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第三章 23話 疾走─仲間の為に!!




 俺は……仲間を守れなかった。あの狂人の来襲によって目の前で惨殺されたあの時を忘れられない。



 恐怖で体が動かず……ただ、ただ見ている事しか出来なかった。あの時、もし俺が先導して周囲を確認していたら、もし俺がこの能力で相手の意識を錯乱することが出来ていたなら……未来は変わっていただろう。



 言葉には風を切る、風のように走る。っと速いものは比喩されるが、果たして速くなると風になれるのだろうか?


 

 正解は風よりも速くなれる。風なんか比にならないほどに。


 

 


走川「俺のトップスピードは光より速い。メイ君、申し訳無いが出番はないかもしれないぞ?」



 走川は自分なりの戦闘スーツを着てストレッチをする。フィットして体の運動を妨げず、筋肉の動きを伸縮で底上げするように出来ているスーツだ。


百々「私も頑張るもん」

百々「私も頑張るもん」



 二人の分身が声を合わせて言う。



走川「さて、渡すものは持ったな?」


 百々は頷きポケットに入るくらいの小箱を見せる。中には通信機が入っている。



走川「行くぞ!このまま真っ直ぐ行けば式場の裏に着くはずだ!」



 走川は走る─後ろを百々が追いかけるがすぐに置いてかれる。それもそのはず、走川の能力は走る能力。走る際の消費するスタミナが極小になり肉体が耐えられる限りの速さで走れるというものだ。


 

走川(待っていろ三人とも!今回こそは絶対に…っ!)



------------------



ダン「クソっ!!出せ!!君たちはとんでもないことを仕出かしているぞ!!僕らはテロリストなんかではない!!」


ブラドー「ぬかせバカが。テロリストが自白などせんだろうが。ま、この俺の言葉が理解出来るか分からんがな」



ダン「くっ、イタリア語かっ!何を言っているのか理解出来ないっ!」



 ダンは鉄格子を握りブラドーを睨む。シュウとダンは剥き出しの石で作られたベッドとトイレしかない地下牢に投獄された。そして二人とも万能通信機を外されて外国語が理解出来ない状況に陥っている。




シュウ「ダンさん……」


 ブラドーはシュウをギロリと睨む。



ブラドー「ふん、小僧、日本人だったか。どうも気に食わない訳だ」


シュウ(ん?何かを俺に言っている?)


ブラドー「お前らをすぐにでも刑に処してやりたいところだが、まだ出来ん。色々と考える所があるからな」



 ブラドーが後ろを振り返り周りを見る動作をする。


ブラドー「まぁ、この俺が王に直々に尋問官に選ばれたのだ。何か考えがあっての事だろうがな」


シュウ「???」


 先ほどとは打って変わって何か思い詰めた顔をしているのが分かるが、言葉が通じない為よく分からずにいるシュウ。


ブラドー「今日は一日何も考えず寝ることだな。また明日様子を見に来よう。っと言っても分からないだろうがな」


 ブラドーは大きな体でくるりと踵を返しそこから去っていく。


ダン「待て!エミリアを返せ!!エミリアに!!エミリアに何かしたらただじゃ済まさないぞ!!!」


 ダンはブラドーの背中を睨み叫ぶ。



シュウ「ダンさん、どうしましょう?」


ダン「くっ、良かったよ、日本語は勉強していて」


シュウ「??すいません……ダンさんの言葉も分からないです……」


 ダンは咳払いを一度してシュウに言う。


ダン「大丈夫だ。日本語なら少し出来る」


シュウ「良かったっ……流石ダンさんだ……誰も通じないのかと思って不安でしたよ、」


ダン「どうにかしないと。通信は繋がったのか?」


シュウ「はい、でもすぐ取り上げられてしまって……」


 ダンは腕を組み唸る。


ダン「アリサならきっと助けを送ってくれるだろうが……駄目だ、エミリアが心配で頭がおかしくなりそうだよ」


シュウ「今はどうすることも出来ない……ですね……」


 

 それから二人は中を念入りに調べたが窓も無く途中まで目隠しをされて連れてこられたから場所もわからない。ただ地下牢で絶望的な状況だという事しか……



 それから数時間が経った時だった。こちらに近づいて来る足音が聞こえ二人は鉄格子の外を見る。



ミスマール「はあ、君の連れはとんだじゃじゃ馬だな」



 ミスマールがジトリとした目でダンを見て言った。


ダン「貴様っ!貴様だな!エミリアを連行したのは!!」


 ミスマールはやれやれと肩をすぼめカンドゥーラの懐から何かを取り出す。



ミスマール「言葉が通じないというのはお互いに気持ちの良いものではないだろうからね」


 こちらに投げてきた二つの小さな物体は補聴器のようなものだった。



シュウ「これって……」


ダン「通信機か?」



 二人はそれを耳に装着する。


ミスマール「君たちが持っていたものほど高価で万能なものではないけどね。私たちが使っている翻訳機だ。通信機能は無くさせてもらってるけどね」



 ダンはキッとミスマールを睨み怒鳴った。


ダン「エミリアは!エミリアはどこにいるんだ!!」


 ミスマールは怪しくニヤリとダンに笑う。


ミスマール「彼女の居場所かい?まぁ、言えないがさっきまで楽しくやっていたよ。さっきまではね」


 ダンの顔が一瞬絶望の顔に染まったが直ぐに顔と目を怒りで真っ赤にして怒鳴る。


ダン「貴様ァ!!!エミリアに何をした!!!」


 ミスマールはニヤリと笑い流した後にシュウを軽蔑な眼差しを送る。


シュウ「な、なんだ?」


ミスマール「私はね、日本人が好きなんだ。あの謙遜する態度。平和が好きでおもてなしの心を大切にしたあの者達がね。だが、君を見てがっかりしたよ。日本人とは、争い事を嫌がる人種だと思っていた」


シュウ「ご、誤解です!争いなんて思ってもいない!」


ミスマール「まあ、何であれ今日一日はこの牢で過ごすといい。我々も明日の式典本番に労力や精神を費やさなければならないからね。無実ならば一日だけは大人しくしてくれ」


シュウ「そ、そんな!!」


ダン「話をそらすな!!エミリアはどこだ!!」


 ミスマールは手をフワッと振り背中を向ける。


ミスマール「彼女はきっと楽しくやってるさ。今日はお互いに良い夜を」


ダン「ま、待て!!!」



 ミスマールは軽い足取りで去っていった。


ダン「くそ!!!!!」


シュウ「うぅ……このままではヤバい……どうすれば……」



-----------------



 ザッザッザッザッ─



 一心不乱にただ真っ直ぐ走る─


 仲間を助けるため、ただただ前を─



 

 辺りは真夜中─

 

 草を掻き分ける音、枝を踏み締める音、虫の鳴き声全てが反響し走川を包み消える。



走川(そろそろか?……っ!?)




 走川は聞き逃さなかった。



 後ろから響く銃声と……すぐに近付く茂みの音を!!



走川「むっ!?」



 走川が前を向いたとき─目の前には紅葉が広がっていた─


走川「こ、れは……」


 

 まるで波にぶつかったような衝撃が胴体に伝わり……


 走川は倒れた─




 「疑わしきは罰すだ。恨みは無いがガイコクにて沈め」



 そこには和服の凛とした女が立っていた。

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