第三章 19話 潜入作戦へいざ!☆
先日、待機班に選ばれたメンバーは無事にファリハー島に到着したようだ。アリサから陽気な通信が来て取り敢えずは胸を撫でおろすシュウ。
今日はいよいよ、シュウ達三人が潜入する日。シュウはワグと幾、三人で食事をとっていた。
ワグ「いよいよ今日出発だな!……って大丈夫か?シュウ?」
シュウの顔色は悪く、持ってきた朝食はクロワッサン一つとバターだけだった。
シュウ「ちょっと……緊張しちゃって……」
幾「まぁ緊張するのは仕方無いことだけどなー……」
ワグ「でもよー喰わなかったら力出ないぜ?」
シュウ「そうなんですけどね……」
相対的にワグは朝から牛丼とオムライス、幾はホットサンドとコーンポタージュ。
シュウは、はぁーっとため息をしてモサモサとパンを食し、飲み物をグッと飲む。
シュウ「ゴクッ、ぷはっ!でもやる気はありますよ!!俺はまたここで笑い合って飯を食べたいですらね!!」
ワグ「お、おお、そうだな!その勢いが大事だぞ!」
幾「うん、これなら心配要らないかもなー!」
シュウ「アリサさんと約束したんです!」
幾「じゃあしっかり喰えよなー!」
そう言って自分のホットサンドをシュウのお盆に置く。
ワグ「そうそう!喰ってスタミナ付けねぇと笑えるもんも笑えねぇぜってな!」
ワグはオムライスを大きく別けて無理矢理シュウのお盆によそう。
シュウ「あはは……食べれるかなぁ……」
シュウは苦笑いを浮かべる。その様子を笑う二人。
「Bonjour à tous!」
「Good Morning!」
颯爽と現れるきらびやかなオーラを纏う貴族の二人。シュウの下へカツカツと靴の音をたて向かって来たのだ。
シュウ「あ、えっと、おはようございます」
ダン「Bonjour、ボーッとご飯を食べてる場合じゃないよ?」
エミリア「そうそう!早く立っていくよ!」
シュウ「え、まだ時間じゃ、」
ダン「良いから来るんだよー!」
エミリア「良いから来なさーい!」
シュウ「わわ!じゃ、じゃあまた!ワグさん、幾さーん!」
シュウは二人に抱えられるように連れていかれた。
ワグ「まぁ……あの二人が近くに居るし、心配はねぇだろ!」
幾「逆に心配だけどなー」
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ダン・エミリア自室─
ダン「どうだいシュウ君?似合っているだろう!」
エミリア「どうシュウ?最高に可愛くない?」
シュウ「……二人とも似合ってると思いますよ、」
ダン「だろうね!!」
エミリア「でしょ!?」
シュウ「あ、はい……」
自室に作られた二つの簡易更衣室の前に立たされるシュウ。貴族の二人はきらびやかなタキシードとドレスで身を包み、三者からみてもきっと似合っていて、純粋に美しい、かっこいいという言葉を放つだろう。
ダン「ま!僕もエミリアも最高に似合う物を用意したからねぇ!」
エミリア「ダン、かっこいい……かっこいいわ!!」
ダン「エミリアも可愛いよぉ!!」
シュウ「」(また始まったなぁ)
そして数分そのいちゃいちゃを見させられた後、ダンがシュウの存在に再度気付く。
ダン「あ、シュウ!そうだったよ!忘れていたよ!君のタキシードも到着したんだ。是非着て見せてくれよ!その為に呼んだんだ!」
シュウ「あ、そうだったんですね、是非着たいです、けど……着方が……」
エミリア「まあ、初めてだったら分からないわよねー、ちょっとーお願い!」パンパン
エミリアは手を叩き、扉に向かって誰かを呼ぶ。すると、扉が開き、一人のメイドが姿を現した。メイドはタキシードを手にしてお辞儀をして入ってくる。
「メイドのリリです。よろしくお願いいたします」
背はシュウと同じくらいで髪は栗色のシニヨンヘアー清楚な顔立ちだ。
エミリア「リリ、シュウの着替えの手伝いをお願い」
リリ「畏まりました」
シュウ「え!え!じょ、女性と!?」
エミリア「どうしたの?メイドだから女性が当たり前よ?」
ダン「あー、シュウ君はきっと恥ずかしいんだよ。別に気にすることはない、僕も昔はそうだった。慣れるものだよ?」
シュウ「で、でも……」
ダン「渋っていても仕方ない!ホラホラ、入るよ!」
シュウ「うわわ!」
ダンはシュウを押して簡易更衣室へ押し込む。その後、すぐに失礼しますとリリが入ってくる。
