第二章 24話 蛇と蟹と双子
次は蛇男と蟹男のパートだ。シュウ達三人は予想を言い合っていた。
小張「蛇男と蟹男だって、どんなのが出るんだろう。」
シュウ「蛇を操ったり蟹を操ったりするんじゃないですかね?」
ワグ「いや、もう鱗だらけの男と甲羅だらけの男が出てくるんだぜきっと!」
小張「なんだかその可能性も0ではないわね…」
そしてまた明かりが消え、入口をスポットライトが照らす。
ワグ「く、来るぜ!」
シュウ「…」ドキドキ
バンシャ「三項目は蛇男と蟹男!もうこの二人は見てもらって理解してもらいたい!!きっと興奮することでしょう!保証しますよー!!ではどうぞ!!」
突如、シャーーっと言う鳴き声が聞こえ始める。大きい這いずる音…まさかでかい蛇が出るのか…?
それもそうだったが…圧巻だったのはその量だった。凄い沢山の蛇、アナコンダを含めた大中小数々の種類の蛇が入口から這い出てきたのだ!
ワグ「す、すげぇ!!」
小張「確かに凄いかも…」
その蛇達は一気に真っ直ぐ出てきては真ん中でしっかり止まった。全ての蛇、十数匹出てきた後更に奥で普通の蛇とは違う音が聞こえてきた。
カラカラカラカラカラカラ
何やら堅い殻が当たるような音。先程が蛇ならやはり来るのは、
蟹だった。その蟹の集団も数々の種類があった。タラバガニのようなものや毛ガニや小さな蟹まで沢山。蟹が前進してきたのだ。……前進?
ワグ「おいおい、蟹って横歩きするもんだろ?」
シュウ「前進できるんですね。」
小張「いや、普通はしないわ、出来るけど、あんなに早く前進することは出来ないんだ、足の構造上。」
シュウ「よく知ってますね…」
小張「まあねっ」ドヤッ
ワグ「まぁそんなん知ってて何になるって話だけどな」ボソッ
小張「…何か文句あるの?」
ワグ「な、ないです。」
小張「よろしい。」
蛇と蟹は行儀良くしっかりと真ん中で固まっている。その光景は圧巻だった。蛇と蟹は仲が良かったのか?と思えるほどにお互い何もしない。
そして─
?「シューーー」
蛇達とは少し違う鳴き声が聞こえてくる。ズルスルと姿を現したのはあまりにも直視しづらい二人の人間であった。
小張「え…」
ワグ「うっ…」
シュウ「何ですかあれ…」
一人は両腕が無く、蛇行しながら入場してきた。脚は何か蛇を真似して鱗で作られたもので巻かれていた。
もう一人は赤いステージ衣装に身を包んだ男だ。歩き方がとても不自然だった…というか関節が逆を向いている。おまけに良く見ると両指が二本しかない。
小張「逆関節症…?こんな人を見世物にするなんて…正直不快だわ…やってることが酷い。」
すると、蛇男は笛を出し演奏し始める。
蛇達は見な背伸びを一斉にし、横に揺らぎ始めた。蟹男は一人の団員にボソッと何かを指示し、団員はバケツを持って来て蟹達にぶっかけた。
液体をかけられた蟹達は更に密集し、カタカタ鳴り出した。
ワグ「い、一体…何が始まるんだ…?」
蟹男「ブブブブブブ!!!」
蟹男はその液体を口に含み前に吹き出す。すると細かな泡が周りに浮かび出す。
すると蟹も口から泡を出し始め、泡をくっつけあいシャボン玉を作って周りに浮かび上がらせた。
オーーー!!
