第一章 17話 家族
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そしてまた朝がやってきた。
昨日は美香と会った後は、母親と妹が来て退院に向けての荷物の整理をしてくれた。
俺にはしっかり者の妹が一人いる。
名前は莉沙、二つ離れた15才。特技はバスケとサッカー。よく俺とトモ、美香、莉沙でバスケやサッカーをして遊んだものだ。
実は妹は何度も病室には来てくれていたが、医師や看護師に入ることを止められていたらしい。恐らく前回来てくれた浅黒い男の人達の配慮だったんだろう。
母はと言うと相当なキャリアウーマンで毎日が仕事。息子が入院と聞いて相当な不安が有ったらしいが大事な要件が立て込んでおり行く事が出来なかったようだ。 俺の顔を見て泣きながら抱き締めてきたくらいだったから本当に居てもたってもいられなかったのだろう。
因みに、俺は貧血で倒れたという理由で入院した事になっている。今日は退院の日。妹が退院の手続きをしにきてくれていた。
莉沙「ほんっと、お兄は貧弱だなぁー貧血で倒れるなんて、ちゃんとご飯食べてるのー?」
小馬鹿にするように笑いながら話す妹。
シュウ「おいおい、俺とお前は同じもの喰ってるだろうが。貧血はなー、運が悪かったら誰でもなるんだよ」
莉沙「へぇーふぅーん」
そうまた、小馬鹿にした笑みを浮かべた後に、少しだけ思い詰めた顔をする莉沙。
莉沙「でも、本当に大したことない貧血で良かったよ……お兄死んじゃったらどうしようかと本当に焦った。だって、だって先生も看護師さんも入れてくれなかったし、状態も言ってくれなかったからさ……もう……家族が居なくなるのは嫌だな……」
目に涙を滲ませながら言った。
父親は三年前に他界している。若くして膵臓癌を患い、それでも家族の為にと仕事へ出たその日の通勤途中、車の中で亡くなっている。体に異変が起こった時に車を脇に寄せたお陰で事故は起こらなかった。とても家族を愛し、思い続ける最高な父親だった。
シュウ「うん。大丈夫だよ。大丈夫……」
妹の頭に手でポンと乗せ答えた。色々と大丈夫じゃない自分は自分にも言い聞かせているのか、大丈夫しか言えなかった。
そして全ての手続きが終わり病院をあとにし、帰路に就く。その時自分の中でふと思いついた。
シュウ「あー……莉沙?申し訳ないけど俺寄りたいところあるから荷物とかお願いしていいか?」
莉沙「はぁー!?馬鹿じゃないの?さっきまで入院してた人を自由に動かすかっての!」
シュウ「トモの家に少しお邪魔するだけだから。大丈夫すぐ戻るよ。」
莉沙「トモ兄今、家族みんなで海外へ行っちゃったんだよね?弟の好一のクラスでそう話題になってたよ!」
シュウ「あーそうかお前と同じ学校だもんな。俺トモの家に忘れ物しちゃってさ、少しの間残りの家具とかは残してくれるとかって話聞いたから取りに行きたいんだよね」
莉沙「私も行くよ!」
シュウ「いやいや駄目だよ!ほら、トモ自身あまり見られたくないもんとかも有るだろうしさ、家も近いから心配しないで?本当すぐ帰るからさ」
莉沙「んー…分かった。すぐ帰ってきてよ!昼作っとくから!」
シュウ「ありがとう、莉沙。」
そしてシュウは一人トモの家へ向かった。