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第四章 16話 運命の交差


シュウ「逸夏さん!?!?」


 逸夏はシュウに長物が入っていた袋をパスする。


逸夏「これを持っててくれ。すぐに片付ける」


スーツ「このアマ!!ただじゃ済まさねぇぞ!」


 逸夏の腰には既に二本の刀が帯刀してあった。一本は脇差しだが普通と違うのはもう一本だ。柄が長く刀身は身長170程ある逸夏と変わらない。その刀に手をかけて抜刀しようとしている。



逸夏「切って捨てよう」


シュウ「ま、待って!!」


 シュウは逸夏の後ろ袖を掴む。


逸夏「な、あ、危ないから離れていてくれるかい?」


シュウ「いや、待って下さい!逸夏さん!殺しちゃ駄目だ!」


逸夏「殺すのは駄目なのか!?」


シュウ「相手は素人ですし、無駄な殺生はいけない!」


逸夏「……ぐぅ」


 逸夏は握った柄に力を込めると諦めたかのように力を抜いた。


逸夏「分かった。シュウ君の頼みならば」


スーツ「ぶっ殺せ!!」

男B「おらぁ!!」


 チンピラは逸夏に殴りかかる。


逸夏「徒手空拳でも負ける気はしないけどな」


 逸夏は地面に座り込む様にチンピラの足元へ潜り込む。チンピラは殴りかかった勢いで躓いたように転び、逸夏は、すかさず頭を力強く踏みつけて無力化した。


逸夏「さあ、次だ」


 逸夏は合気道のような構えをとる。


男C「二人でいくぞ!」

男D「やってやらぁ!」


 一人は逸夏に前蹴りを放ち、逸夏はすんなり真横に避け、そのかかと部分に左手をひっかけ、相手の軸足を足で刈り上げ転けさせる。


 もう一人の男は逸夏の真後ろに忍寄り拘束せんとするが─


男D「んごふ!!!!」


逸夏「……」


 逸夏は後ろ足で思い切り股間を蹴りあげる。悶絶する男に振り向き、ワンツーと顔面に拳を叩き込んだ後、右手の指をお猪口を持った形にして真横に振り切る。


男D「くぶぁ」


 男の鼻はへし曲がり倒れた。


 後ろで転けていた男は起き上がり、廃材である木の角材を持ち殴りかかるも─


男C「うっ!!」


 腰に差した太刀を上に傾け、心臓部に当て込み、すぐに引いて次はみぞおちを鞘の先にある石打金物で突き抜く。男は悶絶してうずくまった。


逸夏「はあ、物を使ってこれか。これでは倍の人数が来ても他愛ないな」


スーツ「くそ!!俺がやる!!」


 スーツの男は近くに居たチンピラから鉄パイプをもぎ取る。


スーツ「顔もぐちゃぐちゃにしてやるよ!」


逸夏「武器を持つということは」


 スーツの男は鉄パイプを大きく振りかぶる。


 その隙に逸夏はぐいっと前を詰めた。


逸夏「やられる覚悟の上でだな?」


 ゴシャッと音が鳴る。この音はスーツの男の顔面から鳴った。男の鼻からは血が吹き出し顔を抑えて尻餅をついた。


スーツ「うぎぁぁぁぁあ!!」


 当てたのは柄頭。前に出た逸夏は高速の抜刀を放ち柄頭を鼻にぶち当てたのだ。


 スーツの男は這いつくばりながらも必死に距離を離す。


逸夏「アッハッハッハッ!!愉快な事をするじゃないか!!まるで虫だなぁ!!アッハッハッ!!」



 逸夏はその様子が笑いのツボに入り腹を抱えて笑い出す。


スーツ「バカにしやがって……もう容赦しねぇ。殺してやる」


 スーツの男は立ち上がり胸もとから銃を取り出す。


シュウ「逸夏さん!!!」


逸夏「クックッ……ふふふふ、アハハハ!!」


 シュウの声がまるで聞こえていないようだ。


