第一章 39話 閉幕-次なる舞台へ ☆
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時刻は18:45。リビングで家族三人揃い、母さんが作ってくれたバランスの取れた晩飯を食べている。
やはりあのような話が有ったからか、食卓に会話は少なく、莉沙は困惑していた。
莉沙「き、今日はね!体育の授業がバスケだったの!スリーポイント入れたんだー!」
シュウ「流石莉沙だな。」
シュウ母「莉沙はバスケ得意だものね。」
莉沙「う、うん!……」
シーン……
この空気に耐えられない莉沙はついに我慢の限界がきた。
莉沙「あーー!!もう!!何これ!離婚寸前の夫婦!?朝あんなにも楽しそうだったのに!!何でなの!?」
シュウ「今日は、、色々家事とかしてて俺も母さんも疲れててさ。」
莉沙「むぅー!酷い酷い!だったらうちも一緒に家事やって疲れたかったー!仲間外れは嫌だよー!」
シュウ母「莉沙?ご飯はもう要らないの?」
莉沙「食べるー!!」
シュウ「単純かこいつは。」
そんなこんなで時間は刻一刻と過ぎて行く…
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シュウは風呂に入ろうと向かう、調度のタイミングで莉沙が風呂から出て鉢合せする。
莉沙「お兄、次入るのー?」
シュウ「ああ、調度入りに行くところだよ?」
莉沙「ねぇお兄。」
シュウ「ん?」
莉沙「家族三人揃って過ごすなんて久しぶりじゃない?」
シュウ「確かにそうだね。」
莉沙「私、凄い嬉しいし、楽しい。お兄はそんなことないの?」
シュウ「…俺もそうだよ?」
莉沙「なら良いんだけどさ……」
シュウ「…母さんがリビングのソファーでテレビ見てたよ。」
莉沙「すぐいく!」
バタバタバタバタ
シュウ(単純だなぁ…)
シュウ(莉沙……俺だって…三人揃って嬉しいし…本当に幸せなんだよ?…でも……ごめんな。)
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そして…時刻はもう深夜の1時を回った…
シュウ「そろそろ準備しよう…」
シュウは家を出る準備をする。少し大きめのキャリーバックに衣類を詰める。ふと、畳んで置いてある洗濯物に目が行く。
シュウ(母さん…俺が風呂に入っている間に下にある服畳んで置いてくれたんだな…ありがとう。母さん。)
その畳んである服もしっかり詰めた。靴も母さん達にバレないよう、全てではなく、よく履く靴を1足とあまり履いてこなかった靴を1足入れた。他にも、家族四人の写真、財布等貴重品は持っていく。…だがスマホはどうしたものか……
シュウ「………」
少し考えた結果、スマホは置いていく事に決めた。
準備は刻々と出来ていく…しかし、シュウの心のなかでは葛藤が有った。
ここまで良くしてくれている家族。大事な愛する家族。この家族を騙し、一人出ていくという心苦しい気持ち……
もう、出ていかなくて良いんじゃないか?
