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0101章 R話 二つの年明け ☆


─ある日の正月



 ブー!ブー!ブー!ブー!


シュウ「ん……なんだよぉ…………やばっ!!」



 時計は十二を指している中、スマホのバイブ音で起きるシュウ。まだ寝ぼけている頭を頑張って起こして通話に出た。


美香『早くー!寝坊してんなー?シュウー!』


友樹『おいおい、発案者のお前が寝てるってどういうことだよ』



 スマホの向こうには愛する幼馴染みの大親友の声。シュウはやってしまった!っと額に手をやり謝る。



シュウ「ごめん!!寝てた!!」



 二人の笑い声が聞こえ、同時に返ってくる。



美香『知ってた!』

友樹『知ってた』



 シュウは息が合った二人がおかしくもあり流石長年の仲だと誇らしくもありでつられて笑った。


シュウ「ハハハ!ごめんよ、すぐに出るよ!一二三神社だよね!先に行っててよ!」



美香『いや、も』

友樹『ああ、分かった先に行ってるな』


 プツ─



 何か美香が言っていた気がしたが、早めに準備して出掛けなければとドタバタと始めた。

 


 着替えて下に降りて外に出ようとするとリビングからシュウを止める声が聞こえた。



志乃「こら!シュウ!ちょっと待ちなさい!」


シュウ「母さん!すぐに出ないといけないんだよ!」



 母親の志乃がリビングから出てきてマフラーを持ってきた。



志乃「外は寒いからこれを着けていきなさい。それと甘酒作ったから三つ持ってってトモくんと美香ちゃんにあげて」


シュウ「いやいや!間に合わないし向かってる間に冷めちゃうよ!」


志乃「莉沙ー!甘酒お願いー!」


 志乃はシュウの首にマフラーを巻く。


莉沙「はーい!」



 妹の莉沙はお盆に三つの甘酒が入った紙コップを持ってくる。



シュウ「莉沙ぁー、俺が神社までお盆もって走っていくなんてなんの罰ゲームだよぉ、はずかしいだろぉ」



莉沙「良いじゃん良いじゃん!笑顔から始まる年始って素敵だよー?」


シュウ「もー!母さんも莉沙も俺をいじめて楽しんでるんだ!」



 志乃と莉沙はニコニコと笑う。



志乃「はい、出来た!気をつけて行ってきなさい?お盆は玄関前の邪魔にならないところに置いといてね」



シュウ「はぁー……分かったよ。せっかく作ってもらったし……この恨みは来年まで持ち越すからな!」



志乃「はいはい、行ってらっしゃい」

莉沙「あははは!行ってらっしゃいお兄!」



シュウ「はぁ……」



 シュウは志乃に開けるのを手伝ってもらって玄関を出る。





美香「明けましておめでとう!」

友樹「明けましておめでとう」


 外には先程まで通話をして神社に向かっているはずの二人が居た。



シュウ「あれ!?あれ!?二人ともいったんじゃないの??」



友樹「ばーか、お前置いて先に行くかよ」


美香「三人で、一緒に合格する。でしょ?それを願いに行くんだから当たり前じゃん!」


シュウ「うう……二人とも……」



 シュウは目に涙を浮かべる。



美香「あ!それお母さんが作った甘酒でしょ!頂き!」


 美香はお盆の甘酒を取る。


友樹「俺も頂くぜ、外は寒いからな」

 

 友樹もお盆を取り口にする。


シュウ「よし!じゃあ飲みながらいこう!」



 シュウは空のお盆を置いて三人仲良く一二三神社へ向かっていくのだった─


 

 

志乃「フフフ、本当に仲が良いわね」


莉沙「おかーさーん!お蕎麦食べよー!」


志乃「はいはい、今いくわー!」


 志乃は玄関を開けてお盆を回収したのだった。



──────────────



 一方その頃─



 「「Happy!!!New year!!!」」



 パンパンパンパン!!!



 年が明けた瞬間に食堂で宴を開くBARKERSの面々。待ってましたとばかりにクラッカーを鳴らすもの、シャンパンを開けるもの、手笛を鳴らすものでどんちゃん騒ぎだ。



ワグ「Happynewyear!!あけおめだなぁ!!今年もよろしくな!!」



幾「パフパフパフパフー!!あけおめー!ことよろー!良い年にしようなー!」


 幾は手を筒状に握り吹くとラッパの音を奏でた。


アリサ「ドンドンパフパフー!ですわ!皆様と年越しするこの瞬間は毎回気分が高揚しますわねぇ!」ズルズル


恩田「んぶ!この瞬間に食べる年越しそばは旨いんだよなぁ!」ズルズル



 二人は美味しそうにかもそばをすする。


ワグ「本当お前達は花より団子って感じがするよな」


走川「ワグ!!今日も年明け腕相撲大会が始まったぞ!急げ!」


ワグ「やべ!乗り遅れた!行くぜ!」



 BARKERSでは四年前くらいから年明け一発目に[力を試せ!大腕相撲大会!]が開催される。因みに今のところ焔と焔が居ない年に気紛れで参戦したフライトしか優勝していない。



ワグ「へへ、今回は姉さん対策に秘策を隠してる」


走川「お、それは楽しみだな!今回は剣崎も来てるし前回準優勝の菱村も、何て言っても焔も参戦する。さてどうなるか」




-------


 トーナメント式で行われたこの大会は激戦を迎えた。焔は菱村、剣崎、彰を破った。ワグも何とか奮闘し、相手は走川だった。そして、周りの観衆のボルテージはとてつもなく上がっていた。


 ワー!ワー!ワー!


