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第四章 19話 二振りの快刀は乱麻を断つか



逸夏「むぅ……」


ロッド「……」


伊賀崎「……」


 逸夏は後ろ手を拘束されながらあぐらをかき、膨れっ面でいた。ロッドと伊賀崎は逸夏を近くで見下ろし逃げ出さないように見張る。

 ダイヤがあったフロアは完全に閉鎖をしており、中にはこの三人と端でシュウが現状をBARKERS本部に伝えていた。


シュウ「ロッドさん、伊賀崎さん、今ひなびさんに繋がったのでシェアリングします」


 伊賀崎とロッドの通信機にもひなびの声がつながる。



ひなび『あ、えっと、その、大体の状況は把握しました。アリサさんが拉致され、ダイヤも盗まれて拘束した人物は近衛逸夏を名乗る者。でしたよね?』


ロッド「……そうだ。アリサに連絡を送っても反応がない。ダイヤを盗まれたのも痛手だが……この女が関わっているのは更に……な」


伊賀崎「うぅ……目茶苦茶だぁ……どうしましょうか……」


ひなび『えと……まずはアリサさんについてですが、通信機についているGPS機能を確認した所、何故かその機能も停止してます。そして、拘束している近衛逸夏さんですが、何か情報はありましたか?』


シュウ「自分、逸夏さんと面識あるので、今ちょっと聞いてみます!」


伊賀崎「近衛の令嬢と面識が!?」


ひなび『あう、それは、信じて大丈夫ですか?下手したら更にシビアな状況になりますよ?』


シュウ「大丈夫だと思います」


 シュウは逸夏に近付いて話しかける。


シュウ「逸夏さん」


 逸夏はシュウの顔をすぐに見上げ表情は少し悲しげだった。


逸夏「芦屋修二君、君とこうして会いたくはなかったな」


シュウ「逸夏さん、答えてほしいことがあるんですが……」


逸夏「嫌だ……私は何も話したくない」


シュウ「そんなこと言わないで下さい、色々ききたいんです」


 逸夏は涙目になり赤面する。


逸夏「私は!!……私は、腹を切る」


シュウ「は、腹を切るだなんて、そんなに言えない事があるんですか?」


逸夏「恥ずかしいのだ!!」



シュウ「ん?」

伊賀崎「恥ずかしい??」



 逸夏はもう涙が流れそうだ。


逸夏「この近衛逸夏!人生でこんな辱しめを受けたのは初めてだ!!近衛家の恥。先祖に顔向け出来ぬ!!腹を切らせてくれぇ!!」


シュウ「……そ、それは困ります!」


逸夏「わああああ!!恥ずかしい!!見ないでくれぇぇ!!死にたいぃ!!特に君!!君には見られたくなかったよ!!あああああ!!」



ロッド「……」


 ロッドは逸夏の長物を遠くに離した。


逸夏「なあああ!!悪魔か貴様!」


シュウ「あ、あの!落ち着いて聞いてください逸夏さん!俺らは仲間の居場所と何で逸夏さんがここに居るか知りたいんです!」


逸夏「こんな見るも無惨な私の介錯をお願いできるかい」


シュウ「それは嫌です」


逸夏「死ぬことも許されぬのか……」


シュウ「もう一度聞きますが

逸夏「待ってくれ、私から先に聞きたい。芦屋修二君は私の敵かい?」


 その言葉の意味が分からなかった。逸夏の敵とはどういう人なのだろうと。


ひなび『近衛逸夏さんはB.B.B.に所属しています。私達とB.B.B.は敵ではありませんが……』


 ひなびからの通信でシュウは考える。B.B.B.は敵では無いだろう。しかし、仕事上、ブッキングして対立することもあるだろうし、関わってはいけない組織だとも言われていた。



