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Gris Persona -灰色の能力者-  作者: 緒方ユウ
一章 灰色の能力者
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第一章 38話 説得

リビングで机を挟み、座り、話し合いが始まった。



シュウ母「その話したい事、をまず聞かせなさい。そして何故こんな人達と接点が有ったのかを隠していた事も。」


シュウ「母さん、まず1つ聞きたいことがあるんだ。」


シュウ母「何ですか?」


シュウ「……もしもの話で、もしだよ?もし、俺が、人を殺してしまったら…母さんはどうする?」


シュウ母「……何ですか?それは。話をはぐらかしているの?」


シュウ「母さん、教えてほしいんだ。この答えを聞きたい。」


シュウ母「……あなた、人を殺したの?」


シュウ「……もしもの、話だよ。」


シュウ母「………そうね…私だったら、しっかり自首させるわ。殺してしまった人の分までちゃんと罪を償ってもらう。」


シュウ母「でも私は、シュウが人を故意で殺すような人では無いことを知っているわ。だからこそ、私はあなたがしっかり罪を償い続けるまで寄り添い続ける…こんな感じかしら。」


シュウ「……分かった。」

 この言葉を聞いてシュウの目柱は熱くなった。母の愛をここまで、受けて本当に幸せだ…


シュウ母「何故、こんな事を聞くの?」


シュウ「俺は…しっかり罪を償いたいんだ。そして、その分以上に人の為に働きたい。沢山の人を救いたいんだ。」


シュウ母「……何か悪いことをしたの?」


シュウ「……トモや美香の為にも…なんだ。」


シュウ母「トモ君や美香ちゃんの為?一体どういう事なの。教えなさいしっかり。」


 シュウは絞り出すように声を出す。




シュウ「………俺は二人を殺したんだ。」


 シュウ母の眼が少しだけ険しくなる。


シュウ母「……そう。」


シュウ「疑わないの?」


シュウ母「息子がこんなにも辛い表情で、答えているのに疑う必要は無いわ。」


シュウ「……うん…。」


シュウ母は眼鏡を外し、片手で自分の両目を覆い考える。



 カチッカチッカチッカチッ…

 時計の針の音がやけに大きく聞こえるほど静かな空間になる。



 そして、数分黙った母は口をあける。


シュウ母「さっきも言ったように…あなたが故意に人を殺すことはないと言うことは知っているわ。警察も沢山動いてて、美香ちゃんは自殺で断定してる。トモ君は海外に移住としっかり聞いてる…トモ君は置いといて、美香ちゃんに関してはあなたに落ち度はないけど…止められなかった悔しさがあるのでしょう…。」


