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第四章 6話 賑やか面子と酒の味


 二日後の夕時─


 シュウはワグと共に食堂へ向かっていた。二人とも部署の仕事終わりに晩御飯を頂きに来たのである。


 その食堂はいつもより大分賑やかになっていた。どうやらBfの方々が一仕事終えて戻ってきたらしい。


シュウ「みんな泥だらけですね!」


ワグ「何か道路作ったり補修したりしてるみたいだからなぁ」


シュウ「そう言えばなんでBfは土方仕事を??」


 Bfの受け持つ事業は基本的には土方仕事。道路関係は勿論、水道管や林業もやったりする。確かに能力を使って働けば効率は良いけれど……



ワグ「巌鉄の親父さんとBARKERS最年長の堀のおっちゃんが元々土方出身だったからじゃなかったかな?」

 

シュウ「堀さん??」


ワグ「ほら、あそこに」



 ねじり鉢巻を付けた小柄なおじいさん。芋焼酎の一升瓶を抱え巌鉄と談笑している。



シュウ「あの人も能力を持ってるんですかね?」


ワグ「そうだな、堀のおっちゃんはどの乗り物に乗っても扱える[操る]能力だ。作業の重機も勿論、飛行機やらハイテクなものも動かせるスーパーおじいちゃんだぜ」


シュウ「へー……」


 シュウはある熱い目線に気付いてしまう。


シュウ「あの人は……」



 ガタンと大きい音を立てて立ち上がる一人の若者。ズンズンとこちらに向かってくる……日に焼けた肌に逆立つ黒髪。にかにかと笑う口に発達した八重歯。アロハシャツが似合う男は確実にシュウをロックオンしている。


アロハシャツ「おい!!!」


シュウ「は、はい!!」


 目の前まで来て突き刺さるような大声。


アロハシャツ「お前!!初めて見る顔だな!!」


シュウ「そ、そうですね、は、初めまして!芦屋修二です!」


 シュウは気圧され緊張しながらも自己紹介する。


アロハシャツ「おおお!!お前があの芦屋か!!話は聞いてるぜ!!気合い、入ってるなぁ!!」


シュウ「は、入ってます、かね??」


アロハシャツ「ああ、入ってる!!新人のくせに大事に巻き込まれながらも生きて戻ってきた!!俺は!お前を!称賛したい!!よくやった!!」


シュウ「あ、えと、ありがとうございます」


アロハシャツ「よし!来い!!」


シュウ「え、ええ!?」


 アロハシャツの男はシュウの肩を組み、無理矢理Bfメンバーが集まる所につれていく。


ワグ「あーあ、こりゃ長くなるなぁ」



 席に座らせるや否や泡盛をジョッキに注ぐ。


アロハシャツ「飲め!!」


シュウ「い、いや、俺は未成年だし」


剣崎「おいおい、ここはもう無法地帯だぜ?未成年とか関係ねぇわなぁ!ここに座れば全員飲むんだよ!」


シュウ「え、え!!」


 そこに居合わせた剣崎も隣に座り悪乗りする。そう。ここに居る人は全員、質の悪い体育会系の人間。止める人は誰も居ないのだ……!


小張「こら、あんたら今の時代それをアルハラって言うんだよ、やめなさい」


 後ろから二人の頭をぺしりと叩く救世主。良かった。まだ良心が残っていた。


アロハシャツ「気合い入ってねぇなぁー」


 アロハシャツはグッと半分以上飲み干す。小張はシュウの目の前に座り自分が持ってきたオレンジジュースをシュウに渡す。


小張「まあ飲みなよ」


シュウ「これ、小張さんのやつじゃ、」


小張「いいっていいって!また持ってくれば良い話だし、剛は何か話したそうだしね」


シュウ「剛さん??」


アロハシャツ「あ!!いけねぇ!!俺の自己紹介がまだだったな!!」


 自分の胸を二回ドンドンとドラミングして立ち上がる。



アロハシャツ「俺の名前は菱村剛!今年で二十四か二十五かになる!好きなものは気合いと根性!嫌いなものは諦める事だ!よろしくな!」


 握手を求める菱村。シュウは応じるが強い握手に少し怯む。


シュウ「うっ、いてて、菱村さん……?あ、確か、ドロミーティでの戦闘に参加した??」


 その言葉にばつが悪そうな顔をする菱村。


菱村「あー……そうだ。そうだそうだ。その菱村だ。あの戦闘では足を引っ張っちまったけどな。でも、次はしっかりやるぜ、俺はよ」


 ドカりと座り、腕を組む。


菱村「神代……やつは強かった。化物染みていた。俺の能力も隊長の能力も無に返す。俺が上手くやっていればジジイも死ななかったかもしれねぇ。次は無い。やられるにしても爪痕をきっっっちり残してやるぜ」


