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第三章 25話 全員迷子!!



シュウ「本当にこっちであってるの?」


 シュウの問いに人形は頷く。シュウは色んな所に飛び移り、バレないようドンドン高いところに浮遊していった。しかし、人形に導かれるままに

動いていくのはいいが、さながらRPGの地下ダンジョンのような作りの宮殿に困惑を隠せないでいる。


シュウ「実は道忘れて適当に言ってない!?」


 人形は横に首を振る。


シュウ「本当かなぁ……わっとっ」



 シュウはシャンデリアのように豪華な作りの電気に身を潜める。下にはリスト家の人とは違う格好をした使用人達が走って通っていった。



シュウ(監視カメラとか無いのはありがたいけど、こうも人が沢山居ると心臓が持たないなぁ)ドキドキ



シュウ「じゃあ……次はど、うわっと!」


 シュウは落ちる寸前の人形を掴む。人形は先程と違いダランとした状態だ。


シュウ「ちょ、え!どうしたんだ?おーい」


 人形はウンともスンとも言わない。まるで電池みたいだ。



シュウ「最悪だ……アリサさんの能力が切れたのか……」


 シュウは辺りを見渡す。


シュウ「どうすれば良いんだよ……これぇ……」



 途方に暮れる。



-----------------



アリサ「ふぁ……もう、限界ですわ……」



 どさりと倒れるアリサ。ひなびはアリサに新しい水を持ってくる。


ひなび「お疲れ様です、アリサさん。ど、どうでしたか?」


アリサ「一応兵隊さんはシュウさまについてくれましたが、私の力不足で長時間遠距離操作はキツくて……」


 アリサはひなびが持ってきた水を飲む。


ひなび「一応困難は打開したのでしょうか?」


アリサ「分かりませんわ……今はこの周りに人形を作りつつ時間が空いたらまた挑戦しますわ」


ひなび「私も剣崎さんのオペレートに集中します!私一人だけ何も出来ないのは嫌です!」


 ひなびは音声機器などが並ぶデスクのイスに勢いよく座る。大きなマイク付きヘッドホンを装着し音声機器の音量を上げる。


ひなび「剣崎さん!剣崎さん!状況を教えてください!」


 すぐに返答は帰ってきた。


剣崎『わるい、参った……道に迷ったわ』


ひなび「こ、この状況でそれは不味いですよぉ!!」


 ひなびは先を思いやられていた。


------------------



シュウ「んー……ここはどこなんだ?」


 ドンドン先へ進んでいるが、保管室はおろか、出口すらにも近付いていない気がする。しかし、変わっていく感覚はあった。何だか行けば行くほどひんやりしているような空気を感じるのだ。



 そして、ある扉を開けると、中は高い天井の長く続く廊下が真っ直ぐ伸びていた。


シュウ(何か……絶対違う気がする……)



 そう、思いながらも戻って違う道を行くというタイムロスをしたくないため、行けるところまで行こうとするシュウ。


 すると、その奥の扉は少しだけ開き、中から人が出てきた。


ミスマール「ふぅ……まぁ、ここには来ないだろう、テロリストは今一人だけ第二控室へ向かっている。半数はそいつの捕縛に、もう半数は牢屋を見に行け。何か怪しすぎる」



 どうやら通信で仲間に伝えているようだ。


シュウ(ん?ダンさんのことか?バレたんだろうか……だとしたら逃げ切ってくれ……っ)



 ミスマールは疲れきったようにため息をして頭を掻く。


ミスマール「本当参ったよ……金が良いから何度も依頼を受けていたけど、これは少し気が滅入るなぁ」


 ミスマールはシュウに気付く素振りもせず真っ直ぐその廊下を行き、シュウの入ってきた扉を開けて居なくなる。



シュウ(……行ったかな?)


 シュウはミスマールが出てきた大きな扉の前に降り立つ。


シュウ「このとび、」



 バンッッッ!!!!



