第二章 22話 開演
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ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ
シュウ「ここが…サーカスの開催地…」
ワグ「うひゃあ、、まるで小さな町だな。」
港に着き少し進むと露店や屋台が沢山出ており活気に溢れていた。
小張「恐らく、このお店の人たちは皆バックに何か大きい組織が付いてるんだろうね。じゃないとこんな所で露店なんか出せないわ。」
ワグ「だろうな……まさか…」
シュウ「どうしたんですか?ワグさん。」
小張「どうした?何か異変が?」
ワグは何かを恐れている顔で言う。
ワグ「まさか…買い物しちゃ駄目なんて言わねぇよな…」
小張とシュウは黙って冷たい目でワグを見つめる。
ワグ「だ、だってよ!こんなんお祭りだぜ!?屋台出てたら食い歩くしかねぇじゃんか!」
小張「……気持ちは分かるけどさ…そんな迫真な顔で言う?本当呆れるわ…本当バカ。」
ワグ「これは言うだろー!なぁシュウ!どう思うよ!」
シュウ「あー……えっと…ちょっとどう判断して良いか分かりませんね…」
小張「シュウに振らないでよ、困惑するじゃない。バカが移るわ。」
ワグ「ぐぐぐ…こうなったら……」
ワグは通信機に手をやり、
ワグ「椎名!聞いてるか!」
椎名「あー…何、何でこれグループ通信なのこれ。」
ワグ「皆にも聞いて貰えるようにだよ!今現場に着いたんだけどよ!」
椎名「あーあー!もー声が大きいし、どうでも良い。それだけで分かったよ、好きにすれば良いじゃんか、どうせ私食べれないんだし、関係ない。ってかそんなどうでもいい話通信で聞かないでくれる?本当にウザい。重要な事意外やめてくれるかな。」
ワグ「いや、」
椎名「分かった、分かった。はいはい重要だったねワグにははいはい、さよならー」
ワグ「……切りやがった。」
シュウ(椎名さん面倒臭そうだったな。)
ワグ「まぁ結果許可出たから食い歩こうぜ!」
小張「仕事しに来てるの分かってるの?」
ワグ「勿論だぜ!しっかり怪しいやつが店出してないかじっくり見極める!」
シュウ(んー、恐らく皆、普通の人ではないよね。)
小張「はぁ…もういいや、皆固まっていきましょ。こう言うところだから何か面倒な事あったら大変だわ。」
ワグ「おう!まずはたこ焼だな!……あるのか?たこ焼。」
シュウ「……分からないですけど……有るんじゃないですかね?」
ワグ「よっしゃ!じゃあレッツゴー!」
シュウ(楽しそうだなぁ)
小張 (ウザいなぁ)
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17:40─
小張「な…何だかんだ楽しんでしまったわ…」
小張の手には露店で買ったチュロスが入った紙コップが握られていた。
シュウ「そうですね…何か本当に遊びに来たみたいです。」
シュウはエンパナーダと呼ばれるスペインの餃子のようなものを頬張っている。
ワグ「良いんじゃね?たまにはこういうのもさ!」
っとケバブとイカ焼きを両手に持ち交互に食べ歩いている。
シュウ「本当、普通のお祭りですねこれ。」
小張「うーん…私まで染まってきたわ…これはまずい。」
ワグ「まぁ良いじゃんか良いじゃんか!取り敢えずどっか座って喰おうぜ!」
小張「んー、そうね、ちょっと歩き疲れたかも。」
シュウ「あ、あそこ座って食べれそうですよ!」
シュウが見つけた所は大きなテントが張ってあって中ではワイワイとお酒を飲んだり座って休めるようになっていた。
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テント内─
ワグ「うおー!大分熱狂してんな中!」
外からも聞こえていたが中はとても熱気が籠っており、怒号か分からない大声や大きな笑い声が飛び交っていた。
小張「あそこの席にしよ、正直あまり長居したくないかも。」
シュウ「何か面倒な事に巻き込まれないと良いですね…」
ガシャーン!!!!
