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第四章 21話 濃霧の夜はご用心


 美術館─


 バルディへの謝罪は意外にもあっさりと終わった。罵詈雑言をかけられてもおかしくはなかったのだが、面識のある組織がダイヤを預かっている事、これからガンビーノを捕まえると伝えると、しっかり返ってくるならばと理解してくれた。



伊賀崎「取りあえず、自分からの意見としては二手に別れてガンビーノ一家の居場所を探りましょう」

逸夏「ならば私はシュウ君と共に行こう」


 間髪入れずに強い口調と眼差しで同行を求める。本当に信用してくれたんだなとシュウは嬉しく思い、頷いた。


シュウ「じゃあ決まりですね。俺は逸夏さんと会った所を調査します。心当たりがあるので」


伊賀崎「なるほど、分かりました。では自分も心当たりが一つあるのでそこを五條殿と向かいます」


 ロッドは頷き了承する。


伊賀崎「深夜ですので、危険が伴います。キリの良いところ、最高5時までには我々が宿泊するホテルに居てください。何かあった場合はすぐに共有をお願いします」


シュウ「分かりました。逸夏さん、あの日本料理屋に行きましょう!」


逸夏「ああ、ついていこう」


 二手に別れての捜索。吉と出るか凶と出るか……



----------


 日本料理屋付近─


 深夜深くなると街灯の明かりしか頼りが無い。家々は寝静まり、営業しているお店も少ない。更に、辺りに居たチンピラ達も見当たらない。治安が保たれているのだろうか?あまりの静けさに何か身の毛のよだつ怖さを感じる。


 そんな事は露知らずか、逸夏は凛として少し楽しみを感じるくらいに気持ち大幅に歩んでいる。


シュウ「凄いですよね逸夏さん、こんな所でも堂々としてて……怖いなぁとか思ったりしないんですか?」


 シュウは疑問をぶつけると、逸夏は足を止めて空を見上げる。


逸夏「怖さなど微塵も無い」


 その後、シュウに振り向き照れながら頬を人差し指で掻いて言う。


逸夏「それとも、普通の女性はここぞとばかりに怖がる方が可愛らしいのだろうか、ハハハ……」


 シュウはそんな逸夏に素直な自分の気持ちをぶつける。


シュウ「いやいやいや!本当に心強いですよ!!なんか、なんかそうですね……俺の方が強気で居なきゃいけないのになぁと……」


 逸夏は刀が入った袋ごと握り、シュウに突きつけるように拳を向ける。


逸夏「なに、私は近衛流の近衛逸夏だ。ガイジンだろうが、妖怪だろうが、幽霊だろうが敵ではないよ。どんな事があろうともシュウ君を守ろう、それが私の役目だからね」


 シュウは逸夏のその言動に恋愛とは違う心臓の高鳴りを覚えた。


シュウ「かっこいいなあ逸夏さん……」


 逸夏はニヤリとしてシュウを横目流し見る。


逸夏「私は負けたことが無いからね。さあ、もう近い急ごうか」


 

 二人は誰も居ない町並みを進んでいった。


-------



 お店の前まで来ても誰一人居ない。皆、家で行儀よく寝ているのだろうか。


シュウ「おかしいですね……人一人居ない……日が出てからまた出直します?」


逸夏「……」


 逸夏は違う方向を見ていた。


シュウ「どうしたんですか?」


逸夏「あれは……」


 逸夏はシュウと離れ、道路を挟み向こうの側溝にキラリと光る何かに近づいた。


 離れた距離は数mくらいだ。


?「すいませんねェ……」


シュウ「?」


 シュウは後ろから声をかけられ振り返る。そこには深いコウモリ傘を差した男性らしき人が立っていた。顔は深い傘によって見えなくなっていた。


 辺りは霧がちらほらと出てきている。


シュウ「どうかしたんですか?」


?「道を、尋ねたくて」


 傘からもやもやと霧が溢れてくる。深い傘だから霧が溜まるのだろうか……


シュウ「あーすいません……自分、日本から来てまして……」


?「あー……仕方ない、それじゃ



?「おやすみナァ」

シュウ「!?」


 その男が傘を後ろに傾けると咥えタバコをしている。驚いたのは口からタバコの煙とは言えないくらいに大量の煙、いや、霧が漏れていた─

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