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第三章 17話 ドロミーティ山脈の死闘 ☆


龍義「お前は変わらんな。あの頃と一切」



神代「そりゃあ変わらないさ。僕は僕さ」



龍義「だろうな。お前はあの時から……変われない」バッ!



 龍義の言葉が終わる瞬間。龍義は両手を前に出し強烈な光を神城に放つ。


神代「お、」


 しかし、その光の放射は神代まで届かず消えていく。



神代「眩しいなぁ、龍。目が焼けてしまうよ」


龍義「それも計算済みだ」



 龍義はまた立て続けに光の放射を両手から放つ。何本もの光はやはり神代には届かない。



神代「久々に会えたんだ。昔話に花を咲かせよう」


 神代は龍義に向かって歩き出す。


龍義「随分余裕じゃないか」


 龍義は右腕の袖を捲り、力を溜める。どんどん右腕は発光していく。



神代「まだ何かやるのかい?」


龍義「それはお前が……」バサッ


 龍義は左手でコートの中から何かを取り出し、神代付近に投げ、ばらまく。


龍義「くたばるまでだ」バッ


 同時に龍義は何本の光の放射を右手から放つ。



神代「はは、眩しいよ龍」


 神代は眩しそうに手を前に出し、足を止める。


龍義「終わりだ」


 バジュッ!!!─


神代「ゴフッ……」



 神代は大量の血を口から吹き出す。光の放射は神代の体を背中から貫通していた。


神代「がはっ……何で……」


 神代は自分の周りに落ちている物に気付く。


神代「は、はは……考えたなぁ、龍」




 落ちている物は小さな鏡だった。龍義は光を鏡にぶつけ、反射させ神代の背中を狙ったのだ。




龍義「……地獄へ落ちるんだな」


 神代は膝を着く。



神代「酷いなぁ……兄弟じゃないか……たった一人の……」


龍義「なんだと……貴様……どの口が言っているんだ!!この外道が!!!」


神代「……龍、怒ってるのかい?」



 神代は何事も無かったように普通に立ち上がる。



神代「俺はその殺気すら羨ましいよ」


 龍義は神代を見下すように睨み付けながら、舌打ちをする。


龍義「ちっ……お前の力はもうそこまで来てるのか」


 立ち上がった神代に傷も、血も、汚れすらも無かった。


──────────────────


時田「覚えている……覚えているぞ。石火矢のあの娘が、そうか、そうか」


 時田は焔の炎を飛び避け、片手と片膝を着いた状態。焔は鬼のように荒々しい形相で時田を睨む。


焔「忘れはしねぇ、この十年。テメェを殺すためにここまできた」


 焔の周りはバチバチと大きな火花が散り始める。


時田「ほう、俺を殺すか。まさかこうなるとは思わなかった。いや、よくぞと、よくぞ、ここまでなってくれたと言うべきか」


 時田は腰に手をやるが空を切る。


時田「……これは、やってしまったな」


焔「好都合だ!!!」ボウッ


 焔は顔くらいの大きさの火の玉を瞬時に作り投げ飛ばす。


時田「ふふふ、得物を手離すとはいつぶりだろうか」


 時田は当たるギリギリに横に転がって避ける。吹っ飛ばされる直前、時田の腰に刺さっていた刀は転がっていく拍子に飛んでしまっていたのだ。


時田「次に繋がる。いい教訓だ」


焔「テメェに次はねぇ!!」ジュババッ


 焔は燃えた腕を横に薙ぎ払う、そこから小さな火の玉が発生し時田を捉え、無数に飛んでいく。時田は背を向け後ろに走り、茂みに隠れた。


 すると、火の玉が木や茂みを貫通し、木は焼き切れ大きな音を立て倒れていく。



焔「ハッ、敵に背中を向けて走るなんてよ、武人として恥じゃねぇのかよ!」


 時田は姿を現さずに笑いだす。


時田「ハッハッハッハ!!お前は武の本質を知らんのだ!」


焔「何が武の本質だ。テメェがその言葉を垂れ流してると腹が立つぜ、死ねクソやろう!!」ボウッ


 焔はまた火の玉を時田に放つ。


