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第三章 28話 愛で乗り切るのさ!


エミリア「まあ、ダンったらそんなになるまで私を探してくれたの?」


ダン「良かった!良かった無事で!会いたかったよエミリア!!」


 エミリアは豪華で大きな部屋で豪勢な食事をしていた。両隣には侍女のような女性がおり、戸惑いを隠せないようだ。


 ダンは立ち上がりすぐに駆け寄る。



ダン「何で?何でエミリアはこんなにもてなされているんだ?」


エミリア「ミスマールさんのお陰なの」


ダン「ミスマール??あいつが??何故??」


エミリア「実は─


───────────────



ミスマール「しっかり歩け!」


 ミスマールは第二独房にエミリアの手首に紐付きの手錠を掛け、引っ張っていた。その後ろにはもう二人部下の男がついている。


エミリア「嫌です。私はあなたの指図なんて聞きません」


ミスマール「はあ、君は自分の立場を分かっているのか?」


エミリア「それは私の事を存じての言葉ですか?」


ミスマール「君がどんな人間だろうと知ったことではない」


エミリア「これは冤罪であり、侮辱罪に当たります。きっと貴方達は後悔する。ハートリー家とパパン家を辱しめたことを」


ミスマール「もう一度言おうか。お前たちの地位や権力など知ったことでは」

エミリア「そこのあなた!」


 エミリアはミスマールの言葉の途中で後ろの使用人に話しかける。



使用人A「な、なんだ」


エミリア「ハートリー家はご存知かしら?」


使用人A「あ、ああ。この世界に足を踏み入れているからには」


エミリア「そのハートリー家の娘なのよ?こんな乱暴に連行して、仕舞いには独房へなんてどうなるか分かります?」


ミスマール「耳を貸すな」

エミリア「いいえ、聞きなさい」


ミスマール「はあ……」


エミリア「私達は完全に白。黒のウィッセンに踊らせてるのよ貴方達。本当愚かよ。それでこの愚行。貴方達はこのままではフランスとイギリスの二国を敵に回すの。立場を知らなかったから。地位や権力が嫌いだから。そんな子供染みた理由ではいつの間にか自分の首を切る事になるわ。貴方、大分良い歳に見えますが、家族はいらっしゃるかしら?要るわよね?大切にした方が良いわ。でもさっきも言ったように私達は白。冤罪でこう、乱暴もされてるの。私はこのままでは許さないわ。イギリス政府に全てリークしてあげる。そうしたらどうなるか分かります?そう、貴方は罪の無い私達を乱暴した罪として国際指名手配、または何らかのデメリットが生じることになります。まあ、イギリスとダンの国のフランスには足を絶対に運ばせませんけどね。可愛そうではありません?貴方の家族。あなたがそのような意味の無い罪を犯すことによって家族にも迷惑がかかる。いや、それだけじゃない、貴方の国にも迷惑がかかるの、それと、」


ミスマール「やめろ!もう分かった!分かったから!これ以上部下を脅すのはやめてくれ!」


 後ろを歩く二人の使用人は冷や汗をかき、青ざめていた。


エミリア「別に脅してる訳ではないですよ?ただ、貴方達の愚かな行為の結末を話してあげようと思いまして」


ミスマール「はあ……まあ、正直。正直な所、お前たちが白だと言うことは大体察しがついてる。あまりにも唐突過ぎるし、お前たちの素性は分からんが、仮にも子爵と男爵のハートリー家とパパン家だ。こんなテロを起こす意味も無いし、そんな風には微塵も見えん。私の考えだが、ウィッセンの名を上げる為に、君達が何かしらで調度良かったのだろうとな」


エミリア「でしたら、すぐに解放をお願いします」


ミスマール「それは出来ない。これは王の命令でもあるからな。一日だけ、一日だけで良いから静かにしていてくれないか?ウィッセンがどう動こうが継承式中には外に出そう」


エミリア「一日だけ、私を独房へ?」


ミスマール「……不服なのはそれだけか?」


エミリア「ダンとシュウも私と同じ部屋に。それと持ち物を全て返してほしいです」


ミスマール「部屋を変えられるのは君だけだ。ウィッセンに勘づかれたら面倒だしな。持ち物に関しては許そう。しかし、通信機は無しだ。他は持っていて構わない」


エミリア「むぅ……ダンを少しでも傷付けたら許さないんだから」


ミスマール「何もしないさ。君が、いや、君達が素直に一日を過ごしてくれればね」


エミリア「そうそう、レイピアですが、それはパパン一族の家宝ですので、丁重にお願いしますね」


ミスマール「注文が多い事だな。分かった。君につける侍女に持たせよう」


-----------------



エミリア「かくかく然々ありまして、」


ダン「なるほど、深く聞きたい話だが、今はそれどころではないんだ」




執事の男「悪運の強い男だ。また面倒な事になった」


 後ろの声に驚き飛び起きるかのようにしてエミリアの元へ駆けていく。


ダン「こ、コイツだ!この男をどうにかしなきゃいけないんだ!」


 エミリアの両端にいた侍女は驚き声を出した。



侍女A「アルフォンソ様!」


侍女B「何故アルフォンソ様がここに??王子の危機なのですか!?」


 アルフォンソと呼ばれたボウタイの執事は侍女たちに声をかける。


アルフォンソ「巻き込まれたくなかったら君達はここから離れろ。あの伊達男に指示を煽るんだ」


 侍女たちは慌ててその場から離れていく。エミリアはまだ座りながらぼうっとアルフォンソとダンを見ていた。


エミリア「これは、何なのでしょうか?傷だらけのダン。ダンを追いかけるこの男……」


ダン「エミリア。協力してこの男を倒さねばならない。僕達を逃がす訳にはいかないみたいだ」


 エミリアは少し唖然とした顔を見せるが、すぐに顔にプクッと空気を溜めて怒る。



エミリア「む、許さない!ダンを傷つけるやつは誰であろうと!!」


 エミリアはバンっとテーブルを両手で叩き立ち上がった。


エミリア「ダン!」



 エミリアは後ろにあった長机のクロスを取り、そこに置いてあった長物を渡す。


ダン「これは!」


 それはダンが大事にしていたパパン一族の家宝のレイピアだった。


ダン「エミリアとこのレイピア。負ける気が一切しないよ!!」


 ダンはレイピアを抜き、エミリアはダンに寄り添う。



エミリア「私達はこれで無敵だわ!」


ダン「魅せよう、僕達の愛の連携を!」



 アルフォンソは手を横に凪ぎ払う。


アルフォンソ「時間が無い。うだうだしていると日が登ってしまう」



 ダンとエミリアはアルフォンソの周りを見て息を呑む。あれほどあった自信が一気に欠けていったのだ。


アルフォンソ「Quindici Mani(十五の手)」



 空間に浮かぶ十五の手首。その手首は今か今かと二人に襲いかかりそうでもある。



アルフォンソ「出し惜しみせず叩く」



ダン「え、エミリアァ……」


エミリア「大丈夫。ダン。大丈夫。私は貴方を守る。貴方はしっかり敵を攻めるのよ」


ダン「あ、ああ!分かっているさ!僕らは負けない!」



 愛はこの逆境を乗り越えられるのか─!

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