幾「ピィーー!!やれやれーワグー!」


 幾は人差し指を吹き、高い笛の音を出して応援する。


アリサ「やったれー!ですわ!」



走川「対焔の秘密兵器を使わずにここで敗者になるかな?ワグよ」


ワグ「おうおう、走川!俺だってこれまで沢山修行してきたんだ!やるぜ!俺は!」



 レフェリーの奏が両者の準備が万全になった事を確認して仕切る。



奏「心の準備は大丈夫ですか?じゃあ、お互いに手を!」



 ガシッ



走川「仮にも体育の指導を任されたもの。意地がある」


ワグ「走川には悪いが……恥、かいてもらうぜ?」



奏「では……始め!!!」



走川「うおおおおおおおおおお!!!」

ワグ「どりゃああああああああ!!!」



 二人の戦いは拮抗した。走川自身、内心ワグなんぞと思っていた為、力を出すタイミングが遅れていた為もあってだ。

 


 ワグは今ここで秘策を使うわけには行かないと頭をフル活動させる……何か、何かないか!?



 そして……ワグは一撃を放った─




ワグ「ぐおおおおおりゃぁぁぁ!!!あ、言い忘れてたけどチャック全開だぞ」

走川「え」



 ドンッ─



奏「勝者!ワグさん!」


走川「きさまぁぁぁぁ!!!!!開いてないではないか!!!図ったな!!!!」



 ワグはふぅっと一息入れて近くに置いてあったビンのコーラをぐいっと飲む。


ワグ「ぷはぁぁー……走川。勝負なんてな、勝手なんぼなんだぜ」ニヤリ



 因みにこの一言でブーイングが起こり強烈な反感を浴びた。



-----



 ヒールとなったワグは様々な汚い戦法で決勝まで登り詰めた。やはり、決勝で待ち構えているのはあの人であった。



焔「ワグが決勝の相手ぇ??ハッ!秒もかからねぇっての」



 ワーーーー!!!ホムラァー!!

   ネェサーーーン!!!



幾「焔ーやっちまえそんなやつー」


アリサ「制裁を加えてやってほしいですわね」



 まさに善と悪。最初は仲間だった幾とアリサでさえ焔の勝ちを願う。


ワグ「へ、へへへ、これが逆境か……はねのけてやるぜ!」


幾「いや、お前の自業自得だろー」



奏「それでは二人ともセットお願いします!」



 ワグと焔は互いにガシリと握手した後に机に肘を置く。



焔「アタシに小細工は効かねぇぞ」


ワグ「小細工なんかつかわねぇって、真っ向勝負だ」



 ワグは真っ向勝負を仕掛けるつもりである。


奏「では、始め!!!」



焔「オラァァァ─」


 勝負は一瞬だった─



 ダンッ─!


焔「ッ!?!?」



 周りは何が起こったか分からず、しん─と静まり返る。



奏「えっと……勝者は、ワグさん!」


ワグ「しゃあっ!!!!」



 ワグは自分の持てる全ての力で真っ向勝負を挑んだ。そう、全ての力で。



焔「てめえ、やったな」


ワグ「へへ、何のことかな?」



 ワグは能力を使ったのだ。自らの[回る]能力を。人が力み、力の伝達が送られるその一瞬の緩みを狙い、肩を半回転させたのだ。周りにバレないように。


 周りの観衆は不服そうな反応を見せるが、焔は笑った。



焔「ハハハハ!ワグぅ、やるじゃねぇか」


 肩をポンポンと叩き労う。すると、一人が拍手をし、それにつられパチパチと勝利を祝福し始める。


走川「今年は年、ワグか」


幾「怪しいんだよなー」



 ワグは用意されていた、簡易なトロフィーを貰い今回の大会は幕を閉じる─

 

焔「待て、ワグ」


ワグ「な、なんすか?」


焔「すまねぇけどよ、まだ全力も出せてないしお前のその強さともうちっと張り合いたいんだ。エキシビションって事で一戦やってくんねぇか?」


ワグ「いいぜ!やってやるよ!」



 ワグの気分は高揚しており、簡単に勝負を受けた。


 二人は机に肘を置き、エキシビションマッチが行われる。



走川「お、何だ何だまた始まったぞ」


彰「いやんもう!やるなら言ってよン!危うくケーキ作り始める所だったわン!」


剣崎「お?良いぞ良いぞやれやれーやっちまえ!!」



 一瞬散ろうとした観衆が帰ってきて大きな歓声をあげる。



焔「肘、置きな」


ワグ「ああいい……ぜ……??」



 共にセットした瞬間、焔の殺気は周りを黙らす程に大きくなった。


焔「おい、誰かコールしろ」



奏「あ、うん、では、始め」

 ボッバァァン──!!!!!!!!!!



────────────



 一切手は抜かなかった─


 能力も上手く発動し、相手の力みの瞬間をついたはずだった─


 それが、腕相撲なのに、ワグの手の甲は机と同時に粉砕された─




奏「ワグさぁぁぁん!!!!」



ワグ「」


幾「ワグが死んだー」


アリサ「焔を怒らせましたね」


 ワグは白目を向いて倒れていた─

──────




奏「あ、うん、では、始め」



 刹那だった。


 焔の周りにバチバチと火花が散り、手の甲から爆発が起こる。その瞬間にワグの腕は吹き飛ぶように机に叩きつけられた。あまりの衝撃でワグの意識は異世界に飛んだのだ。


──────


 

焔「奏、チノのばあさんの所に連れてけ。死人が出たってな」


奏「うわぁ……大人げないなぁ、姉さん……」



 こうしてBARKERSの毎年恒例の行事は終わるのだった─


───────────




挿絵(By みてみん)

 

明けましておめでとうございます!

三ヶ日を越えてしまってますが(笑)


挿絵はそらとさんからいただきました!

ありがとうございます!


読んでくださる方、今年も頑張りますのでよろしくお願いいたします!

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