観客から驚きの声が。
更に小さな蟹達は蛇達に寄っていき、尾の先に待機する。
蛇男「シャーーーー!」
蛇男が蛇達に声で合図を送る。
なんと、蛇はその蟹を尾で投げて的確に泡に当てたのだ。所謂、蛇の的当てのようなものだった。
ワグ「なるほどな…蛇男が蛇を操る感じだったのか。」
シュウ「素直に凄いですよこれ。」
小張「うーん…」
小張は先程言った言葉もあり腑に落ちないようだ。
そして、急にPOPな歌が流れ始める。
蟹男「グガガカ!!」
蟹男は両腕を広げ蟹達に合図を送る。それに合わせ蛇達も大きく背伸びをしてジャーー!!と合図を送った。
その後、蛇はグルグルと円を書き回りはじめる。蟹もその蛇の周りをグルグル周り始めた。
蟹達はその後、逆回転で回ったり、星を描いて回ったりをした。蛇と蟹が交差点を渡るように動いたりして、その光景はさながら、テレビで見た有名な大学の集団行動の動きを見ているようだったら。一切、一糸乱れずの綺麗な動きだった。
後半になると、蛇と蟹別れて列になり並び、歌に合わせて蛇は横に体を背伸びをして横にふり、蟹はハサミを上げて踊るように横に降った。
その蛇と蟹の姿はとても愛らしく、見ているこっちも何だか気持ちが穏やかになる感じだった。
最後は全体でしっかりと礼をして、蛇男と蟹男も礼をして出口へ下がる。
シュウ「凄い可愛かったですね。」
ワグ「ちょこちょこしてたな!どうだった?小張!」
小張「か、可愛かったわ…凄く…」
なんとかあの踊りは、小張にお気に召したようだ。
ワイワイ ワイワイ ガヤガヤ ガヤガヤ
観客の興奮が収まらない中、次の項目に移る。
バンシャ「ではでは皆さん!!興奮が冷めやらないですね!!どうだったでしょうか?あの可愛らしい蛇と蟹達!きっと心に刻まれたことでしょう!!」
バンシャ「それではお次のフリークは、一心同体!クランとフラン!とても可愛らしい一人?いや、二人の女の子!こう見えても性格は真逆だぞ?ではどうぞ!!」
ワグ「次は何が出てくるんだろうなぁ!」ニコニコ
シュウ「そうですね!」
小張「…クランとフランってもしかして…」
小張はなにか心当たりがあるようだ。
パァン!パァン!と二つの照明の明かりがクロスして入口を照らす。
?「ちょっとー!!明るすぎよー!!」
?「声が大きいよフラン、恥ずかしいよ…」
?「何ー?恥ずかしがってる場合ー?ほら早く足動かしなさいよ!!」
?「ふ、ふぇぇ」
マイクが付いているのでガッツリ口喧嘩の声が聞こえているが、クランとフランは姿を表した。
…その姿は本当に一心同体だった。
体がくっついているのだ。
ワグ「おわ!!すげぇなあれ!!何か着ぐるみとかそういうのか?」
小張「ばか!恥ずかしい事言わないで!クランとフランは有名な一卵性結合双性児よ!」
ワグ「そ、ソーs
小張「ソーセージなんて聞いたらぶっ飛ばすから。」
シュウ(流石小張さん、ワグさんの事よく分かってるな…)
ワグ「シュウは知ってるのか?あの人。」
シュウ「いや……でも、名前ならそう言われたら聞いたことあるような…」
小張「新聞やニュースに引っ張りだこだったのよ?何でワグ知らないのよ、世代でしょ。」
ワグ「俺あまりニュース見なかったから…」
小張「はぁ……まぁいいわ。あの子達は世にも珍しい結合双性子なのよ?」
ワグ「何が珍しいんだ?」
小張「……深くは説明出来ないわ。」
ワグ「あ、忘れたんだな。」
小張「いつの間にか姿を消したと思ったけどこんなところに居たのね。」
小張はワグを無視してそう言った。
右の女「こんばんは!夜分遅くからご閲覧頂きありがとうございます!赤いカチューシャの私はフランと言います!」
左の女「あ、私はクランです。こ、こんばんは…」
フラン「ほら!しっかりしてよクラン!もー…この頼りのないほうが私の姉です!よろしくお願いします!」
クラン「ご、ごめんなさい!よ、よろしくお願いします!」
ザワザワ ザワザワ
クラントフラン?モシカシテ
ザワザワ ザワザワ
フラン「まぁそうね、私たちのことはご存知かもしれません!別に私たちはサーカスに売られたって訳ではないんですよ?」
クラン「そ、そう!私たちはこのバンシャ団長にスカウトされて喜んで入団したんです!」
フラン「ちょっとクラン!そんないい方すると疑われるじゃん!」
クラン「ご、ごめんなさい…」
アハハハハ ナンカマンザイミタイダナ
モットヤレー! シマイゲンカカー?