 菱村からは強い殺気が溢れていた。


シュウ「神代……」

剣崎「……」


菱村「そうそう、俺はこんな話をしたいわけじゃない、俺はよ芦屋。お前をすげぇ買ってるんだぜ??」


シュウ「俺をですか??」


菱村「そう!!話は聞いてる。お前は気合いが入ってるやつだ!何せ、Nofaceとやりあって生きて帰ってきてる!サーカスも、ヴァリネシアも!なあ?」


 菱村はにかにかしながら剣崎と小張に顔を合わせる。二人は深く頷き、話す。


剣崎「こいつは度胸座ってるぜ」


小張「シュウのお陰でなんとかなった所は多いからね」


 まさかのこの二人に誉められ顔を真っ赤にして照れるシュウ。


シュウ「ありがとう、ございます」


菱村「俺は気合い入ってるやつが大好きだ!特にヴァリネシアの王子と王を助け出した話は最高に良い!!うちにも欲しいくらいだぜ!なあ!巌鉄のおっさん!!」


 シュウはびくりとする。巌鉄の足手まといという言葉が頭にあるからだ。

 巌鉄はギロリとこちらを見る。


巌鉄「なんだぁ?」


菱村「ほら、こいこい」

シュウ「あ、え、え!」


 菱村は強引にシュウの腕を引っ張り連れていく。巌鉄の目の前までいくと、菱村はシュウの背中を強く叩く。


菱村「なあ!おっさん!!こいつ中々気合い入ってる新人だぜ!!知ってるか??」


 巌鉄は腕を組みこちらを向く。


巌鉄「ふぅむ」


 シュウの姿を上から下へ視線をおくる。


シュウ「あ、えと、その、あの、」


巌鉄「知ってるもなにも。ここに入るやつは最初にワシらが見てるじゃろ」


菱村「お、じゃあ覚えたか!どうよ!気合い入ってるよなぁ!」


巌鉄「……」


シュウ「……」ビクビク


巌鉄「まあ、」


 巌鉄はぐいっと生ビールのジョッキを飲み干す。


巌鉄「やっとボロカスから半人前になったんじゃあないか」


シュウ「!!」


 巌鉄はニッと笑ってみせる。


巌鉄「まあ、これから死なねぇよう気を付けるんだなぁ!!」


 シュウのお腹を大きな拳で小突く。予想以上の強さにシュウはうっとなり、お腹を擦るも何か気持ちが軽くなる気がした。


シュウ「ありがとうございますっ!」


 その光景にニヤニヤとしながら大きな音で数回手を叩く堀。


堀「へっへっへ、お前さんよお、話を聞くとこのジジイにボロクソ言われたらしいじゃあねぇか」


巌鉄「ふん、その通りに言ってやったんじゃよ!」


堀「なあ、小僧。このジジイはなあ、昔から口が悪くて素直じゃあねぇ。でも根は優しいやつなんだ。許してやってくれや」


シュウ「いえいえ!別に悪い人だとは思っては無いですよ!」


堀「この性格上すぅぐ敵を作っちまう。でも仲間思いは筋金入りなんでい。このジジイから素直な言葉を引き出せたってこたぁおめぇも成長したってぇわけだぁな!」


巌鉄「おい!クソジジイ!うるせぇぞ!!」


堀「へいへい」


巌鉄「まあ、飲め飲め!!飲んでベロベロに酔っぱらってしまえ!!」


 巌鉄は大きなジョッキに入ってるビールを強引に渡してきた。


シュウ「え!だから俺は未成年って、」


巌鉄「ワシの酒が飲めねぇのか!!黙って飲め!!オラ!!」


 シュウが手にしたビールを強引に飲ませる。ゴクリと大きく飲んでしまい、もうやけだと思ったシュウは数時間後にはその場に溶け込むようにベロベロになっていった。



 初めて口にしたお酒はとても苦く、好きになれたものではなかったけど─


巌鉄「ガハハハハハハハハ!!!」

シュウ「アハハハハハハ!!」



 お酒の良さを知り、こういうのも悪くないなと思った─

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