時田「じゃあ、少し語ってやろう」


 時田は、突然焔に向かって茂みから前に飛び出してきたのだ。


焔「なっ!?」


時田「武術とは、」シュッ


 時田は左手で懐から何かを焔に向かって投げる。


焔「ッ!!」ボファッ


 飛んでくる物を燃えた左腕で薙ぎ払う。


焔「くっ!?」


 その物は焔の腕に二本突き刺さる。鋭利で直径2cm程の棒手裏剣だった。焔は痛みで若干顔が歪む。


時田「勝ち続けることこそが本意である」


 時田は至近距離まで攻めてきていた。


焔「っ!?!?ラァァ!!!!」


 焔は反射的に腕を燃やした状態で高速の上段突きを繰り出す。


時田「故に」


 時田は当たるギリギリでしゃがむ。


焔「セヤァ!!!」


 燃え盛る足蹴りは時田の顔面を捉え……空を切る。


時田「汚ない手を使ってでも」


 時田は焔の蹴りよりも更に下に潜り、かわしたのだ。


焔「なッ!!!」


時田「勝たなければならぬのだ」


 時田は左掌底を焔の肋に捻り込んだ。


焔「かっはッ…!!」


 焔の中でミシッという音が鳴る。まるで鉄の丸太を突き刺したような痛み。鋭く、重く、強い一撃により焔は少し後ろにノックバックしてしまう。焔のミスは二つだった。一つは、時田との距離が空いてしまったこと。二つは、痛みで一瞬だが目を瞑ってしまったことだ。


時田「このように、」ビュン─


焔「っ!?!?」ゴシャッ─



焔にこれまで喰らったことのない衝撃が襲う。それは左頬下に何やら硬く重いもので殴られたようだった。

それは、焔の視界を白い光に包んだ。あまりにも耐えられないこの一撃により顔が上に上げられてしまう。



時田「武術家にとって、敗北はあってはならぬのだ」ブン─


バキャァッ!─


焔「がはッ!!!」



次は右側頭部……衝撃で焔の顔は横に振られる。焔の思考は途切れていた。意識すらも遠退いていく─


時田「全てを失うのだ」ブン─


ドヂャァッ!!─


焔「ッッ!!!!」



次は額。何かが折れる音が体の中に響く。視界は赤くなっていた。焔の体はやっと防御体制に入る。ボクサーのように顔面を守る。しかし、時田の猛攻は止まらなかった。


時田「まだ潰えぬか」ブォン─


バギッ─


焔「ぐああ!!!」



右骨盤が砕かれる。自然と腕が下がり、顔を空けてしまう。



時田「終わりだな」ビュン─



焔の意識は飛んだ─



──────────────


元気な声「ほっむっらー!!」


荒々しい声「焔ァ!!」


優しい声「焔ちゃん」


焔(……皆、アタシは……もう……)



「焔。それでいいのか?」


焔「……親父」



「石火矢流は、そんなもんだったか?」


焔「……親父ィ……」



「それで良いのかよ!!焔!!」


──────────────────



焔「んな訳ねぇだろぉぉぉ!!!!」


時田「むっ!!」


バァァァァ!!!!!



焔の周辺が一気に爆発する。時田は間一髪で大きく後ろに飛び、逃げのびた。


焔「ゴハッ…」ビチャビチャッ



焔は口から大量の血を吐き出す。真っ赤な視界で逃げた時田を真っ直ぐ見据える。



焔「あぁ……アアアアアア!!!!まだ終われねぇんだよクソやろうがぁ!!!!!」


焔の周辺の炎は青く染まる。


時田「おぉ!良い、良いぞ!!これからなんだな!!」



やっと時田の持っているものが分かった。長く太い木の棒だった。一度茂みに逃げた時、倒れた木から取ってきたのだろう。


焔は両手を合わせる。すると、青い炎が両腕を包み込み、手に集まっていく。


焔「燃え尽きろ!!!」



両手を開ける。青い炎は鳥の形になる。


焔「飛燕(ヒエン)!!!!」



焔が技の名前を言うと、その炎は一瞬で消える。


時田「ぬおう!!!」


ジュバァァァッ!!!─



飛燕と呼ばれた技は時田を貫いた。



焔「はぁ、はぁ、」



焔の意識は消える寸前だった。


焔(やっと、やっと……)