フラン「ほら!漫才とか言われるし!本当恥ずかしいクラン!」
クラン「え、えぇ…ご、ごめんね?」
フラン「っていうか、私たちがやりたいのは漫才とかじゃないの!マジックよ!マジックをやりたいの!ほら!例のもの持ってきてよ!」
近くに居た団員に伝え、トランプを持ってきてくれた。
フラン「私達!マジック超得意なの!是非見てほしい、体験してほしいわ!」
クラン「だ、誰か…お手伝いさん…」
二人はチラチラと周りを見る。
フラン「そこのあなた!ちょっと降りてきてよ!」
クラン「すいません、お願いします。」
若者「は、え、俺?」
男「若頭、何かあったら即殴り込みますんで。」
若者「あ、ああ。行ってくる。」
恐らくどこかの暴力団系の若い男が梯子で下に降りた。
若者「どうすりゃいいんだ?」
フラン「じゃあ私は向こう向いてるからクランから1枚カードを貰って?」
クラン「あ…どうぞ。」
若者「ああ、じゃあこれを。」
一枚カードを抜く。
フラン「じゃあそれ周りに見せてくれる?絶対言わずにね!」
若者「見せるんだな?分かった。」
若者はスペードのKINGを周りの観客に見せた。
クラン「あ、あ、では私にも見せてもらって良いですか?」
若者「見せるのか?」
フラン「いいわよ!クランが私に教えることはないわ。」
クランはしっかりとそのカードを見る。
クラン「分かりました。で、では、この山札に入れて下さい。」
若者は山札を貰い、シャッフルする。
クラン「あ、シャッフルもありがとうございます、終わりましたら私に下さい。」
山札を貰うクラン。
フラン「それじゃあ!何となく分かると思うけど引いたやつ当てるね!」
フラン「んー…分からないわね…」
まだトランプの中を見てないのにそう呟くフラン。
フラン「あなたが本当に何がしたいのかわからないわ。今トランプ全部みたら何が無いのか分かっちゃうじゃない。スペードのKINGが無いって。」
周りはその発言にざわめく。
ワグ「まじかよ、見てないのに当てやがったぜ。」
シュウ「でもどういうことなんでしょう。」
フラン「ほら、こっそり後ろポケットに入れたもの出しなさいよ。危うくマジックがおじゃんになるところだったじゃない。」
若者「そ、そこまで分かるのか!!」
若者は後ろポケットからスペードのKINGを出して返す。
ワグ「わ!ズリィ!隠し持ってやがったのかいつの間に!」
シュウ「な、なんで分かったんですかね!?」
フラン「皆さん、何で分かったのかってざわついてるわね、それは私達、
フラン「以心伝心だからよ!」
クラン「一心同体だから!」
フラン「ちょっと!以心伝心でしょこういうとき!」
クラン「えでも、一心同体が私達のネームじゃ…」
フラン「あー!もう!これじゃ締まりが悪くなったじゃない!」
クラン「え…そんな…一心同体だって話が…」
フラン「もういい!はい!一心同体フランとクランでした!!」
クラン「クランとフランじゃないの?あ、ちょっと待ってよフランちゃん!先に進まないでぇー!」
フラン「早くしてよもう!恥ずかしい!あ、もう戻っていいからね!協力ありがとう!」
上手く合わない歩き方で出口へ戻っていくクランとフラン。
小張「何か最後は全く合ってなかったわね…ここまで性格が合わない一卵性結合双性児って珍しいわ。」
シュウ「でも、なんで分かったんだろう…」
ワグ「確かに!謎だったなぁ…」