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Gris Persona -灰色の能力者-  作者: 緒方ユウ
一章 灰色の能力者
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第一章 29話 壊れた心

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ポクポクポクポク…南無南無…ポクポク


シュウ「……」


美香母「いやあああああ!!!!美香ぁぁぁぁぁぁ!!!」


美香父「…美香…」


 美香のお父さんは泣き出したくなっているのを我満しつつ妻を抱き締めていた。


 シュウと莉沙と母は端の友人用の席に居た。

莉沙は大声で泣くことはしなかった。シュウに気を使っているのだ。だがやはり悲しみが溢れて我満ならなくなるのかシュウの腕に顔を埋めてしくしく泣いたり両手で顔を覆いうずくまり体を震わせ小さい声でしゃくりあげ泣いていた。

 母はぽろぽろと涙を溢すがしっかりとした姿勢で前を向いていた。


…シュウはというと、無言で美香の遺体が入った棺をぼーっと見ていた。涙は流れなかった。悲しいという感情も無かった。シュウの中には何も無かった。何も無くなってしまった。


---------------------


─美香は飛び降りだった。高校近くのマンションの7階からだった。その場は大惨事だったそうだ。物凄い音を聞き不穏に思った住人が外を見てすぐに通報した。

 そして泣きわめいて動けないシュウを近くに座らせ訳を聞いていた美香母の元に連絡がくる。美香が飛び降りて即死、病院に着いてすぐに死亡判定が出たことを聞かされた。その言葉を聞き青ざめる美香母…


美香母「……シュウくん。泣くのはもうやめなさい。総合病院に行くわよ。」


シュウ「うっ、うっぐ…ううう…」


美香母「立ちなさい!!!」

 凄い形相と声でシュウに言い両襟を掴み立たせようとする。


美香母「来なさい。修二君。」


 殆ど引き摺られるようにして近くのタクシーまで連れていかれた…それから先はもう覚えていない。


---------------------


今は焼香の時─


担任「うわぁぁぁあああん!!」


 激しい声で泣いているのはシュウ達の担任。


担任「何でだ!何でだ生駒!辛かったら相談しろと…俺にも相談すると…言ってたじゃないかぁー!!」


近藤先生「先生…気持ちは私も同じです…私がもっと力になってあげれれば…うぅ」

 そう言い涙を流す。


 美香と同じ学年、同じ部活の生徒は皆来ていた。美香は色んな人と仲良くやっていたから来る人皆涙が流れている。号泣する女子生徒もいる。あれは…美香とよく話してた友人だったかな?

 美香は本当にいいやつだったと分かる。男女共に分け隔てなく会話して皆と仲が良かったんじゃないだろうか、、そんな事は無かった。何となく違和感を感じる泣き方をしている人物が居た。

 成瀬愛歌だ。アイツと美香はずっと仲が悪かった。あの泣き方は見るからに分かる。場に合わせた嘘泣きだ。成瀬の焼香が終わるとさっきの涙が嘘だったように無くし仲間の女子と出口付近で話をしていた。


 焼香の時間が一通り終わると通夜振る舞いが始まる。普通、親族、遺族だけで行われるがシュウの家族もそこに招待された。美香の母曰く、


美香母「芦屋家は美香にとって…私たちにとっても家族同然よ。」


 だそうだ。座敷の部屋に案内され向かってる途中……そこに招かれざる客が現れた。警察だ。人数は4名。


警察「こんな時に申し訳ありません。芦屋修二君の事情聴取をしに来ました。任意ですが同行お願いできますよね?」

 警察はシュウの腕を強めに掴んだ。


シュウ母「ちょっと!!」

シュウ「……」


美香父「おい、なんだこれは。やめろ!今日は通夜だぞ!なに考えてるんだ!!」


 美香父が立ちあがり警察の元へズカズカと前へ出る。


警察「申し訳ありません。これは緊急を要しておりますので。」


 美香母も警察の所へ来る。


美香母「…やめて下さるかしら。場の雰囲気を見て貰いますか?」


 警察が来いと言わんばかりに乱暴に腕を引っ張る。


警察「特別事項の事情聴取なので。行くぞ、芦屋修二。」


 引っ張られるシュウ。


莉沙「やめてよ!!お兄を連れてかないで!!」


   ガシッ


 美香父がその警察の胸ぐらを掴んだ。


美香父「貴様この子がどれだけ傷ついているか分かってるのか!!」


 その怒りの形相にビビり腕を離す警察。


美香母「そうよ!!この子は私達家族と同じくらい悲しんでいるわ!!」


警察「で、ですが、これも仕事なので」


美香父「シュウは何もしてない!!」

美香母「シュウ君は悪くないわ!!」


 美香父は警察をそのまま押すように出ていかせる。


美香父「顔を一生見せるな!このくそ警察が!!」


 警察はばつが悪そうにそそくさに消えて行った。


美香母「ごめんなさいね、シュウ君、芦屋さん、莉沙ちゃん。」


シュウ母「いえ、助かりました。シュウの為にありがとうございます。」


 美香母がつかつかとシュウの前に来てこう言った。


美香母「私は、私達はシュウ君が美香を殺したとか死に追いやったとか微塵も考えてないわ。逆に助けてくれようとしてたのよね…私達はしっかりと分かっているわ。あなたはそんな事する子じゃない…逆にお礼を言いたいわ、ありがとうシュウくん。美香のために。」


    ビクッ


シュウ「……すいません。」


美香母「謝ることはないのよ?さ、お寿司が有るわよ、きっと沢山食べてくれたほうが美香も喜ぶわ。ささ、食べましょ?」


 通夜振る舞いが仕切り直しされ始まった。


シュウ「………ありがとうは…もう…やめて下さい…」ボソッ





---------------------


 葬式場より少し離れたところ。


グリーンの男「………」


赤い女「おい、行くぞ奏。」


グリーンの男「…大丈夫かな、彼。」


 グリーンの男は葬式場を見ていた。


赤い女「……知らねぇな。」


グリーンの男「ねぇさんまた接触したんでしょ?変な事言わなかった?」


赤い女「あぁ??言ってねぇよ。ただ乗り越えろっつっただけだ。ここを乗り切れなきゃ強くはなれねぇよ。」


グリーンの男「今回の現場は前とは違うし……団長に監視が必要だと伝えるべきかな?」


赤い女「要らねぇってそれでもし能力を濫用とかしたら殺すだけだ。早く別行くぞ。」


グリーンの男「あ、待ってよ、ねぇさん!」


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