表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Gris Persona -灰色の能力者-  作者: 緒方ユウ
一章 灰色の能力者
34/197

第一章 31章 最後のさよなら


シュウ「俺も…死ぬよ…」


 幼馴染を殺してしまった罪…せめてもの償い…そして…二人に会いたい…


 その思いは強かった…だからこそ決意した…これからの人生には未練が無いと言うと嘘になる。だがしてしまったことがシュウにとって色んな意味であまりにも大きすぎた。


 シュウはそっとベッドを出る。


  シャッ


 カーテンを開け窓の外を見る。こんなにも暗かっただろうか…こんなにも色が無かっただろうか…


 視界がボヤける…


シュウ「駄目だ…泣いちゃ…」


 これ以上泣いたら動けなくなる。


 我慢して時計を見る。時刻は深夜1:04。やり残したことはないだろうか?今出来ることでやり残したことは……家族の顔が見たい。


--------------------


シュウ(母さんの部屋に入ると起きちゃうからな…莉沙の顔だけでも…)


 カチャ……莉沙はベッドで爆睡している…莉沙は寝ると中々起きないのは知っている。


 ベッドの横に座るシュウ。


シュウ「俺はな…お前の事を自慢の妹だと思っているよ…」


 莉沙は強いやつだ…俺に気を使い葬式の時も泣かなかった…きっと本当は泣き出したかっただろう。他にも莉沙のエピソードはある。誰かがクラスで虐められていたらしっかり守れる、クラスでは皆がやりたがらなかったクラス委員を引き受けたり…正直妹の自慢をしろと言われると負ける気がしない。これまで一回もしてこなかったけど…俺は本当に莉沙が自慢の妹だ。莉沙が作るスクランブルエッグをもう食べれなくなるのは少し…悲しいな…


シュウ(先に死ぬ兄を…どうか許して…母さんも…ごめんね親不孝で…)

 そして立ちあがり出ようとすると…


莉沙「…お兄……」


シュウ「!?」(起きたか!?)


莉沙「ホットケーキ……食べたい……」


シュウ「」ドキドキ


 ゆっくり振り返る……莉沙は寝ていた。寝言だった。


シュウ(こいつ……寝言するようになったのか…びっくりしたな……)


 少し考えるシュウ。


シュウ(ホットケーキ…か…母さん起きるかな?でも最後に兄としてこれくらいはしてあげたいな…)


--------------------


 時刻は1:48、ちゃちゃっとシュウはホットケーキを作る。生地を混ぜて焼く、既に3枚は作り出した。最後の4枚目だ…母さん二枚と莉沙二枚。生地を混ぜているとまた涙が出そうになった。目の前が涙でボヤける。


シュウ(ダメダメ!泣いちゃ駄目だ!)


 目頭を抑え我慢する。


 ガチャ

シュウ母「シュウ?何してるのこんな夜中に。」


シュウ ビクッ「あー、か、母さん?」


 シュウのしていることを覗き込む母。


シュウ母「何?お腹減ったの?昨日少ししかご飯食べられてないのは分かるけど…言ってくれれば作ったのに。」


シュウ「まぁ、うん。だから明日の朝の為にホットケーキを…てね。莉沙も食べたいって言ってたし。」


シュウ母「ふーん…そう。莉沙も言ってくれれば良いのに。」


シュウ「あまり母さんに負担をかけたくないからさ。」


シュウ母「そう…」


シュウ「母さんは寝てて?最近休めてないでしょ?ゆっくりしててよ。」


シュウ母「……」


シュウ「母さん?」


シュウ母「分かったわ。でも今日はもう寝なさい。残りの生地は冷蔵庫に入れておいて、明日私が作っとくから。」


シュウ「いや、大丈夫だよ!俺に作らせて?」


シュウ母「いーいーの!私が作るから!子供はもう寝なさいな。」


シュウ「う、うん…分かった。」


シュウ母「先に部屋に戻りなさい。」


シュウ「うん、おやすみ母さん。」


シュウ母「はーいおやすみ。」


 バタン。リビングを後にするシュウ。


シュウ母「……ふぅ、負担をかけたくないかぁ」ボソッ


シュウ母(明日から三日間…有給取るか…)


--------------------

 部屋に戻るシュウ。時刻は2:11。


シュウ(もう決めたんだ。母さん…ごめんね…でも顔が見れて本当に良かった…)


 シュウは学校の制服に着替える…


シュウ(最後はこの格好で死にたいな…)


 三人で努力して入試に挑んだ高校…三人で集まって…勉強して…ちょっと遊んだりして…楽しかったな…


 そして机の引き出しから写真を出す。それには家族四人がキャンプ場で楽しそうに写っている。シュウ、母さん、莉沙、そして生前の父さんだ。シュウがまだ12の頃の写真。


シュウ(父さん…ごめんね、会いにいくよ。)


 その写真は内胸ポケットに入れる。これで思い残すことはない。外を出よう……窓を開けるシュウ。そして窓を出てその場で浮く。この忌々しい能力で…あの場所へ…死ぬ所はもう決めている…


--------------------


 シュウの能力は浮く能力。だが浮上は出来ない。その場に保つこと、そしてスライドすることだけ。スライドの速度は自分が走った時のスピード以上は出ない。ただそれっぽっちの能力だ。

 その能力で色々な所を経由し、着いた所は─


シュウ「着いた……」


 高校の屋上だった。シュウはある場所へ引き付けられる。


シュウ「この下は…」


 トモが落ちた所だった。その上で漂うシュウ。


シュウ「………」




  頭の中で様々な思い出が交差する-


     楽しかった人生-


     もう充分だ-


   そう自分に言い聞かせる-


       ありがとう-


       ごめんね-


  トモが…美香が居る場所へ-



シュウ「はぁ……スゥ」


    深呼吸を最後にする─


シュウ(じゃあね…)


    一筋の涙を流し─


  色んな人に向けた言葉を心のなかで呟く


    そして---能力を解いた。





ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!



--っ ガシャッア!!!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