この言葉はフラグになっていた。
一人の男がシュウ達の隣のテーブルに後ろからダイブしてきたのだ。
小張「キャッ!」
シュウ「うわ!」
ワグ「うお!何だ何だ!」
大柄な男「おらぁぁ!!かかってこんかい!!」
ボロボロの男「ぐっ…や、やめてくれ…」
大柄な男は男を持ち上げ思いっきり顔面を殴り飛ばす。
ボロボロな男「ぐばっ、、た、助けて、、」
ワグ「や、やばくねぇか、助けなきゃやべぇだろ。」
小張「でも、私達の能力は見せるわけにも行かないわ。」
シュウ「俺がいきます!」
シュウはダッと前に出て大柄な男に向かっていった。
ワグ「ば、バカ野郎!!」
小張「シュウ!!」
大柄な男は男をまた放り投げ違うテーブルにぶつけさせる。
大柄な男「わしらにケンカ売ったのが間違いだったなぁ!?ああ!?」
とうとう大柄な男は懐から拳銃を取り出した。
大柄な男「死ねやボケがぁ!!」
シュウ「やめろデカブツ!!」
空気はシィンとなる。
ワグ「あぁやっちまったよ…」
小張「やるしかないかな…」
大柄な男「あぁん!?何じゃガキ!!」
大柄な男がシュウに拳銃を向ける─
その瞬間、一本のナイフが拳銃に刺さる。
大柄な男「なっ!?」
シュウ「え!?」
?「お客さん、ここがどこだかお分かりで?」
ワグ「お、おお!す、すげぇ!」
そこにはナイフを所々に携帯したピチピチのスーツを着た女が立っていた。
大柄な男「何だと!?そっちこそ俺が誰だか分かってるのか!!」
女「はぁ…面倒。酒が入りすぎて分からないのね。」
大柄な男「何言ってんだテメェ!!変態みたいな格好しやがって!!」
ワグ「それは間違いない。」
大柄な男「こいつらの前で犯してやる!!!」
大柄な男は女に向かっていく。女は流れる動きで左太ももにあるナイフケースから一本引き抜き投げようとする。
パシィィン!!
乾いた音が響く─
大柄な男「グガアアアア!!!!」
?「おやおや、サーカスをやるにはまだ早いですよぉ?お客さぁん!」
そこには小柄の…子どもの大きさぐらいのおじさんが居た。…そのおじさんは小さい体に不似合いの筋肉でシルクハットを被り、鞭を持っていた。確かあの人は─
小張「バンシャ・デイリー。」
ワグ「団長か!」
シュウ(あれが…)
バンシャ「Ladies and Gen・tle・man!!今から始まるちょっと早めのショーは必見だぁ!!」
大柄な男は顔面を鞭で打たれ顔を覆い苦しんでいる。
大柄な男「ゆ、許ぜでぇ!!」
男の顔面は血が流れ、歪んでいた。
オ?ナンダナンダ?ケンカカ?
ショーダッテヨ! ミセロミセロ!!
ヌゲ!!オンナ!! モットヤレー!!
周りが騒ぎ始め大柄な男を囲むように野次馬が集まり始めた。
バンシャ「さあさあ今回の目玉は変幻自在・百発百中のナイフ使いのアダ!アダのナイフ術はこの巨漢の男に通じるので・しょうか!」
アダと呼ばれたナイフ使いの女は残りのナイフを抜きジャグリングを始めた。
アダ「アタシのナイフ捌き…とくと味わいな。」
大柄な男「ググアア!!!」
男は腕を振りかぶる。
アダ「フフッ」シュシュッ
スタスタッと一本は振りかぶった腕へもう一本は前に出た足の太ももに刺さった。
大柄な男は悲痛な叫びをあげながら崩れ落ちる。
大柄な男「イギャアアア!!!」
アダ「これでラストよ!!」
バンシャ「ラスト宣言だー!!アダの最後の一本は何処へ向かうのか!!ドラムローール!!!」
バンシャの後ろの席にはドラムをもった人が2名居て大きく鳴らした。
ダラララララララララララララララ
ワグ「おいおい、マジか…」
シュウ「やめろ…」
アダは振りかぶる─
シュウ「やめろーー!!!!!」
アダ「」ピクッ
シュッ
スタン!!
シュバァアアアアアアアアアアアア
ナイフは一直線にバニーガールが運ぶシャンパンの瓶口を突き抜け、ワインの樽の蛇口へ突き刺さった。
シャンパンもワインも凄い勢いで吹き上がる。
オーーー!!! キレイー!!
スゲーーー!! オミゴト!!!