焔「はぁ、はぁ…………はぁ……クソ……」




時田「今のはまさにギリギリだったな」



時田は起き上がり服を払った。落ちた木の棒は折れて燃えていた。


時田「赤き女よ。冥土の土産に敗因を教えてやろう」


焔「アアアアア!!!!」ボゥ



焔は膝に片手を置きながらも何とか時田に向き、もう片方の手から火を放つが、虚しくも時田は避けて向かってくる。


焔「うぐっ……何で……」


時田「そうだ。何故、技が当たらんのか」


時田は焔の下がった顔面を蹴りあげる。



焔「うぐあっ!!」


時田「フンッ!!」



バキッ─


時田の渾身の中段突きは焔の膻中(胸骨中心)に深々と突き刺さる。胸骨からは骨が折れる音が響いた。



焔「!!!!!!」



焔は目を見開き若干、前のめりになり、口からは血と肺の空気が一気に出ていった。


時田「俺には見えるし、聞こえるんだよ。もう人ではないからな」


時田は焔の顔面を片手で掴み、前に放り投げる。焔は転がり、木にぶつかって背に持たれかかるようになる。


 時田はスッとその付近に落ちていた枝を広い、焔に近づいていく。


挿絵(By みてみん)


焔「が、はっ」




時田「そしてもう一つはな、」




グチャッ─


焔の顔面を後ろの木と挟むようにして踏み潰す。



時田「俺の声に耳を傾けたからだ」


焔「」




時田の踏み潰しは何度も行われた。焔の意識はもう既に消えていた。



時田「もう死んだか」


時田が更に一撃加える瞬間だった─



「姉さん!!!!」



ビュオッ!!─


時田「ぐおっ!!!」



時田は謎の突風に吹き飛ばされた。



「姉さん!!姉さん!!しっかりして姉さん!!」


焔「……そ、、う、、?」


奏は焔を抱き抱えるようにして時田から逃げていった。



時田「風を操ったのか……」



時田は起き上がり、風に運ばれていく二人を見る。



時田「やられたな……畜生がぁ」



時田はへし折った─



────────



ピピピピピ─


海井『久里浜隊長』


龍義「……なんだ、今手が離せない」



龍義は立ち上がる神代を睨みながら海井の通信に出る。


海井『緊急事態です。焔が意識不明の重体です。早急に手当てをしなければ死んでしまいます』


龍義「……焔がやられたのか」


龍義は目を瞑り、下を向く。



神代「どうしたんだい?大変そうじゃないか」


菱村「た、隊長!!」


龍義「……撤退だ」



神代「撤退?撤退するのかい?」


菱村「隊長……」


龍義は神代を睨む。


龍義「撤退する。追ってくるか?」


神代は口をニッとして笑ってみせる。


神代「追わないよ、逃げるといい。僕らもさよならさせてもらうよ」


龍義「……菱村」


菱村「隊長、俺は、俺だけは!!一人でも!!」


龍義「菱村!!これが戦力差だ!!今は撤退するぞ!!」


菱村「く……くそ!!うわぁぁぁ!!!」



龍義と菱村は神代に背を向けて走って逃げた。



──────────



能見「何!?うーむ、焔がやられただと?」


ロッド「……」


九十九「フフフ、」



九十九はその場に座った状態で妖艶な笑みを浮かべる。



能見「うーむ、こちらは九十九を生け捕りにしている。この女だけでも連行するぞ」


海井『事は一刻も争います。九十九をその場に残して、迅速にその場から撤退を』


能見「うむ!?ふざけるな!!こいつを尋問し引き出す情報はどれほどの価値があるのか分かっているのか!!やつらとの距離を一気に縮めることが出来るのだぞ!!」


海井『それは分かっています。しかし、』


能見「しかしもへったくれもあるか!!私と五條ならこの売女を連れ出すことも充分可能だ!!」


九十九「まぁ、売女だって、失礼しちゃう」



海井『焔の一命のためにも考えて下さい。今彼女を失うのは大きい』


能見「あの女ならきっと自分の命を仲間のために捨ててくれるはずだ!五條!すぐにこの売女を!」