 入ってきた扉が勢いよく開く─



 ミスマールがすぐに戻ってきたのだ。お互い目があった状態で空気が凍る。


ミスマール「……」


シュウ「え、う、そ……」


 ミスマールの瞳孔は驚きで開く。すぐにこめかみに血管が浮き出る程の怒りの表情を表す。


ミスマール「貴様……許されんぞッ!!!!」



 ドシドシとシュウに向かって歩き出す。


シュウ「やば……」


ミスマール「どうやって私に気付かれずにここへ来た……しかも、よりにもよって何故ここに!!!」


シュウ「あ、いや、別に目指して来たわけでは、」


ミスマール「問答無用だ!!正直、私は君達を白に近いものだと思っていた。ウィッセンの悪巧みにただ巻き込まれたのだと。だが今、確信に変わった!!」


シュウ「待ってくれよ!俺は出口を目指そうと!」


ミスマール「この先には行かせん。お前らテロリストはここで切り刻まれエーゲ海に消える」


 

 懐に差す小さなサーベルナイフを抜いたミスマールは両腕を前に出し、少し屈むような構えをする。


シュウ「くっ……」



 シュウの脳裏にはある言葉が思い浮かぶ。BARKERSの武道場でワグ達と焔の対人格闘の教えを受けている時の言葉だ。


─────────────



ワグ「なあ姉さん!こう言うときは気を付けろっていうのある?」


焔「あ?いつも気を張っとけよ」


ワグ「ま、まぁその通りだけどさ、もっと、こう、危険度アップ!WARNING!WARNING!みたいな!」



シュウ「何言ってるんですか?」

恩田「さっき焔に投げられておかしくなったんだな」


 焔は腕を組み少し考える。


焔「うーん、まぁお前ら視点になって考えるとなぁ……あーこういうのがあるわ」


ワグ「お!教えて下さいませ姉さん!」


シュウ「気になります!」



 焔はゆらりと腕を前に出しまるでお化けの真似事をしているような構えをする。


焔「どうだ、ワグ」


ワグ「あ、あー、な、なるほどな……」


 シュウと恩田は見ていて分からず、ワグは冷や汗を流す。


焔「そう言うことだ」


シュウ「え!分かりませんよ!どうなったんですか?」


焔「じゃあお前にもやってやるよ」



 焔はシュウに向き、またふわりと手を出す。



 ワグの言いたい事が分かった気がした。


 目の前にそう、構えられるとなんと言うか、非常にさまになっていた。真っ直ぐに来る鋭い殺気。ふわりと構えられ絶妙な脱力。何といっても……


シュウ「隙がない……」



 いつでもやられそうな危機感があった。


焔「何だったら襲ってきても良いんだぜ?」



 焔はニヤリと意地悪そうに笑みを浮かべる。


恩田「ぶう!!」



 そこで空気の読めない恩田が焔に襲いかかる。


恩田「ぶふぁっ!!」



 一瞬で焔の横蹴りが恩田の腹に決まり吹っ飛んでいく。



焔「まあ、言うならよ、普通じゃねぇ構えをしてそれに何かを感じるんならそいつは普通じゃねぇってこった。そんな奴とやりあうには自分も何か策がねぇとやられちまう」


シュウ「な、なるほど……じゃあ、ない場合はどうすれば?」


 焔は構えを解き、片手を腰に。もう片方をシッシッと払うように動かす。


焔「とんずらこくしかねぇんじゃねぇか?」


シュウ「えぇ!!」


ワグ「マジかよ……もし逃げるわけにはいかない時は?」


焔「そんときは、」

────────────────



シュウ(その時は……まともにやりあわず、避けに徹すべき)




シュウ「こ、後悔しても、知りませんからね!」


ミスマール「貴様は後悔する間もなく死ぬ!!」



 焔の言葉を頭にしっかり刻み込み、ミスマールと対峙する─



----------------



ダン「くっ、あまりにも見切り発射すぎたか!」



 宮殿内を走り回るダン。行くところ行くところに使用人が居てまともにエミリアを探す事が出来ない。


ダン(だが、きっと僕とエミリアの仲なら、直感だが会える気がする、きっと会える!)