 しかし、シュウは逸夏の言った、[私の]敵という言葉は絶対的に違うと思えた。だからこそシュウは、


シュウ「違います。俺は逸夏さんの事が嫌いになれません。あの時助けてくれた逸夏さんを思ったらきっと俺の敵でも無いし、俺は……逸夏さんの敵にはなれない」


 シュウは自分の思いを逸夏の目線に合わせて伝えた。逸夏は真っ直ぐにシュウの目を見る。逸夏の目は日本刀の様に鋭くも綺麗だった。



逸夏「……拘束をといてくれないか?」


ロッド「……分かった」


 ロッドは判断し、拘束を解いた。後ろ手を解かれた逸夏は不思議そうに手首を撫でる。


逸夏「貴殿等の事は認知している。確か、なんとかかんとかという組織だろう?」


シュウ「BARKERSです」


逸夏「これを喰らってすぐに分かったよ。シュウ君もかな?」


 シュウはうなずく。


逸夏「私にとって、組織間のいざこざなど、どうだって良い。重要なのは私に仇なす者か否か」


 逸夏は立ち上がり、長物へ歩む。


逸夏「敵では無いのならばそれで良し。私も絶対に手を出さない」


 刀を袋から取り出し、腰に差す。


逸夏「全面協力致そう」


シュウ「全面協力!?良いんですか!?」


 ロッドも伊賀崎も驚いた表情をする。


逸夏「いや、協力させて欲しい。拘束されるのは恥だったが、飯も金も頂いた恩人に仇で返すような真似は近衛家だけでなく、日本人として生きる資格は無いもの。恩を返すと約束をしたし……その……なんだ……」


 逸夏は頬を赤らめ髪先をいじる。


逸夏「先程の言葉は少し……嬉しかったというか……その、君は素直過ぎでは無いだろうか」


シュウ「俺……?あっ!すいません!」


 シュウはあまりにも格好つけすぎたと恥ずかしくなる。


逸夏「まあ、構わんよ。して、聞かれた質問を答えようでは無いか。うむ、そうだな、私の、いや、我々が居た理由か」


 逸夏は腕を組み、考える。


逸夏「神秘的なる桃色な鉱石を盗みに来た。と言うのが任務だったから、だな」


伊賀崎「B.B.B.がダイヤを盗みに!?」


シュウ「そ、それじゃあ俺らの仲間のアリサさんは!?」


逸夏「ふむ……それは知らんな。私を含めた三人で来たが、人質を取るような任務は請け負っていない。それに、二人はろくでなしだからな。拉致するよりここで先に殺すだろう」


ロッド「ろくでなしの二人は誰だ?」


逸夏「ああ、霧を作る詐欺師と多感な時期の女児だ。名前は確か……のわん?と子犬だ」


ひなび『ふぇ!?ノワン・エンプティですか!?凶悪犯罪組織エンプティの一人じゃないですか!?』


シュウ「そんな事まで言っても良いんですか!?お仲間なんですよね??」


逸夏「いいや、私は仲間だと思ったことはない。私達の作戦としては、盗賊が来る前に詐欺師が霧を作り、多感な子犬の盗む力でダイヤを盗んだのだろう。因みに私は邪魔な者を斬る役目だった」


 斬るという言葉を聞いてゾッとする一同。


ひなび『と、取りあえず、ダイヤは後回しにしましょう。B.B.B.にダイヤが渡ったのならまだ話し合いで何とかなるかもしれません。今はアリサさんの命を優先していきましょう』


シュウ「B.B.B.がアリサさんを拉致したわけじゃないなら……拉致したのは盗賊か」


伊賀崎「ダイヤを盗めなかった腹いせの可能性がありますね」


逸夏「ふむ、よし、では」


 逸夏は頭に巻いている額当てをキツく結び直す。


逸夏「君達の仲間を助けるまで、私が同行しよう」


 心強い仲間が加わった─!



--------


 フィレンツェ内隠れアジト─



ノワン「あーあー何でアイツが居ねぇんだよォ!」


カーネ「通信、出ないね」


ノワン「もう知らねェ!ダイヤは盗んだし、さっさとずらかるぞ。カーネ、ダイヤを渡せ」


 カーネはノワンにダイヤを投げて渡す。


ノワン「あ?」


 ノワンは手に取り、不思議に思う。こんなにも大きなダイヤなのに軽すぎるのだ。スーツの胸元を探り小さな小さなハンマーを取り出す。


 カツンと叩くと簡単にそれは欠けた。



 ノワンは顔を手で隠して大きく笑う。


ノワン「ハッハッハッ!!やられたなぁこりゃ!!」


 ダイヤを下に叩きつけて椅子に腰かける。



ノワン「偽物を展示してるたァ、本物はどこいったァ?」


 

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