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第四章 20話 ガンビーノ一家


 某イタリア地下アジト─


アリサ「ん……」


 

 アリサは周りの騒ぎに気付き目を覚ます。誰かが歌い、笑い、楽しそうにしているようだ。


「お!!マンマミーヤ!女神が眼を覚ましたぞ!」


 この声には聞き覚えがあった。ぼやけた眼を擦り目の前の人物の顔を見た。



アルベッロ「気分はどうだい?我が愛しき貴女」


 

 自分の事をアルベッロ・ガンビーノと名乗った綺麗な男性。ニコニコとしながら長方形で石造りのベンチのようなものに横たわるアリサに手を差しのべる。


アリサ「あなたは……!何故私はここに!?私を仲間のもとへ戻してくださいませ!!」


アルベッロ「待って待って!落ち着いて!」


 取り乱すアリサに慌てて制止するアルベッロ。


アリサ「私を誘拐してどうするつもりですの?」


アルベッロ「悪いことは絶対しないよ。約束しよう」


 アルベッロは何も敵意はないよと手をあげる。


アルベッロ「君と話がしたいんだキャロライン嬢。落ち着いて」


 アリサは冷静になり、周りを見た。そこは石造りと土が混ざった壁で覆われ、東京ドーム一個くらいの大きなフロアになっている。RPGゲームでありそうな酒場のようにお酒を出すカウンターが置いてありいくつもの机を囲み沢山の人が騒いでいる。



アリサ「ここは……?」


アルベッロ「ここはシチリアの地下にあるアジトさ。まさか地下にこんな所があるなんて思わなかったでしょ」


アリサ「シチリア!?フィレンツェに居たはずですのに」


アルベッロ「そこはまあ僕様のびっくり技が成し遂げたのさ」


アリサ「びっくり技……まさかあなたは本物の……」


アルベッロ「そう、僕様がこのガンビーノファミリーのボス、アルベッロ・ガンビーノその人さ!」


 その一声に周りの歓声は沸き上がり。屈強な黒人も女も白人も老人も老若男女、人種問わず周りに集まりアルベッロの事をもみくちゃに撫で回す。



アルベッロ「こ、こらぁ!威厳が消え去るじゃないかぁー!」


黒人「なあ、嬢ちゃん。ボスはな、ここの皆に好かれてんだ。ここにいる奴等はボスの為にここに集まってる。嬢ちゃんは最高な人に眼をつけられたもんだぜ」


アリサ「いや、私は……」


 アリサはこのアルベッロの人望に驚いた。周りに居る人だけでも十数人。この場所に居る者は百は居るだろう。盗賊団のボスと聞いていたが、盗賊とはかけ離れたイメージの人も居る。本当にただのそこらへんに居る一般人のようだ。



褐色の女「はぁボス。またフラれるんじゃない?」


アルベッロ「いやいや、まだチャンスはあるよアマンダ。ほら、ブライアンももっと僕様を誉めていいよ!」



 屈強な黒人と褐色の女は写真に写っていた幹部の二人。この二人もイメージとは裏腹に悪い感じはしなかった。


アリサ「あなたをフッたら私は殺されるのでしょうか?」


 そのアリサの言葉を聞いて周りの人達は大いに笑う。


ブライアン「HAHAHA!!殺すって?このボスには嬢ちゃんを殺す度胸はねぇな」


アマンダ「このお人好しのボスはね、人殺しが大嫌いなんだよ。命に関わる全般の悪事は全てやらないのさ」


チンピラ「薬も人身売買も全部やらねぇ、やるのは富裕層からの盗みのみさ!」


老人「ボスは儂のような人間にも均等に金を分け与えるんだ。貧しい人を見捨てる事が出来ないのがこのアルベッロ・ガンビーノなんだよ」


 それはまさに義賊だった。この人望はただの人間ではつくことはない。言っている事は本当なのだろうし、周りから真に愛されているのだろう。


アルベッロ「なあ、キャロライン嬢。僕様は君をもっと知りたい。君の真なる所を教えてほしいな」


アリサ「私……私はキャロライン・イーネ、雑誌の撮影のために

アルベッロ「嘘は悲しいなぁ、僕様の聞きたいのは真なる所だよ?アリサ」


アリサ「!?」

  