そう思う時間も多かった。だが、それでは亡くなった二人に申し訳がたたない。俺には出来ることがある。それは、今後悲しい思いをする人を増やさない為。俺にはそれが出来るんだ。
シュウ(出よう…)
なんやかんや準備していたら3:00になった。
シュウ(もう向かうか…)
ガラガラっと窓を開ける。身を乗り出す。
ガチャン
シュウ母「待ちなさい。」
シュウ「いっ!?母さん!!」
窓から落ちそうになるが頑張って耐える。
シュウ母「何をやっているの。そんなところから出たら怪我するじゃない。しっかり玄関から出なさい。」
シュウ「えっ、でも…」
シュウ母「ほら、来なさい。」
母はシュウの手を引く。そのままシュウは連れてかれるような感じになる。
シュウ「あわわ、母さん!」
シュウ母は立ち止まり振り返らずに言う。
シュウ母「スマホはしっかり持ち歩きなさい。」
シュウ「あ……うん…」
片手で置いてあったスマホを拾う。
そのまま引っ張られた状態で玄関まで連れてかれたシュウ。
シュウ母「家を出る時は、窓からじゃなくて玄関からよ。窓からだなんて、、まるで…逃げるようで……もう…帰ってこないみたいじゃないっ」
シュウは気付いた…母は涙を流していた。あの気丈な母が…
シュウ「母さん…ごめん。」
シュウ母「これを…後でしっかり見なさい……」
母は封筒を一枚渡す。
シュウ「分かった…絶対見るよ。」
シュウ母「っ……うっ…うっ」
シュウ「母さん……俺…行くね。」
靴を履き、玄関のノブに手を伸ばす─
シュウ母「シュウッ!!!!!」ガシッ
母はシュウを後ろから強く抱き締める。
シュウ母「あなた達はいつも前触れも無く居なくなる!!こんなにも愛しているのに!!あなたのお父さんもこれだけ止めたのに仕事に行ったわ…その途中で命を落として……あなたも……心配よ…」
シュウ「母さん…」ギュッ
シュウも母の腕にうずくまるようにして、母の愛を一身に受ける。
シュウ「でも……俺は行くと決めたんだ。これは…母さん達を守るためでもあるんだ…」
シュウ母「っ!!」
『志乃……俺は行くと決めたんだ。お前達を守るためでもあるんだぞ?』
シュウ母「本当……本当何処までも似てるのね……。」
スッとシュウの事を離す母。
シュウ母「行ってらっしゃい。シュウ。何時でも私達は待ってるからね。あなたの居場所はここにも有るってことを忘れないで。」
シュウ「ありがとう…ありがとう母さん。俺は…本当に幸せな家族のもとに生まれたよ。」
母はポンっとシュウの背中を押す。
シュウ母「さあ!行っておいで!でっかくなって帰ってきな!私の愛するバカ息子!」
シュウ「うん!行ってきます!母さん!」
バタンッと玄関のドアが閉まる。
シュウ母「あぁ……シュウ……っ」
母はその場で座り込み、日が明けるまで泣いた…
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シュウ「…やっぱ…早すぎたかな…?」
スマホの時間を見ると4時を少し過ぎていた。シュウは一人ポツンとベンチに座っている…
深夜の一二三八幡宮はとても不気味で、シィィンとした空気がやけに怖さを引き立てていた。
シュウ(本当俺は親不孝だな…)「はぁ」
?「わあああああああ!!!」ガサッ!
シュウ「うわああああ!!!!!」
急に後ろの草むらから誰かが飛び出してきた!
?「うふふ。驚きました?」
いたずらっ子っぽく微笑んでいるのはあの時、来た変人二人組の女性、キャロラインだ。
シュウ「驚きましたよ……何でこんなことをするんですか…」
キャロ「修二さまが窓から降りて私達を脅かしたからですわ!」
シュウ「いやいや…俺は別に驚かすつもりは無かったんですが…」
キャロ「ふふふふ♪作戦成功ですわ♪」
キャロラインは小さく両手でガッツポーズをして喜ぶ。
シュウ「はぁ…えっとあの、キャロラインさんで良かったんでしたっけ?」
キャロ「あー……実はキャロラインって名前は偽名ですの。」
シュウ「え!偽名だったんですか!?」
キャロ「はい!作戦のリスクの半減を考えて偽名は使うことは多いですのよ?」
キャロラインは軽く考え、
