第四章 12話 キラキラ女子の誘惑
任務前日の朝、シュウはワグと恩田のいつもの三人で軽いトレーニングをこなしていた。
ガチャン!
シュウ「イッッッ!!」
シュウがトレーニング器具の重りを変えようとした時、誤って薬指を重りの間に挟んでしまった。
ワグ「おいおい!大丈夫かよ!?」
恩田「ぶ!!すぐ医務室に!!」
シュウの薬指の先はパックリ割れ血が溢れていた。二人に連れられ医務室へ向かう。
急いで中に入ると、そこには……
シェミカ「はーい☆いらっしゃいー☆」
白衣をまとったキラキラ女子が居た。
ワグ「シェミカ!シュウの指がぱっくりいっちまって治してやりたいんだ、チノ隊長居るか?」
シェミカ「ぱっくりー?シェミに見して見してー」
シェミカは押さえていた布を取りシュウの指をまじまじと見る。
シェミカ「んー」
その後、シュウの顔を覗きいたずら気にニヤリと笑う。
シェミカ「ねぇねぇ、痛い?」
シュウ「そりゃ痛いですよ!」
ワグ「おいおい!こっちは怪我してんだから痛いのは当たり前だ
シェミカ「うるさいワグ」
ワグ「いやいやいや、遊びに来た訳じゃねぇんだぞ」
シェミカはシュウの指から滴る血を指で撫で、舌で舐める。
シュウ「うえっ!?」
ワグ「げっ!」
恩田「ほふ!?」
シェミカ「この程度ならシェミがてきにーん☆」
座っている回転椅子を半回転させステンレス製のボックスを開けてピンセットで探る。
シェミカ「君の名前はー?」
シュウ「え、名前?名前は芦屋修二ですが……」
シェミカ「なるほどねーだからシュウなんだー」
シュウ「???」
シェミカ「おけー☆良いの見つけたよー指貸してー」
シュウ「え、あ、はい……?」
シェミカはシュウの指にひたりと冷たい薄い膜の何かを貼る。その上からなんと指で押さえ付けた。
シュウ「いたッ!!!」
シェミカ「へへへ☆痛い?」
薄い膜の上からと言えども傷口を押さえられると流石に痛い。
シュウ「痛い痛い!!や、やめてくださいよ!」
シェミカ「やめないよー☆ほらほらほらー☆」
クリクリと指で挟まれこねられる。シュウは堪らず悲痛の言葉をあげ涙目になる。
ワグ「おい!シェミカ!」
シェミカ「黙れよワグ。萎えるじゃん」
ワグ「萎えるとかじゃなく適切な処置を」
シェミカ「適切じゃん、見てみなよ」
ワグ「は?」
シュウ「え?」
シェミカは指を離し、シュウは自分の指を見るといつの間にか血は止まり傷口も無く綺麗な指の状態をしていた。
シュウ「痛く……ない」
シェミカ「ムッフー☆凄かろう?凄かろう?シェミを褒め称えよ☆」
シュウ「これも……能力?」
すると、シェミの通信機に通信がかかる。
シェミカ「はーいシェミカだよー、うんうん。はーい早く連れてきてー」
何やら怪我人が出た様子だ。
シェミカ「シェミの腕前を見せてあげようー☆ついてきて」
三人はシェミカに連れられ、集中治療室へ向かう。数分後、誰かのうめき声とストレッチャーのタイヤ音、恐らくMFの隊員と思われる方々の声が近付く。
両開きの扉が開くとストレッチャーに横たわる人の片肘から先は無く血にまみれていた。
シュウ「だ、大丈夫ですか!?」
ワグ「血塗れじゃねぇか!」
恩田「ぶ、ぶぅ」ドサッ
恩田は悲惨な状況に力を失い椅子にどかりと座ってしまった。
シェミカ「うわわわ、こりゃ凄いねー」
MF隊員「シェミカさん!至急治療をお願いします!」
シェミカ「残りの腕はー?」
MF隊員「こちらです!」
ビニール袋に氷詰めされた片腕。それを手に取りシェミカは下から見上げるように持ち上げる。
シェミカ「切り口綺麗だねー綺麗に切ってもらえて良かった良かった☆」
MF隊員「な、なんとかなりますか?」
シェミカ「シェミにお任せあれー☆」
シェミカはシュウ達にウインクして片腕を顔に寄せる。
シェミカ「見せてあげる☆まさにシェミの腕前ってやつを、ね☆」
シェミカは切れた腕を切り口にくっつける。
それは一瞬の出来事だった。その腕はいつの間にか繋がり、切り口なんて全く感じさせないくらいに完璧な治療。シュウ達は言葉を失っていると腕が戻ったBfの隊員は目を丸くし、手のひらを開閉して感覚を確める。
シェミカ「どお?」
Bf隊員「……痛くない。俺は完璧に腕を切られたはず……これがシェミカ隊員の噂の施術か」
シェミカ「そお!シェミの【付ける】能力だよ☆物さえあればしっかり付いて馴染む、でしょ?」
その後、Bfの隊員はシェミカにお礼を何度も言い、点滴を打って安静にすることになった。
ワグ「すげぇ……この力さえあれば怪我なんて怖くないな」
シェミカ「ワグは治療しないよ」
ワグ「なんでだよ!」
シュウ「思ったんですが……何で一瞬でくっついたのに俺の時はあんなに傷口をえぐるような真似を?」
シェミカ「それはねー」
シェミカはシュウの胸に人差し指を立て下になぞる。
シェミカ「一目惚れ?」
シュウ「ひとめ!?」
ワグ「惚れだと!?」
シェミカ「ふふふーん嘘だよー君の目は綺麗で真っ直ぐ。チェリーっぽかったからいじめたかったんだー☆」
シュウ「や、やめて下さいよ、おちょくるのは」
シュウの顔が赤くなる。
シェミカ「シェミのことぉ、好きになっちゃった?」
上目遣いでそうおちょくるシェミカに冷や汗をかかされるシュウであった。