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第三章 27話 劣勢から生き延びろ!



ダン「はあ、はあ、はあ……くっ、」


執事の男「先程の威勢がまるで無かったかのようだな」



 ダンの口の中は切れ、顔は所々腫れていた。大分疲弊しており、ダラリと剣が自然に下を向いている。


ダン「な、中々、飾りの剣じゃ上手くいかないものがあるね……それと……」



 ダンは自分の周りを眼で確認する。そこには三つの浮いた手首があった。その手首達はふわふわと浮遊しており、予想のしづらい速く、非常にトリッキーな動きをしてダンを襲っていたのだ。



ダン「相性が悪すぎるな……」



 トリッキーな動きをする手首をなんとか制さなきゃいけないにも関わらず同時に来たり、交互に来たりされると対応が出来ない。



執事の男「私の能力は絶対に[届く]。お前がどう足掻こうと絶対にな」


 また、三つの手首はダンへ飛ぶ。


ダン「うっ!?」



 ダンは剣を振り回すも、手首には当たらず。



 ドガッ ドガッ ドガッ



ダン「グフッ、」


 その三つがダンに当たる。手首だけが浮いているが、殴られる威力は普通に殴られるくらいの威力。ふらふらとするが、すぐに剣を構える。



ダン「本当、不気味で小賢しい能力だ、プッ」



 ダンは下に血を飛ばす。



 この二人の戦い。ダンの劣勢には数々の理由が存在する。



 一つは持つ剣が置物の飾りで切れ味のクソもないところ。一つは能力の相性。そして、それらを越える一番の理由がある。それは、



ダン(まずいよ、助けてエミリア……もう駄目かもしれない)



 ダンはエミリアが居ないと最高にポンコツなのだ。この事は本人とエミリアしか知らないことである。何とか気丈にしているが、もうダンの心は折れそうだ。彼は追い込まれれば追い込まれる程駄目になる。



執事の男「ふう、色々と警戒していたが、思っていた程では無いようだな」バッ



 執事の男は懐から食事用のようなナイフを三本投げる。すると、手首達はしっかりとそれをキャッチする。


ダン「うっ!」



 ダンの背筋が凍る。



執事の男「三分は少し掛けすぎたか」


 手首達は襲いかかる。


ダン「う、うわああああ!!!!」


執事の男「な、」



 ダンはあろうことか、背を向けて走って逃走してしまった。


執事の男「逃がすか」



 執事の男と手首はすぐに追いかける。



ダン「エミリアァ!!どこに居るんだエミリアァ!!助けて!!助けてエミリアァ!!」


執事の男「くそ、こんなんで時間を喰ってたまるものか!」


 執事の男は立ち止まり、逃げ行くダンを指し言い放つ。


執事の男「行け!串刺しにしろ!」


 手首達はダンを襲う!


ダン「や、やめてくれ!!」



 ダンは間一髪しゃがみ、頭上を手首が通りすぎ、ナイフを強く壁に突き刺した手首達は動けなくなった。ダンはその隙に角を曲がり逃げる。



執事の男「く、そ……っこんな時に!」


 執事の男はまた追いかける。


ダン「はあ、はあ、はあ、一体どこに居るんだエミリア!」


 ダンがたどり着いた所はまたしても赤いカーペットが続く長い廊下。しかし、そこは数々の豪華な扉が横についていた。


 ダンはひたすらに逃げる。そして、また手首達と執事の男は後ろを追いかける。


 しかし、その逃走劇も終わりが近付いていた。



ダン「ひぐっ!」



 目の前は大きな二枚扉。到着して押してみたが鍵がかかっていた。



執事の男「逃げ道はもう無い。諦めろ」


 手首達がダンを仕留める為にふわりと目の前を漂う。


ダン「死ねない、僕はまだ死ねない!エミリアとの結婚を控えてるんだ!」


 執事の男は顔色を一切変えず、冷たい表情でダンを見る。



執事の男「そうか」


 執事の男は手を前に出す。手首達は非情にも、ダンへ一気に向かっていく。



ダン「嫌だぁぁぁぁ!!!!」ブンッ


執事の男「!?」



 幸運にも投げた飾りの剣は真っ直ぐに飛んでいき、執事の男の気を少しでも反らすことが出来た。


ダン「くあっ!!」



 ダンは破れかぶれで後ろの二枚扉に飛び込んだのだ。



 ズバン!!!!



 大きな音をたてて開く扉。ダンはその勢いで倒れこむ。



「だ、誰!!」


「何者!!」


 聞きなれない女性の声が聞こえる中、ダンにとって待ちわびていた聞きなれて大好きな声が聞こえる─



「まあ、ダン!迎えに来てくれたのね!流石私の王子様だわ!」



 ダンはこれまでにない嬉しさのこもった顔をあげてその声の主を見る。




ダン「エミリア!!!!」



 涙と鼻水が少し垂れた色男はやっとの思いで想い人と再会したのだった─

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