スーツ「死ねぇ!!」


 シュウは逸夏に駆け寄ろうとした。しかし、すぐに逸夏は先ほどのように一瞬で冷徹な顔になる。


逸夏「大丈夫」


 シュウの目の前から消える逸夏、いや、消えては居ない。この差した大きな太刀を抜く為に一瞬で姿勢を低くしたのだ。


 銃の発泡音が同時にしていた─


スーツ「な、」



 スーツの男の持つ銃は上を向いていた─


 逸夏の大太刀は男が持つ銃身へ届いていた。


 大きな大きな太刀だ。この太刀を逸夏は一瞬で抜刀した。


逸夏「虫は潰そうね」


 逸夏は回転するように太刀の峰を側頭部に叩き込み石が割れる音がした。


男E「う、うわぁぁぁ!!!」


 最後の一人がその場から逃げ去る。スーツの男は言葉も発することなく、どさりと倒れた。


 逸夏はシュウに振り返り言った。



逸夏「シュウ君、助けてくれてありがとう!」


シュウ「いや……助けられたのは俺なんですが……って言うより、この人達生きてるんですよね!?」


逸夏「ああ勿論!シュウ君の頼みだったからね!」


シュウ「めっちゃ血が出てますが……」


逸夏「信用したまえよ、こう見えて私は何人もの……」


シュウ「何人もの?」


逸夏「あ、いや、何人ものね、人を指導しているからね!この程度では人は死なないよ!人は意外と頑丈でしぶとい!うん!」


シュウ「そう……ですか」


 シュウは焦って話す逸夏に不安が過るも今はその言葉を信用しようと思った。


逸夏「さあ、ここをずらかろう。面倒事に巻き込まれたくないしな」


 警察を呼ばれても仕方ない事だが、不思議と周りに民間人は居なかった。というより、出てこなくなったという方が正しいかもしれない。シュウは刀袋を渡した。


逸夏「ではまた会おうシュウ君。君の仕事が上手くいくように祈ってるよ」


シュウ「はい!ありがとうございます!逸夏さんも成功するように!」


逸夏「ああ!ありがとう!」


 二人はその場を離れた。シュウは逸夏の実力の高さに深く感動していた。あの人数を相手に冷静で相手がどう動いているかも察知している。無傷で制圧し、あの長く重そうな刀も軽々と振る。この人がBARKERSに居ればきっと心強いのだろうなと思った。


シュウ「あ、やばい!時間が!」


 あと少しで時間になってしまう、大急ぎで空港へ向かった。


----------


 ペレトラ空港─


 時刻は14時を過ぎていた。既にアリサ達は集合しており、シュウが来るのを待っている。


伊賀崎「遅いですね……」


ロッド「……そうだな」


アリサ「……」


 三人はいつもの服装とは違い、イタリアで浮かないよう少し華やかな格好をしている。更に、今回の入国の表向きの理由が雑誌の撮影ということになっている。アリサはモデル、伊賀崎はAD、ロッドはカメラマン兼監督、シュウはマネージャーという感じだ。


伊賀崎「アリサ殿、シュウ殿へ連絡は通じました?」


アリサ「いえ、通信も繋がりませんわ。お電話を差し上げても全く……」


ロッド「何かあったか」


伊賀崎「少し周りを探しましょう。アリサ殿はここで、自分と五條殿は別れていく感じで」


ロッド「……分かった」

アリサ「分かりましたわ」



 二人がアリサから離れた数分後の事だった。


?「すいませーん、ちょっと良いかな?」


 アリサは人に話しかけられ、振り向くとそこに居たのは見るからにお洒落な格好をした美女がいた。背丈はアリサと変わらないくらいで髪はクリーム色。自分が女性で無かったらドキッとしただろう容姿だ。