シュウ「俺が…殺したような物なんだ…」


 指の隙間からしっかりとシュウの眼を見る母。


シュウ母「……それで、あの人達の所で罪を償うの?本当はあの人達は少年院のようなところなのかしら?」


シュウ「少年院ではないかな。…強いていうなら違う学校…警察?みたいな、所。本当に政府が設立しているような所なんだ。」


 そして強い意志を持って言う。


シュウ「俺はそこで、人の為に働きたいんだ。母さん。」



シュウ母「あなた一人で何が出来るのよ。」


シュウ「母さん、本当に行かせて欲しいんだ。俺がこんなにも母さんに言ったことある?」


シュウ母「有るわ。」


シュウ「有ったっけ…?」


 覆っていた手を放し、顔を上げて言う、


シュウ母「忘れてしまったの?高校受験の事。」


シュウ「あ、、」


シュウ母「あなたは三人で同じ学校に行きたいからって私の意見を無視してまで、自分より上の学校に受験したじゃない。」


シュウ「そうだった…あの時、母さんと初めて、喧嘩したね。母さんは絶対レベルを下げた方が良い!って言ってたもんね。」


 フフっと笑うシュウ母。


シュウ母「そうよ?そのとき初めて知ったわ。あ、この子は決めたら曲げない頑固な子だなって。お父さんにとても似てるわ。」


シュウ「そうかな…」

 少し照れ臭くなり笑うシュウ。


 しかし、母は言う。


シュウ母「それでもです。それでもこの件は許しません。」


シュウ「母さん…」


シュウ母「……私は少し疲れたわ。部屋に戻って少し寝るわね。」


シュウ「………ごめんね、母さん。」


 片手で自分の目柱を抑えながら部屋に戻る母。





----------------------


 そして、時間が経ち、また二人の使いがやってきた。

 シュウは二人を中に入れ、リビングで座って待たせる。母は後から降りてきて顔を合わせた。


ラヴ「おやすみだったところ、申し訳無いです。」


キャロ「お邪魔しますわ。」


 二人はお辞儀をし、言った。


シュウ母「……答えはもう言ったはずです。もう来ないで下さいとも。」


ラヴ「もし、今後、芦屋修二君をお預かりした場合の詳細を聞いて頂こうと思いまして。それを聞いて駄目ならば、私どもはもうここには来ないと約束させて頂きます。」


シュウ「母さん…話だけでも聞いて欲しい。」


シュウ母「……分かったわ。どうぞ、話して下さい。」


ラヴ「分かりました。もし、芦屋修二君を預かった場合の話です。私達の事業は簡単に言うと、慈善、管理、現場、医療、の4つに分かれます。そのなかでも芦屋修二君は慈善事業の方に何れは力を貸して欲しいと思っております。」


キャロ「内容としては、震災等によるボランティア活動が中心ですわね。」


シュウ母「何故息子がその仕事をする才能があると?」


ラヴ「芦屋修二君はこれまでで沢山の苦難を乗り越えて来ました。私達は実は病院内で初めて顔を合わせまして、幼馴染の話を聞かせて頂きました。美香さんや友樹さん、このお二方を思う気持ちはとても感動でした。しかし、美香さんは自身の病のショックにより、自殺。友樹さんは海外に行って音信不通に、終いには、学校の教師が殺人事件の主犯で恐らく、通っている学校は近年に閉校してしまう。その様な不運を何とか私達が救い、苦難を乗り越えて来た芦屋修二君だからこそ、慈善事業の方で活躍出来るはずだと。芦屋修二君も、人を救いたいとまで言ってくれて、心の中に信念を見ました。だから芦屋修二君なのです。」


シュウ母「……そうですか…」


キャロ「それでは、もし、今後、芦屋修二君を預かった場合の話を続けます。まずはこちらが用意する高校へ入学してもらい、何れは、大学卒業の資格も取ってもらいます。帰郷に関しては本人に任せます。嫌になったら帰るのも可能ですし、連絡も任意です。学費も勿論無料。月に29万の支援金を芦屋修二君の口座に振り込まれます。衣食住はこちらが提供、芦屋家に公共料金、全公共サービス8割をこちらが今後負担させて頂きます。」


ラヴ「芦屋修二君がもう辞めると言った場合、月29万の支援金は無くなりますが、芦屋修二君が亡くなるまで、公共料金、全公共サービスの8割負担は継続していきます。」


シュウ母「…そんな事が本当に可能なのですか?」


ラヴ「可能です。」

キャロ「可能ですわ。」


 少し無言が続く…




シュウ母「あなた方の言い分は分かりました。答えはNOです。帰って下さい。」


シュウ「母さん!!」


シュウ母「駄目です。私は絶対にあなたを手放しません。ここで、じゃあ行ってらっしゃいなんて言ったら母親として失格です。」


シュウ「でも!俺は!」


ラヴ「修二君。もう諦めましょう。私達は約束通り、もうここへは来ません。出ましょうキャロライン。」


キャロ「はい……それではお邪魔致しました。」


 二人はお辞儀をして、席を立つ。


シュウ「あ、待ってください!」


ラヴ「修二君どうしました?」


シュウ「……玄関外まで…送ります。」


 シュウは二人と玄関外まで出る。


 ガチャン




キャロ「申し訳無いです……お母様の説得は無理でしたわ…」


シュウ「この町を出るのはいつ頃ですか?」


ラヴ「修二くんの勧誘に失敗したので、明日、朝6:00に出てしまいます。」


シュウ「でしたら自分は朝の3:30頃に家を出ます。」


ラヴ・キャロ「!!」


キャロ「いやいや!それは駄目ですわ!だってお母様許してなかったじゃないですか!」


シュウ「いや……母さんはもう分かってると思います…俺が出ることを。」


ラヴ「……良いのですか?出ても。」


シュウ「俺は決めたんです。罪を償う為にも、今後俺のように悲しい思いをする人を無くす為にも。俺は家を出ます。」


ラヴ「……分かりました。ですが、6:00に来なかった場合は置いていきます。場所は一二三八幡宮の前です。よろしいですね?」


シュウ「分かりました。」



 俺は家を出る事を決めた。

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