ロッド「もう遅い。無理だ」



能見が異様な気配に気付き、後ろを振り向く。そこには異様な雰囲気を出すあの男が立っていた。


神代「もう帰ろう、舞夜」


九十九「葉さま!!」



能見「なんだと!?」



能見は怒りのあまり神代が近くに来たことを気付くことが出来なかった。神代はさも、友人との待ち合わせをしていたように、ゆっくり歩いて向かってくる。



能見「そうはさせん!!」



能見は棍を神代に向け、立ち塞がる。


神代「うわ、危ないよ、そんなもの向けたら」


能見「ええい黙れ!!隊長がダメならこの能見がやる!!ロッド!!この私に続け!!」


ロッド「待て、能見」



能見は棍を巧みに回し神代を攻め入る。



神代「ん、」



能見「喰らえぃ!!」ブォン



能見が凪ぎ払った棍は虚しくも神代に当たる寸前に消えてしまう。


能見「く、まだまだ!!」



神代自身は何も気にせず歩こうとする。



海井『待って下さい!!能見さん!!』

ロッド「能見!」


九十九「フフフ、」



能見は怒りを露に神代に掴みかかる─



能見「敵前にして逃げるとおも─」



その言葉が最後の言葉となった。そこにはもう能見の存在は無く、ただ歩く神代の姿だけが居た。



神代「あれだけ殺気を出して、怒ってもこの一瞬で消えてしまう。人の存在や思いというのは儚いね……」



ロッド「……」



ロッドはその場から動けず、冷たい汗を一筋流す。神代はロッドに見向きもせず、九十九に近付き頭を撫でる。



九十九「フフフ♪葉さまぁ♪」


神代「さあ、立って」



九十九は何の抵抗も無しに立ち上がる。



ロッド「……拘束まで消したか」



そこで神代がロッドに気付く。


神代「あ、そうそう。龍達は向こうに行ったよ、急いでいるようだったから君も行ったほうが良いじゃないか?」


ロッド「……見逃すのか」


神代「うーん、分からないな。消えたいなら消してあげるけど」



九十九は神代の腕に抱き付きすりよっている。神代の目は冷たくロッドを見つめていた。ロッドは若干震える足で後退る。



ロッド「……その言葉に甘えよう」



ロッドもその場を後にした。


───────────────



奏「掘さん!!早く出してくれ!!姉さんが!!」


掘「な、なんでい!焔危機一髪かよい!!」



奏は自分の能力で優しく焔を漂わせ、自分が乗ってきた輸送機に連れてくる。その小型輸送機はBfの[操る]能力の掘務が操縦してきたものだ。


奏「姉さん!!姉さん!!しっかりして!!」


焔「……」


焔を座席に寝かせる。焔の意識はなかった。


掘「他のやつらはどうするんでい、」

奏「今は姉さんの命が大切なんだ!!早く出して!!」


掘「お、おおう、で、でもよう」

奏「お願い掘さん!!」



掘はレバーをガチャガチャッと動かしエンジンをかける。


掘「まぁ隊長達ならなんとかしてるか!しっかり捕まってろよ!」



一気に輸送機は加速し、BARKERSが運営している病棟へ飛んでいった。


────────────────



龍義「作戦は失敗だ。すまないが撤退をする」



龍義はメンバーが合流地点に着くと海井に連絡をとった。


海井『分かりました。今、極秘で投入した風峰と掘が焔を保護し千歳隊長の病棟へ向かっています』


龍義「……そうか、カラビニエリ本隊はどう動く」


海井『イタリア政府は息巻いて三人の制圧に向かっています』


龍義「……無駄だな。それで制圧できるやつらならもうとっくに出来ている」


海井『100人の部隊が今交戦しているようです』


龍義「そうか……俺達は帰還するとしよう。あまりにも被害が大きすぎた。焔と能見の離脱は大きすぎる」


海井『分かりました。もう既に輸送機が待機しております』


龍義「ああ、分かった」



プツリと通信を切る。やつらが居た方向をキッと睨む。


