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歌ノ章 閑話3 有名歌姫は前途多難!


 RINAのサポートには手を焼いた。一日目はロケ車での移動。さいたまスーパーアリーナへ向かった。バス内では恩田がRINAの標的となっていた。


RINA「でぶちーん!えいえいえーい!」


恩田「んぶぁぁぁぁぁぁああ」


 恩田の後ろ席でRINAが頬を両へ引っ張っている。これでもかと。


RINA「でぶちんのほっぺよくのびるねー!」


恩田「んぶべべべ」


シュウ「お、恩田さん……」


 ワグはシュウを制止する。


ワグ「良い。止めてやるなシュウ。アイツは今幸せなんだ」


恩田「んぶぇぇぇぇえげへへへ」


 恩田はいつにもまして笑顔であった。




---


 役員駐車場はほぼ全て埋まっており、RINAの為に特別に用意している場所に停車する。一行が外に出ると、すぐにマネージャーがはや歩きで寄ってくる。


園崎「……RINA、この状況は?」


RINA「ん?」


恩田「うびぃ……」



 RINAは執拗に恩田の頬を後ろから引っ張っている。


園崎「離れろRINA。君はもっとアイドルの自覚を持て」


RINA「むぅー……そのざきぃ……」


 RINAは口を一杯に膨らませ不服をアピールする。

 その様子を見てシュウとワグは耳打ちをして話す。


シュウ「なんか……RINAさんとマネージャーさん相性悪そうですね」


ワグ「なんとなく嫌な雰囲気出てるよな」


園崎「おい」

シュウ「はいっ!」


 シュウは聞かれたと思い咄嗟に返事をする。


園崎「全員じゃないな。あの時居た女はどうしたんだ?」


シュウ「あ、えーと、今は事務所近くに停めている車に居ますよ!あの車に通信機材を用意してるので」


 園崎は不快そうに眼を細める。


園崎「ふーん。そうですか」


シュウ(んー、気分悪いなぁ)


----------


 RINAの身辺警護一日目。この日はRINAに気に入られた恩田がRINAに付き添う。シュウとワグはライブ会場のチェックの後、眼をつけている岸田が写る握手会の時の動画を見る。


 さいたまスーパーアリーナはライブの為の最終チェックが行われておりドタドタとスタッフが働いていた。今回のライブの集客数は22497人。満員が22500人。ほぼほぼ満員とRINAの人気具合が分かる。このライブが終わった後、特設会場にて抽選で選ばれた2000人が握手会へ向かう。ライブ後に大規模の握手会をするなんて相当な労力だろう。

 

 二人は会場を周り終えて警備室にて監視カメラを確認する。


ワグ「うーん、去年のさいたまスーパーアリーナの映像全部見るのかったりぃなぁ……」


シュウ「まあ、そう言わずに、RINAさんの為ですよ」


ワグ「そうだな、RINAを助ける為だ」


 二人はじっと映像を見る。


シュウ「あ、最前列!居ますよ!」


 最前列でサイリウムを必死に振る岸田の姿。

 


ワグ「ぱっと見は熱心なファン……だけどな」


 映像を早送りし握手会のシーンを見る。


ワグ「お、来たぞ」


 握手が岸田の順番になった。


RINA『やほー!今日も来てくれてありがとうね!』


 RINAは明るい笑顔で手を差し出す。岸田はぐっと唇をつぐみ、しっかりとRINAに目線を合わせる。


岸田『り、RINAちゃん!』


RINA『ん!?RINAだよ!』


 岸田は両手でガッチリとRINAの手を握る。


岸田『RINAちゃんを助けたい!このままでは危ないんだ!』


RINA『????』


園崎『おい!離れろ!!』


 端から園崎と警備員が割って入り、岸田をすぐに引き離す。岸田は外へ引き摺られる中、何度も言う。


岸田『RINAちゃん!俺が、俺がなんとしても!』



 そして外へ連れ出される岸田。重要なシーンはここまでのようだ。



シュウ「……」


ワグ「……」


 二人は腕を組んで考える。この不可解な行動に。


ワグ「ちょっと病んじまってる感じか?」


シュウ「んー……でも、俺は何か違う気が……」


 ワグは時刻を確認する。


ワグ「まだライブの時間じゃないな。RINAに被害の詳細を聞こう」


 二人はRINAの控え室へと向かう。



---------


 控え室前─


 控え室の扉前に立つと何やら口論が聞こえる。二人は危険を感じ、すぐに中に入る。


 バン!

シュウ「大丈夫ですか!?」

ワグ「恩田!RINA!」


 そこには園崎が恩田とRINAに怒鳴っている姿があった。


園崎「RINA!RINA!!言っただろう!?トップアイドルとして、世界を取るものとして君はもっと自覚を持てと!!」


RINA「別に良いじゃんー誰か見てる訳じゃないんだし」


恩田「お、おでは……大丈夫だけど……」


 恩田の顔はRINAによって落書きだらけになっていたが、本人は悪い思いはしてなさそうだが……?


園崎「俺は知ってるんだ君の価値を!辞めていった他のマネージャーとは違うんだ。何度も言うしどんな手を使っても分かってもらうぞ!」


RINA「何それ……価値価値価値価値、私は物?私は一人の─

 パシン!!!



 場は一瞬凍る。恩田が園崎を押して間に割って入りワグとシュウは園崎を取り押さえようと手と肩をお互いに抑えた。


 RINAは頬を抑えて園崎に怒りの眼を向ける。


ワグ「お前!手を出すことは無いんじゃねぇか!?」


シュウ「マネージャーでしょあなた!」


園崎「離せ!!!」


 園崎は二人の拘束を振りほどく。


園崎「反対だ……反対だ、どれもこれも。握手会も、護衛も、RINAのやり方も。だから変な虫が付くんだよ」


 園崎は今にもキレ出しそうに頭に血管を浮かべ、頬をひくつかせその場を後にした。


シュウ「なんなんだあいつ……」


ワグ「ライブ前だっていうのにな」



RINA「……本当……キライ、大嫌い」ボソッ



 前途多難な護衛任務一日目。上手くいくか心配だ。

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