 そして痛感する─あまりにも自分が悪運の持ち主だということに……



ダン「!?」


執事の男「……」



 赤い絨毯が敷かれた廊下にて、あの時のボウタイ執事とバッタリ会ってしまった。



ダン「くっ、こんな忙しい時にっ!!」

執事の男「チッ……こんな時に」



 二人は同じような言葉を口にした。



ダン「ん?おやおや、どうやら君も忙しいみたいじゃないか?なんなら見逃してくれてもいいんだよ?」


執事の男「……王子の身の安全には繋がらない。却下だ」


ダン「でも急いでいるんだろう?」


執事の男「三分以内で制圧すれば許容範囲だ」


ダン「三分以内だって?ほほう?」



 ダンは横にたたずんでいる騎士のオブジェクトから剣を取る。


ダン「僕をダン・フェレオールと知っての狼藉かな?」ヒュン─


 フェンシングのように剣を向け構える。


執事の男「どのような家柄だろうと私の知ったことではない」


 

 守るべき大事な者を背負う二人の色男。どちらが先に会えるのか─



---------------

 


剣崎「やべぇ!マジかよ!真っ直ぐ行ってたよなぁ俺!」


ひなび『し、知らないですよぉ、何で真っ直ぐ行くのに迷子になってるんですかぁ!はぁ……今何が見えますか?何か特徴があるといいのですが』


剣崎「ん?特徴?門が見えるな!」


ひなび『正門まで回ったんですか!?逆に才能ですよその方向感覚!』


剣崎「おいおい、俺だって意外とテンパってんだからあまり苛めんなよなぁ?……ん?」


ひなび『どうしました?』


剣崎「あれは一体なんだ」


ひなび『あれ?ですか?』


剣崎「執事野郎共でもマフィア達でも貴族でもねぇ……あれは……漁師?」


ひなび『漁師さん……ですか?住民の方ですかね?』


剣崎「……いや、あれは地元民とかじゃねぇな」


ひなび『何でそう思うんです?』


剣崎「殺気がちげぇ。あれは、一戦交えるファイター、いや、死に行く覚悟をした平民達の一揆のようだ」 



 その漁師の団体の手には鍬や剣、ナイフや安そうな銃など簡易的に集められる武器を持っていた。彼らの雰囲気は暗く、皆黙って何かを待っているようだった。



剣崎「本当異様だな……近づくか」


ひなび『えぇ!?危険ですよぉ!!』


剣崎「何か悪いことが起きる前に終わらせるのがBARKERSだろ?ってかもしかしたら走川の事とか知ってるかもしれねぇしな」


ひなび『そんな団体に声をかけるのは自殺行為としか……』


剣崎「じゃあちょっと近付くだけだ」


 剣崎は物陰に隠れながらその団体に近付いた。声が何となく聞こえるくらいまで来た時、その団体のリーダー的存在に気付く。



剣崎「アイツがリーダーか?いかにも船長みたいな姿してんな」


 声が聞こえる。



船長「お前らぁ、もう一度聞くがぁ、本当に死ぬ覚悟があるかぁ?今ならまだ間に合うぞぉ?」



 豪快そうな口調だが何だか悲しそうだった。


船員「大丈夫っすよゲイリーさん!俺ら、皆あんたと死ぬつもりだ」


船長「いやぁ、嬉しいねぇ……やることは完全に悪でしかねぇが、これが終われば俺らは自由だぁ」


船員「大丈夫ですよ、きっと上手くいきます」




剣崎「完全に悪?何しようってんだ?」


ひなび『何でしょう……でも私の危機察知能力が早くその場から離れろって言ってます……』


剣崎「船長の名前はゲイリーって名前だ。知ってるか?」


ひなび『いや……』


 その時、その船長が口にした言葉に耳を疑うのだった。



ゲイリー「時間としてはそろそろだぁ。お前達、ここに居る全ての人間を」




ゲイリー「殺すんだ」



剣崎「!?!?殺すだと!?」


ひなび『ふぇぇ!やっぱり!』


剣崎「クソ!!」


 剣崎は動き出す。ひなびが何か慌てて剣崎に制止の言葉を投げ掛けるが、剣崎はどうしても止めなければと頭が一杯だった。



剣崎「てめぇら!!」



船員達「!?!?」


ゲイリー「ん?何だぁ?」



 剣崎はその団体に怒りの形相でガンを飛ばす。


剣崎「ここはてめぇらの来るところじゃねぇ!!」


 ゲイリーがどしどしとゆっくり剣崎に近付く。



ゲイリー「何だぁお前は。お前こそ、こんな所に何のようだぁ?」


剣崎「てめぇが親玉だな?」


ゲイリー「だったら何だっていうだぁ?」



剣崎「だったら何だって?」


 剣崎はぶちギレそうになるくらいに睨み、ドスを効かせる。



剣崎「てめぇブッ飛ばして帰らせんだよ!!」




ひなび『はわわわ……最悪な展開ですぅ……』



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