ入って行った。



------------------


 サーカステントの中─


 巨大なテントの中をスタスタと進んでいく、色々なお土産等グッズが売っていた所ではせっせと団員が片付けを行っていてシュウ達に気付いた者は目を丸くして見つめていた。


フラン「団長はこっちよ。」


 そう言って指された所は団員onlyと大きく書かれたドアがあった。


 そこを開けると、すこし広く長い通路が続き横には扉がいくつも付いていた。


クラン「ここは控え室や道具入れなどになってるの、団長の部屋は一番奥の左、私達は右の扉を開けた所に集まってワイワイしてるわ。」

フラン「あー早く他のメンバーにも教えてあげたいわ!」


小張「本当助かりました。クランとフランさんが居なかったらこうはならなかったです。」


フラン「良いわよ!でもお礼は団長としっかり話してからにしたほうが良いわ。」

クラン「そうね、落ちる可能性は無いと思いますけど、どうなるか分かりませんからね。」


 二人はそれと、っと付け加える。


フラン「大事なファンですもん!当たり前よ!」

クラン「大事なファンですもの!当たり前です!」


 二人は嬉しそうにニコニコとして言った。


小張「ありがとうございます!」


 数分歩いて行くとその団長の部屋まで辿り着いた。


クラン「えっと…団長ぉ?」

フラン「団長!!入団希望者よ!きっと気に入るわ!開けるわね!」


 バンッと扉を勝手に開けるクランとフラン。


クラン「えぇ…!大丈夫かな…」

フラン「大丈夫よ!ほら!中に入って!」


シュウ「え!良いんですか!?」

小張「大丈夫なの!?」

 押されるようにして三人は中に入る。


フラン「大丈夫よきっと!団長なら!」

クラン「あっと…えーと…後でまた会いましょう?」


 バタンと扉を閉められる。


 三人は顔を合わし、行こうとコンタクトを取ると奥へ進んだ。すると、バンシャは奥で電話に追われていた。


バンシャ「ああ、本当今回も御支援頂いてありがたく思っております。はい。力あってこそ、ここで講演を開く事ができた訳です。はい。ではまた次回もお願いします。はい、失礼します、はい。」


 ガチャンと古い黒電話を切るバンシャ。


 そして社長椅子のような立派な椅子に座り三人に目を合わせる。


バンシャ「やあやあ、すまないね、きな臭い電話の途中で。私達は色々な企業の助けが無いとこうやってサーカスを開く事ができないんだ。現にここ、日本で出来たのも手助けのお陰だ。私達なんて元々は取り締まられないといけない団体なのだからな。」


 ばつの悪そうな笑顔でバンシャはそう言った。


小張「いえいえ、バックが有ってこそではないと活動出来ないのは私達も承知していますよ。今回来たのは、」


 っと話を続けようとしたが、バンシャが割って入ってきた。


バンシャ「そうだそうだ!聞こえたよ!クランフランの推薦なんだって?私はそれを聞くだけでもワクワクするよ!是非とも一芸見せて欲しい!」


小張「話がわかる人で良かったです。では、和久?」


ワグ「おうよ!」


 先程と同じように首と手首をグルグルと回す。




バンシャ「あがっ…あががっ…!」


 バンシャは顎が外れそうになるほど唖然としていた。


バンシャ「そ、それは永遠と回り続ける事が出来るのかい??」


ワグ「ああ!どの部分でもグルグルと回す事が可能だぜ?」

 っとワグは肩も足も回し始める。


 バンシャは下を向いてこう言った。

バンシャ「す……」


ワグ「す?」

シュウ「す?」

小張「す?」


 

バンシャ「すんばらしい!!!!!!実にアメイジングだよ!!逆に私から入団を求めたい!!君は奇跡のホープだよ!!ノブと二枚看板になるぞきっと!!!」

 

 顔を上げて言ったそのバンシャの顔はきらびやかに輝いていた。


小張「良かった、ではこれからよろしくお願い致します。マネージャーの小張麗です、こちらは」


シュウ「アシスタントの芦屋修二です。」


ワグ「俺は和久廻です!よろしくお願いします!」


バンシャ「いやはやどうもよろしく!私の事は分かっていると思うが、バンシャ・デイリーだ!そうと決まればさっそく皆に顔を会わせなければ!歓迎会をやろう!皆と仲良くやれるようにな!」




 この日からワグはバンシャフリークショーの奇跡のホープと呼ばれるようになった。

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