龍義「神代……次は仕留める」



メンバーは輸送機に乗ってその場を後にした。


-------------------





アリサ「焔!」


シュウ「焔さん!」


ワグ「姉さん!」


幾「焔ー!」



すぐさま焔が居ると言われている病室へ駆け寄る四人。病室では包帯をぐるぐる巻きにされ、チューブが何本も繋がった焔の姿が居た。


その姿を見た四人は言葉を失ってしまう。


シュウ「……焔さん……こんなにも……」


ワグ「姉さん、大丈夫なのか……?」



一応、焔に繋がった心電図モニターはピッピッと音を鳴らしていた。



幾「一応……生きてるみたいだなー?」


アリサ「まだ意識はないようですわ……」



そこで、焔の病室にチノと溶定と奏が入ってくる。


チノ「大丈夫だよ」


溶定「大丈夫、焔は一命を取りとめてるよ。もう少し遅れてたら危なかったけど、ね」



四人は良かったっとホッとする。


奏「姉さんのために様子を見に来てもらってありがとうございます」ペコッ


ワグ「いや、いいってことよ!俺らも姉さんのことすげぇ心配したしな」


アリサ「ですが、こんなにもやられて、焔自身大丈夫なのか心配ですわ……」


チノ「平気じゃないね」



シュウ「え、平気じゃ、ない?」


四人は不安な表情でチノと溶定を見る。



溶定「胸骨、第二肋骨から第四。そして第八から十。骨盤部の粉砕骨折。顔面骨の外傷骨折。顔面頭部強打により、急性くも膜下出血。等々細かく言ったらまだまだあるくらい外傷が酷かった。でも、幸運だったのはしっかり物があった状態での外傷だったことさ。チノ婆さんならこれくらい治すのは、いや、直すのは朝飯前だっただろうねぇ」



チノの能力は[直す]能力。治すのではなく、物を直すことが出来る。


幾「なるほどなーくっつけるのは千歳隊長にとって楽勝だった訳かー」


シュウ「で、でも平気じゃないって」


溶定「そう、もう命に別状はない。んだけど、後遺症が残ることがほぼ確実なの」


シュウ「後遺症……ですか、」


ワグ「それは、どんな後遺症が残りそうなんだ?」


溶定「脳に多大なダメージを負ってしまってるからねぇ……身体麻痺や、色の識別が出来なくなったり、性格が変わったり……色々と出てくると思うねぇ」


アリサ「そんな……」


奏「一番心配なのは……」



奏が下をうつむきながらボソッと言い始めた。


奏「一番心配なのは、姉さんが姉さんらしくなくなっちゃう事だ……」



シュウ「……」

アリサ「……」

ワグ「……」

幾「……」



あそこまで強く、勇ましい焔が為す術もなくやられてしまったこの事実は、焔に何も影響がないとは絶対にありえないことだ。四人も薄々わかっていたことではあった。


チノ「考えなきゃね」


溶定「もし、焔自身が無理な状況なら……きっと誰もそれを止めはしないさね」


そして、溶定は出口に親指を差す。


溶定「さあ、これ以上ここでグダグタ話しては焔に毒だよ。帰った帰った」



メンバー四人は言われるがままに出ていく。若干尾が引かれるような思いもあったが、後ろから溶定が押して煽って来たので出ていかざるも得なかった。




奏「………」



奏は一人黙って焔の顔を見つめる。そして、帰ろうとした瞬間だった。



ガシッ




奏の腕は掴まれる。奏は少し驚いて掴んだ本人を見た。



焔「……、……、」



そこには鬼が宿った焔が居た。目を真っ赤に充血し、怒りの表情をした焔が今にも消えそうな握力で奏の腕を掴み、何かを言っていた。


奏「姉さん、」



すぐに奏は焔の頭を抱く。すると、焔は眠るように気絶をした。奏には焔が何を言っていたのか分かっていた。



「「消えない、アタシの炎はまだ」」



焔の復讐の火は赤く燃え滾っていた─


イラストはそらとさんです。

いつもありがとうございます!

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