第四章 3話 氷の女
フランク「っと言うことで指命任務ご苦労様でした」
伊賀崎「ご苦労様です」
シュウ「あ、どうも」
労われるシュウ。そして、これまでにあったことを報告した。まずは能力のレベルが上がり、自分の力で上昇することが出来るようになった事を話した。
フランク「おー!凄いですな!私としてもシュウ君の成長はとてもうれしいものです」
シュウ「ありがとうございます!いやぁ必死でしたね」
フランク「ここぞというときに人は成長するものです。しかし、よくそんな危険な任務から無事帰ってきましたね。鼻が高いです。ふんす」
シュウ「それもこれもフランクさんのお陰です!あ、それと、伊賀崎さんを見て思い出したのですが、同じような忍者の方々が出てきたと」
フランク「忍者……」
伊賀崎「!?」
フランクの顔は険しく、伊賀崎は目を見開いていた。
シュウ「心当たりがあるんですか?」
フランクは自分の口髭を撫で、うーむと考える。
フランク「今はまだ、深くは話せません」
シュウ「敵……なんですよね。出来ればさらっとでも教えてほしいです」
フランク「ふむ」
少し考える素振りをする。
フランク「分かりました。さらっとですが、彼らは忍び組と呼ばれる団体です。十年前……私達と同じくらい大きな能力者の団体が居ました。その団体は多数の派閥が手を組んでおり、その中に忍び組が居たのです。仲間だと思っていたその団体は急に牙をむき残酷な争いが巻き起こりました」
シュウ「十年前……深くは聞いたことありませんでしたが、なんとなくですが聞いたことがあります」
フランク「その時に忍び組の頭領である者を殺し、解体したはずだったのですがね。まさか次はNofaceと手を組むとは……まるで節操がない。彼らは産まれながらに戦い方を訓練する。やりあう事になってもまともに戦ってはなりませんよ」
シュウ「俺も少しは戦える力が付いてきたと思うんですが……」
伊賀崎「確実に勝機があるなら構わないですが、やつらの能力を考えるとそれは考えられない」
シュウ「うーん……」
シュウは不服そうに返事をする。フランクは優しく笑い、シュウをフォローした。
フランク「シュウ君は着々と力を付けてます。それは私もしっかり分かってますよ?ですが、無くさなくていい命では無いのです。怪我もしないで逃げれるなら絶対に逃げたほうがいい」
シュウ「分かりました」
フランク「うんうん!よいお返事です。そうそう、能力の修行についてですが、明日の朝にでもやりましょうか」
シュウ「!!お願いしたいです!!」
フランク「成長したシュウ君の能力を見てみたいですしねぇ」
そうこう話をしているうちに、フランクの通信機からアラームが鳴る。
フランク「おっと、もうこんな時間ですか」
シュウ「あ、お仕事ですか?」
フランク「んー、お客さんのお出迎えですかね。一度見ておいたほうが良い方々かもしれません。応接室に行くのをオススメしますよ」
シュウ「分かりました!では失礼します!」
シュウはその場を後にする。
フランクと伊賀崎は二人になり、フランクは疲れたように椅子の背にもたれかかる。
フランク「伊賀崎」
伊賀崎「……忍び組ですね」
フランク「また奴等と対当せねばならないとは」
伊賀崎「……これはもう切っても切れない因縁なのかもしれないですね」
フランク「あなたはもう、思うところはありませんか?」
そう言われた伊賀崎は腰に付けた忍者刀を抜いて眺める。
伊賀崎「もし、出会したのならば……その時は、今度こそ」
フランクは伊賀崎を見て眼を瞑った後ゆっくり腰を上げる。
フランク「重りのような因縁。気持ちはまあ、分かりますがね」
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あれから数十分後、シュウは応接室近くに辿り着いていた。そこには噂を嗅ぎ付けて何十人も人が集まっていた。その間にも、フランクと巌鉄が応接室内に入っており、何やら重大な事なのだろうと空気がざわついていた。
ワグ「お、シュウ!もう来てたのか!」
ワグがシュウを見つけて近づいていく。
シュウ「あ、ワグさんも来たんですね。今回は一体誰が来るんでしょうか」
ワグ「さあな。でもフランクと巌鉄の親父が来るって事はやべぇ奴なのかも。ウィッセンが来たときもこんな感じだったしな」
シュウ「敵……ですかね」
ワグ「んー、わかんねぇ」
更に場はざわついた。どうやらその来客が来たようだ。
マジカヨ ナニシニキタンダ?
ナニカマタシデカシタノカ?
コエェセンソウハジマルノカ?
イアツカンヤベェ
などと周りが口を出す中─
?「クソ溜まりが、カスどもが声をあげるな。ただでさえ悪い空気が腐るだろう」
まるで人をゴミに思いポイ捨てするような、切り捨てるような、嫌悪感丸出しの声が聞こえ、周りはしんと静まり返る。
ワグ「まじか……」
ウゲェとか反射的に言い出すワグが声をカスカスになるくらいの人物。何とかシュウはその人物の存在を見ることが出来た。
?「フン」
その女は見るからに高圧的だが、美人であった。眉間に皺を寄せて目付きが非常に悪いのが印象的であったが、その両脇を固めていた二人にシュウは目がいった。
シュウ「あ、あれは」
両目を包帯で巻き、白杖をつきながら歩く皮肉家で赤紫の髪の女。背が高くまるでハリウッド俳優のようにイケメンだが高圧的で強気な男。見覚えがある。
シュウ「ハオ・ランファとスコット・カーター……」
ワグ「それだけじゃないぜ……」
ワグがシュウの耳元で小声で話す。
ワグ「真ん中にいるやつは、B.B.B.の創設者。雅零司令官だ。滅多な事じゃ出てこないんだけど、なにか有ったんだな」
シュウはゴクリと生唾を飲む。この六人で一体どんな会議が行われるのかと。
オペレーターの海井が応接室の扉を開ける。
海井「お待ちしておりました。どうぞ中へ」
雅「まだ見知ったやつはいるようだな」
海井は深く頭を下げる。雅は無視するように中へ入っていった。
三人が入った瞬間、場の空気は溶けて全員がほっと一息つく。
ワグ「こえぇ……」
シュウ「威圧感ヤバかったですね……」
ワグ「何か起こらなきゃいいけどな……」
シュウ「そうですね……」
ワグ「でも、俺たちは何もできないからな。腹へったし食堂に行こうぜ」
シュウは心配そうに扉をみつめた後、ワグに促される形でその場をあとにした。