アダ「………」
バンシャ「こ、これは凄い!!流石はアダ!!百発百中のナイフ術!!このようなショーが見れるのはバンシャ・フリークショーここだけ!!皆さん深夜だ!!是非是非ご覧あれ!!」
ドラムを叩いていた者たちは今度はトランペットを吹きポップな歌を奏でながら出口へ向かう。
アダと呼ばれたナイフ使いもバンシャもその歌と共に手を上げ周りにアピールしながら出口へ向かっていった。
辺りは先程の[ショー]に心を踊らせている様でワイワイと酔いしれていた。
シュウは即座に怪我をした男に近寄る。
シュウ「大丈夫ですか!?」
大柄な男「ウッグッ…アガッ…い、いでぇよぉ…」
シュウ「出血が酷い!小張さん、ワグさん!」
ワグ「お、おう!確か怪我をしたときの処置室が有ったはずだ!ナイフは抜かず連れていくぞ!」
小張「先に私は処置室へ行って事情の説明をしてくるわ!」
三人は大柄な男の救命に急いだ。
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ワグ「あの女…絶対殺すつもりだったぜ。」
小張「完璧に頭を狙ってたね。」
シュウ「本当危なかった…少しでもずれてたら…」
急いだのが功を奏してか、大柄な男の命に別状は無かった。こう言うところだからか怪我人が多いらしく、処置できるような詰所が何ヵ所かある。設備もしっかりしていた。
ワグ「多分ありゃ、シュウが何も言わなかったら死んでたと思うぞ。」
シュウ「え、そうですか?」
小張「うん…シュウの声を聞いて外したって感じがした。」
シュウ「だ、だったら良かったですが、本気で殺そうとしてたなんて…」
小張「うん…やっかいね…簡単に人を殺せてしまう人達だってことだから…」
ワグ「ああ…それとエロ
小張「いい加減にしろ。」
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あれから、所々周り、時刻は既に23時を越えていた。
小張「もう大分遊んだでしょ。開演が0:30だし向かいましょ。」
ワグ「まぁ何だかんだ小張もしっかり遊んでたけどな。」
小張「なに。悪いの?」
ワグ「い、いや、そんなことねぇよー?」
シュウ「あはは…確かサーカスのテントはもうちょい奥でしたよね。」
小張「そうね。でも正直、フリークショーってだけでもキナ臭いのにあんなの見せられたら警戒せざる得ないわ。」
シュウ「そうですね…何も起こらないと良いですが…」
三人はサーカスのテントへ向かうが、有ることに気付く。
シュウ「…お店、どこもやってないですね。」
辺りはとても暗く、人気も殆ど無くなっていた。
ワグ「何か不気味だな。」
しかし、所々に薄暗いオレンジの光を放つ電球が吊るされていた。
小張「サーカスのテントまでの道標になってるみたいね。」
シュウ「演出が中々凝ってますね…」
ワグ「まぁ俺は全然怖くないけどな!」
シュウ「ワグさん…それ先に言ったら怖いと思ってるのバレバレですよ…」
三人は更に突き進むと人だかりが見えた。そしてサーカスの巨大なテントも姿を現す。入口付近にしか明かりがなく、とても不気味で恐怖を感じる。そして人だかりはそのままテントに向かっている様だ。
小張「しっかり並んで入りましょ?」
ワグ「こんな連中に横入りなんかしたら命がいくつ有っても足りねぇぜ。」
シュウ「そうですね…」
どんどん流れるように進む列─
シュウ「あ、あそこ何か配ってますよ。」
赤と青のスーツを着たスタッフらしき人が松明を持ちながら紙を配っていた。
ワグ「お?あざす…これは、公演の内容が書いてるパンフレットだな。」
小張「流れが早いし、後でじっくり見ましょ。」
いつの間にかシュウ達は中へ、テントの中はまだ薄暗く、巨大な空間になっており、円を描いて7段階くらいの量の椅子が階段状に置いてあった。1段階から下は落下したら死ぬだろうな、ってくらいの高さがある。
シュウ「めちゃくちゃ広いですね…」
小張「そうね…空いてる席あるかな…」
ワグ「あそこ空いてるぜ!6段目のとこ!」
三人は結構高いところに座ってしまったが、座れないで立って見てる人もいるので妥協することにした。
小張「そろそろ始まるね…」
シュウ「はい…ドキドキします。」
ワグ「どんなんだろうな…」
そして、
バァァンと天井のライトがテントの中心を照らし、バンシャが姿を現した。
バンシャ「Ladies and Gen・tle・man!!今宵!!見る奇々怪々なフリークの者たちはあなた方に奇跡を見せることでしょう!!そして言う!!悲鳴を!!歓声を!!驚嘆なる声を!!」
バンシャ「きっと、あなた方の心に刻まれることでしょう。是非とも最後まで楽しんでご覧下さい。」
そう言ってお辞儀をして闇に消えていった。
奇怪至極なサーカスが開演した─!