キャロ「んーと言っても、もう修二さまはもう私達の仲間ですものね。」
スッと手を前に出す。
キャロ「改めまして!キャロラインもとい、黒木アリサですわ!」
シュウ「あ、よろしくお願いします。黒木さん。」
シュウは出された手を握り返す。
首を横に振る黒木アリサ。
アリサ「いいえ、黒木さん。ではなく、アリサで結構ですわよ?仲良くなるためには砕けていきましょ?シュウさま?」
シュウ「分かりました。アリサさん。」
アリサ「さんは要らないですのよ?」
シュウ「アリサさんこそ、さまは要らないですよ?」
アリサ「仕方ないですわ、これは癖ですの。」
シュウ「じゃあ自分もそうです。」
アリサ「ふふふ、頑固ですわね、見掛けによらず。」
シュウ「ははは、、で何故アリサさんはここへ?」
アリサ「私は、シュウさまが早めに着いた場合に、お暇にならないようここでスタンバっていたのですわ!」
シュウ「えっ、じゃあ俺が来なかったらずっとここへ?」
アリサ「はい!6時の迎えが来るまで恐らく泣いてますわ!」
シュウ「俺が来て本当に良かったですね…」
アリサ「はい♪信じてましたもの!」
チラッと時計を見るアリサ。
アリサ「それでは早めに来てくれたということで、連絡させて頂きますわね!」
シュウ「あ、はい。どうぞ。」
アリサは右耳の下の窪みに指をやる。
アリサ「はーい!アリサですわ!芦屋修二さま早めのご到着で、なんなら早めに行きません?………はい、はい……了解ですわ!待ってますわね!」
アリサ「5時20分頃に来るそうですわ!」
シュウ「別に、6時という話ならそれで良かったんですが…」
アリサ「いいえ、皆様早く本部に帰りたいのです。きっと見ればすぐに分かりますわ。」
シュウ「?分かりました。」
そのあと二人は他愛のない話をして時間を潰した。好きな食べ物や嫌いな食べ物など、本当に他愛のない。だが、アリサの話し方が上手いからか、いつの間にか時間は過ぎて行った。
アリサ「あ!来ましたわ!」
目の前で止まる長い車。
シュウ「え……これって……リムジン?」
アリサ「はい!リムズィーン、ですわ!」
シュウ「……これってめっちゃ目立ちません?」
アリサ「だから皆様早く行きたがるのです。」
シュウ「いやいや…リムジンにする必要無くないですか?」
アリサ「んーアホな前団長が、リムジンに乗りてぇな…なんて言わなかったらこんなのになってないですわ。でも…まぁ…でも中は快適ですし、モニターも有って広いので便利なことは便利なのですが……ソファーもふかふかですし。」
すると、アリサの耳元から何を言っているか分からないが、怒鳴り声が聞こえた。
アリサ「んー!分かりましたわ!すぐ行くから待っていて下さいませ!」
コツコツとヒールの音を鳴らし、車の横へ。そしてドアを開け、どうぞっとシュウを招く。
アリサ「ふふふ♪皆、お待ちしてますわ。」
ゆっくりとシュウは中へ入る。
赤い女「おせぇぞ!新人!さっさと座れ!」
グリーンの男「ほら、姉さん!いきなりそれは芦屋くん困るよ!あ、僕の隣に座って下さい!」
シュウ「あ、失礼します!」
隣に座るシュウ。隣にはグリーンの男、赤い女、ラヴさん、少し離れて本藤?(ロッド?)さんが本を読んでいる。モニターを囲むようにしてソファーが付いている感じだ。少し遅れてシュウの隣にアリサが座る。
アリサ「さあさあ!レッゴー!ですわ!」
ラヴ「yes!yes!!」
赤い女「本当うぜぇ。」
グリーンの男「まぁ楽しくていいじゃない。ですよね?芦屋くん?」
シュウ「あはは、、みなさん、これからよろしくお願いします!」
アリサ「はいですわ!」
ラヴ「yes!!」
赤い女「おう。」
グリーンの男「はい!」
本藤「………」
これからの人生はきっと普通じゃない。特別な人生がこれから繰り広げられるだろう。だが、俺は主人公では無い。正義の白ではなかったから。
俺は幼馴染を殺してしまった─
俺は黒?いや、灰色だった。黒に染まりつつ白を保とうとする灰色…これから罪を償う、壮絶な人生が幕を─開く─
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イラストはそらとさんです!ありがとうございます!