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第四章 27話 協力協定


 フィレンツェのとある空家─


 木製の長机とボロボロの椅子と赤い革が剥がれつつあるソファーが並ぶこの部屋は誰かが住んでいたが、もう随分昔から無人だった。電気もガスも止まっているが、蝋燭を二本机に置き、何とか周りが見える程度。


 そんな所に安藤硲と名乗る背広姿の好好爺とくノ一衣装の小雨鶲と名乗る少女。この二人はこの空家をアジトとして使っているようだ。


安藤「ここに人は来ませんから警戒も解いてもらってかまいませんよ。ここの主は2週間以上前から行方不明になっておりますので」


ロッド「行方不明だと?」


安藤「ここ最近の事件と関係が深いそうです。その話も諸々させていただきたい」


 安藤は机にイタリアの地図を広げる。


ロッド「……お前たちを信用して良いのか?」


 忍組と同じような格好と武具に疑心を抱えるロッド。


伊賀崎「五條殿、大丈夫ですよ。安藤殿と小雨殿は自分の家族のようなものです」


ロッド「しかし、作戦メンバーには加わっていなかった」


 安藤はニコニコとしながら頷く。


安藤「良いですね。流石はハーウェイの隊員です。この状況になっても警戒を怠らないのは工作員として必要な事です。伊賀崎」


 安藤は伊賀崎からアリサお手製のモール人形を受け取る。


安藤「だからこそ、五條宣治、あなたで良かったと言える。この状況を冷静に判断し、守秘するものは守秘する。信用に値するあなたに話せる全てを教えましょう」


ロッド「……」


 安藤はモール人形を解き、指で揉む。ほつれてきたモールをそのまま前歯で齧り、舌で転がしながら俯いて何かを考えだした。


ロッド「……」


安藤「なるほど」


 安藤は地図のフィレンツェ辺りに指を置き、すすすっとティレニア海をなぞりシチリア島に指を止める。


安藤「遠いですね、だが、ここに居ます」


ロッド「……何がだ」


安藤「移動経路は船ですかね、少し海沿い、パレルモ近く……海上?いや、ここは地下だ」


 ロッドは安藤の言っている意味が分からなく困惑する。

 安藤は目頭を抑えてふーっと一息ついた。


安藤「ここに貴方達の探しているお仲間が居りますよ。生命反応も強く、怪我もしていません」


ロッド「……どういうことだ。これがお前の能力というのか?」


伊賀崎「信じて良いです。安藤殿の能力は追う能力。その人の一部や思い入れのあるものを使って場所と状態が分かるのです」


安藤「いやはや、万が一、状態が悪かったら分かりませんでしたね。ここまで遠くだとは思いませんでしたよ」


ロッド「……地下に幽閉されているのか。だが、先に無償で情報を伝えるということは何か有るのではないか?」


 安藤はロッドの問いに笑う。


安藤「フッフッフ、鋭いですね。こちらの情報を全て伝える代わりに守ってほしいことが二つ」


ロッド「なんだ」


安藤「まず一つは私達が居る事をバレたくない。これはBARKERsに対してもです」


ロッド「……何故だ。今こちらの戦力でNoFaceと渡り合う事は難しいというのに」


安藤「私達はフランク・ハーウェイの影。命あれば動く隠密私兵。BARKERs、NoFace、B.B.B.にも。ましてや、国にも認知は避けたいのです」


ロッド「……なるほど、そんなものを持っていたとはな。だが、この戦力差はどうするのだ」


安藤「既にそれは解決済み。もう一つの約束事を守ってくれるのならば、この状況を解決にもっていけます」


ロッド「……話を聞こう」


安藤「今回、私達が出たのも里の対立の為にあります。私達は穏健派であり、武力や暴力で物事を解決しようとする忍組頭領率いる強硬派によって、穏健派は嬲り殺され、生き残った私達は散り散りに逃げ、忍びの里を復興するチャンスを伺っておりました」


 安藤は五枚の写真を取り出し、地図の上に広げた。ロッドは一人の顔を見て釘付けになる。


安藤「六代目忍組頭領、伊賀の百地弾正。風魔一族長、風間四八。くノ一筆頭、望月伽夜。甲州透破の長、出浦明暗……」


 そして、大きくバツが書いてある写真に手裏剣を投げつける。


安藤「今は亡き元凶にして極悪。五代目忍組頭領、呑空呑海の加藤磐越」


 風間の写真を血走った目で見るロッドに安藤は提案を投げる。


安藤「そしてあなたが今すぐにでも殺したい者はこの風間のはず。この者たちが居る間は忍びの里の復興は成り立たない」


 ロッドは深く息を吐き、椅子にもたれる。


ロッド「……なるほどな。殺しを手伝えと」


 安藤はまだ笑みを浮かべる。


安藤「策はある。そちらにも有益なはず。見ての通りNoFaceが関わっているのは確かです。手を組むのは任務を達成するのにも一挙両得かと」


 ロッドは胸ポケットから本を一冊出し、表紙を優しく撫でて考える。


ロッド「殺しか……」


 目を瞑り、フッと笑みを浮かべる。


ロッド「私には無理だな」


安藤「あなたの能力があれば可能なはずです」


ロッド「可能ではある。だが、殺す覚悟が出来ない。私の手で殺めるのは無理だ」


安藤「では、補助は出来ると?」


ロッド「含みがある言い草だが、それならば」


安藤「では、交渉は成立ですね」


 安藤は握手するために手を差し出し、ロッドもそれに答える。


ロッド「聞きたいことは山程ある。話を続けよう」


安藤「分かりました。まずは、ここ最近多発している失踪事件についてお話しましょう」


 安藤は状況の説明を続ける─

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