アリサ「は、はい。どうかなさいましたか?」


美女「いやー何か珍しい人がいるなーって思ってね。君はどこかの国の有名人?」


アリサ「何でそう思いますの?」


美女「カメラ持ってる人が居たし、それに君はとても魅力的で美人だからさ」


アリサ「口が上手いですのね、貴女も魅力的で美人ですわよ?」


 その美女は歯を見せるようににこりと笑う。


美女「ミー?僕様は男だよ?」


アリサ「え、男性でしたの!?」


美女「ほら、手を貸して?」


 美女はアリサの手を取り、自分の胸に当てさせる。柔らかい感触も無く、男性だということが分かった。


アリサ「男性だったなんて……肌も綺麗で華奢で……羨ましいですわ」


美女?「君に誉められるなんて嬉しいなぁ、そうだ!どこか一緒にご飯でもどう?知り合いがやってるんだ」


アリサ「随分と軽率にナンパをするんですのね。私は間に合ってますわ」


美女?「ナンパだなんて、君を知りたいんだよ。これは本心さ」


アリサ「表面だけ見て誘うのはどうかと思いますの」


美女?「いや?きっと君は僕様が会ってきた女性の中で一番の女性さ」


アリサ「よして下さいませ。言葉が軽いと女性に嫌われますわよ」


 アリサは手を振りほどき、警戒心を高める。


美女?「んー、困ったなぁ本当に仲良くなりたいんだよーお名前は?写真集とか出たら買うよ絶対」


アリサ「名前を聞くにはまずは自分からでございましょう?」


美女?「あーごめんねー!僕様の名前はねー、



美女?「アルベッロ・ガンビーノって言うんだ」


アリサ「……!」

アルベッロ「……」


 アルベッロ・ガンビーノと名乗ったその女の子のような男性。アリサはその名前を聞いた瞬間に少し身構えてしまった。


アルベッロ「何か……あった?」


アリサ「いえ……」


アルベッロ「ふふ、この名前を名乗ると、この町で貧困でも生きていけるんだよ。まあ、旅行者の君は知っても仕方無い事だと思うけどね」


アリサ「そうだったのですね、初めて知りましたわ」


 すると、少し離れた所から伊賀崎がシュウを連れてくるのが見えた。


アリサ「あ、もう私はここを離れさせていただきますわ。では、ごきげんようアルベッロさま」


 アリサはその場から逃げるように去ろうとする。アルベッロはとっさに手を前に出して制止しようとした。


アルベッロ「あ、待って!せめて名前だけでも聞かせてよ!」


アリサ「キャロライン・イーネでございますわ」


アルベッロ「キャロライン……」


 アリサは離れていき、アルベッロの手は空を掴む。アリサにとっては作り笑いで返したつもりだったが、アルベッロにとってはどうやら心に突き刺さったようだ。


アルベッロ「また会いたいな……もっと君を知りたい」


 ボソリと言うこの言葉はきっと誰にも聞こえないだろう。


 アリサの姿が見えなくなった時、二人の男女がアルベッロに声をかける。


黒人男性「ボス!まぁた女ひっかけてんのか!」


女性「懲りないねーあんたまたこれが僕の初恋!なんか言うんじゃないの?」


アルベッロ「アマンダ、ブライアン。君らも知っているだろう?L'importante e`non arrendersi mai.大事なのは


アマンダ「決して諦めないことでしょ?」

ブライアン「決して諦めないことだろ?」


アルベッロ「ふふ、そうさ。僕様はね、やっと最愛な子を見つけたんだ!きっとあの子も同じ普通じゃない!だって沢山隠し事があるみたいだし、アルベッロ・ガンビーノを知っていたんだ!」


 アルベッロはご機嫌に鼻歌を歌う。


アルベッロ「盗みたいなぁあの子……どの宝よりも心が踊るよ……」



 アリサ達は露知らず、本物のターゲットはすぐそこに─





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