 教えていない名前を言われ凍りつくアリサ。


アルベッロ「何故、僕様が知っているのか。それは君を盗んだ時お仲間がアリサと言ったのを聞いてね。あとこれは─


 アリサの持っていた顔写真付きのキャロライン名義の手帳とパスポート。


アルベッロ「偽造パスポートだし、雑誌の撮影できた人物が日本政府の手帳はおかしいよねぇー?」


アリサ「っ!」


 アリサはすぐに胸ポケットを確認するがやはりアルベッロの持つその二つの物は自分のものだった。


アルベッロ「そもそも、普通の観光客や撮影で来た人物と言えども僕様を知ってそうな反応するのはちょっとおかしいかなー日本というかけ離れた場所で僕様を知ってるのは力を持つ団体だけだと思うんだよね。そう、Noface側でも無ければ、B.B.B程荒々しくない。アリサ嬢はBARKERSだ。そうだろう?」


アリサ「……お答えできませんわ」


アルベッロ「強情だなぁ、でも絶対思うんだ。アリサはこれまで会った女性よりうんと美しく、優しくて、更に運命を強く感じるってね」


アリサ「そうなのですか、ですが貴女と一緒になることは

アルベッロ「あー!待って待って!早い早い!そうか、そうだね、まずは僕様とファミリーを知ってもらおうかな、それだけでも遅くないと思うんだ!」


 周りの人達はやれやれと肩をすぼめる。


アマンダ「全く……諦めなって、毎回毎回そうやって失敗してんじゃん。このアマンダ姉さんがボスと付き合ってやるって言ってるのにな?」


アルベッロ「いやいやいや、アマンダと付き合ってしまったら僕様は本当に女の子にされてしまうよ」


 笑いが起こるが、アリサはクスリともしない。何とかしてこの状況を打破しようと考えているのだ。周りにバレないよう耳についた通信機のボタンを押すといつもと違う動作がする。


アルベッロ「あ、ごめんね!君が付けてるのは翻訳機なんだ。通信機は居場所がバレる可能性もあるから没収させてもらったよ」


アリサ「本当に私を仲間のもとに返すつもりはないのですね」


アルベッロ「そんな事言わないでくれよ、ここの皆も君達の仲間に負けないくらい楽しいしいいヤツだよ!」



 アルベッロがそう言った後、いくつかある扉のうち一つが強い力で開いた。


 バン!─


 ズラズラと入ってきた他のものたちとは違う雰囲気の者たち。まさにチンピラというのが相応しい彼等の中に肩を借りて痛々しそうに歩くスーツ姿の者が居た。顔は血だらけで適当に巻かれた包帯が更に痛々しさが増している。




アルベッロ「どうしたラウロ!」


 アルベッロは慌てて近づき肩を貸してソファーに横にさせる。



ラウロ「チッ……しくじった、頭かち割れそうだ」


アルベッロ「おいおい、何があった?」


ラウロ「……お?」


 ラウロはアルベッロの手を払い、体を起こす。


ラウロ「こいつぁ良い」


 ラウロはゆっくりとアリサに歩いて向かう。アルベッロはラウロの横に立ちアリサを紹介した。


アルベッロ「ラウロ!この子はね、僕様の新しい彼女さ!」


アリサ「いや!違いますわ!いつ私が彼女に!、っ!」


 ラウロはいやらしくアリサの肩に手をかける。


アルベッロ「!?」


ラウロ「なあ、アルベッロ。この女はあんたの彼女じゃねぇってさ。じゃあ俺らで持ち帰るけど、別に文句ねぇよな?」


アリサ「は、離してください!!」


アルベッロ「ラウロ」


 アルベッロは一瞬で胸元から万年筆を取り出しラウロのかけた手にピッと黒いインクをかける。



アルベッロ「いい趣味してるが、その子は僕様の宝物なんだ」


ラウロ「チッ!!」


 アリサはとっさに離れたラウロの手を見ると、まるで折り紙のように二つ折りになっていた。その二つ折りになった手を開くと何事もなかったように戻る手。


ラウロ「本当、それさえあれば簡単に人を殺せそうだなアルベッロ」


アルベッロ「僕様は人は殺さないよ、人を愛しているからね」


ラウロ「甘ちゃんが」


 ラウロはアルベッロに悪態をついた後、仲間を連れて帰る、その後ろ姿にアルベッロはこう聞いた。


アルベッロ「おい!ラウロ!お前、人殺しはしてないだろうな!」


 ラウロは振り返らずに中指だけを立てて消え去った─


 

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