更衣室で二人きりになるこの状況に慣れず目のやり場に困るシュウ。
シュウ「えっと、あの、その、」
リリ「それでは修二さま、失礼致します」
シュウ「へ、」
リリは手際よくシュウを脱がせていく。
シュウ「ひ、ひゃあー!!!」
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シュウ「ど、どうですかね……?」
ダン「Oh là!」
エミリア「Oh!!」
シュウ「に、似合いませんか?」
ダン「そんなことないぞ!」
エミリア「そんなことないわ!」
リリ「とてもお似合いだと思いますよ?」
シュウ「そ、そうですか?て、照れるなぁ」
シュッとした姿、フォーマルな黒色の蝶ネクタイ、二人とは違い落ち着いたタキシード。似合うと言われ正直、内心凄く嬉しく心が踊った。
ダン「これくらいしっかりしているならきっと、会場でも浮かないだろうね!」
エミリア「そうね!私達の従者って言っても全然悪くないわ!」
シュウ「あ、従者って設定なんだ」
エミリア「しっかり持ち物はコンパクトにね!リュックとかはnonsenseよ!」
ダン「男の嗜みとしてハンカチや小さなタオルを持ち歩かないとね!」
シュウ「分かりました!気を付けます!」
ダン「泊まる用としての荷物は用意したかい?」
シュウ「あ、まだです!やっとかなきゃ!」
エミリア「時間は有限よシュウ!」
シュウ「分かりました!ありがとうございます!じゃあまた!」
シュウはダン達の部屋を後にして、時間まで準備や色んな人との会話で時間を潰す。そして、刻々と時間は過ぎていった─
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ダン「さあ、行こう!」
シュウ「はい!すいません!お待たせしました!」
シュウは荷物を抱え、忙しそうに小型輸送機に乗り込む。
エミリア「時間ギリギリまで話してたみたいね?」
シュウ「ははは……ちょっと話が込み合ってまして……」
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シュウは行くまで食堂で色んな人と話して時間を潰していた。近くに来る人達がシュウの任務出発を応援してくれたのだ。
ワグ「大丈夫!お前ならやれるって!」
幾「皆シュウをバックアップしてくれる、安心してやれなー!」
恩田「んぶ!お菓子は持っていけないからな!」
彰「出発前にケーキはいかがかしらン?それともゲン担ぎにカツ丼がいい?」
ノブ「あの時を思い出してくれ……一緒に乗り越えたんだ、お前なら上手くいく」
小張「何かあったらお姉さんもすぐ行くからね!」
そして、あの人からも、
座ってワグと幾と話しているときだった。肩にポンと手を置かれ、振り向くシュウに優しい表情で話すのはフランクだった。
フランク「これから大事な任務ですね、これだけは頭に入れてください。自分の能力を疑わない事、信じて。自信を持つ事です」
シュウ「ありがとうございます!!」
この言葉は不思議とシュウの心を軽くしてくれた。
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ダン「皆シュウの事が好きなのさ!さあ座って座って!」
シュウはダンによって席に座らされる。輸送機はエンジンがかかり徐々にホバリングして飛んでいく。窓を見るとどんどんBARKERS本部が小さくなっていった。
シュウ(よし、頑張るぞ)
ダン「なあ、シュウ」
シュウ「はい?どうしました?」
ダンは若干照れながら頬を指で掻く。エミリアも若干モジモジしているようにも見えた。
ダン「実はな?シュウに結婚の話をされただろ?」
シュウ「ん?はい、しました……ね。はい」
エミリア「それで色々と話し合って考えたのよ。それも濃密にね」
シュウ「???」
ダンとエミリアは顔を見合わせて頷く。
ダン「今回の任務が……終わったらね……」
エミリア「私達、結婚するわ!」
シュウ「」
シュウ「おー!!!!」パチパチ
シュウは驚きで一瞬言葉を失ったが、喜びと感動が一気に混み上がり手を叩き心から嬉しい感情を現した。
この任務は絶対に無事で終わらせないといけない。その気持ちを強く抱えてヴァリネシア王国へ向かったのだ─
挿絵はそらとさんからです!
ありがとうございます(ノ・∀・)ノ