第三章 15話 突然の悲報
朝─いつもの時間にアラームが鳴り、いつものように準備をして食堂に向かう準備をする。ワグも起きていて、おう!行くぞ!っといつもの朝だ。そして、またいつも通り、食堂に集まるシュウ、ワグ、アリサ、幾のいつもの四人。
そして、突然そのいつもの朝は無くなるのだ。
アリサに通信が入る。その言葉にアリサは驚き、目を見開いた。
アリサ「ほ、焔が!?何でですの!?」
ワグ「ど、どうした!姉さんが何かあったのか!?」
幾「焔に何かあったのかー?」
シュウ「ど、どうしたんですか?」
アリサが通信機から手を離し、青ざめた表情で伝える。
アリサ「焔が……焔が……」
三人は息を飲む。
アリサ「焔が時田法禅にやられた……と……」
あまりにも非道な言葉に三人は言葉を失う─
その事の展開とは─
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焔「時田を見つけただと?」
伊勢原「ああ、やつはドロミーティと呼ばれるイタリアの山岳付近にいたとの情報だ」
焔は伊勢原に三階会議室へ呼ばれ、その事を伝えられた。焔の顔は険しく、今にも怒りが爆発してしまいそうな状況だった。
焔「ってかよ、何でそんな所に居んだ?その情報は正しいんだろうな?」
伊勢原「正しいはずだ。イタリアの国家憲兵カラビニエリからの情報だ。明日、朝8:15頃にドロミーティ山岳のある山小屋に現れるというんだ」
焔「何しに来んだよ」
伊勢原「我々がマークしている野良の能力者、アルベロ盗賊団のガンビーノと接触をするらしい」
焔「何でそんな情報が漏れたんだ」
伊勢原「それが、面白いことにその情報はガンビーノ本人からの密告なんだ。ガンビーノはNofaceと関わりを持ちたくないそうなんだよ」
焔「敵の敵は味方って事かよ」
伊勢原「やってくれるかい?焔?」
焔は伊勢原を敵のように睨み凄んだ。
焔「誰に言ってんか分かってんのか?アタシに時田の情報をちらつかせて乗っからねぇと思ってんのかよ」
伊勢原「ありがたい。流石は焔だ。だが、今回の任務は非常に危険だ。敵は時田だけではないからな」
焔「神代か」
伊勢原「ああ、時田の近くには神代と九十九が居る。カラビニエリの対テロ部隊も手を貸してくれるが、正直なところ成功率は低い」
焔「うちからは誰が出る予定だ?」
伊勢原「BARKERsからは龍義とオペレーターは海井、Bfから能見と菱村、Cfから五條と奏を出す」
焔は奏の名前を聞くと眉をピクリと動かし反応する。
焔「奏は要らねぇよ。足手まといだ」
伊勢原「いや、必要な存在だ。奏は焔が思っている以上に成長しているぞ?」
焔「ああ?てめぇが見ているより長く近くアタシの方が奏の成長を見てんだよ。まだ早ぇよ、よりにもよってNofaceの頭とやりあうなんてよ」
伊勢原「焔……過保護にも程があるぞ」
焔「んだよ、何も過保護じゃねぇよ。っていうか、てめぇが買いかぶり過ぎだ」
焔はどんどんイラついていく。伊勢原は困った表情をしつつも折れる感じは無かった。
伊勢原「きっと奏が居たら良かったと思える状況になる。絶対だ」
焔「あ?絶対呼ぶなよな。呼んだら奏ブッ飛ばして帰らせるからな」
焔はそう言葉を吐き捨て出ていった。
伊勢原「はぁー……」
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任務当日─
BARKERsが用意する小型人送飛行機に乗り込む焔。既に他のメンバーは乗り込んでおり、焔は数十分の遅刻をしてしまっていた。
ロッド「遅刻だぞ焔」
気難しそうな顔をしたロッドが焔に注意をする。
「うーむ……焔の遅刻癖は治らんなぁー」
「龍義隊長が居るんだぜ!?気合いを入れろよ気合い!!」
同じく気難しそうだが、絶対腹黒いだろうと思えるような面をしてるのが能見薬馬。棍という長い棒をいつも携えている初老の男。もう一人の暑苦しそうな二十歳前後の男は菱村剛。基本アロハシャツを上に着ている。気合いとやる気という言葉が大好きな男だ。
焔「ああ?朝は寝てるもんだろうがよ。逆にお前らが早えんじゃねぇか?」
そう悪態をつきながら周囲を確認して奏が居ないことを確認する。
龍義「奏は居ない。安心しろ焔」
焔「は、別に心配なんざしてねぇっつうの」
龍義の言葉に若干、ドキりとする焔だがそれを隠すよう強い態度で言い捨て席に座る。龍義は焔が座ると、改めて今回の任務の重要性を語る。
龍義「いいか、分かっていると思うが、この任務は今後の人類の未来がかかっている。それ故に危険だ。敵はあの神代と時田。神代には何も触れさせるな。時田には不要に近付くな。汚い手を使っても構わん。何としてでも仕留める、Nofaceを終わらせるぞ」
菱村「オーーウ!!!!」
能見「うむ」
ロッド「……」
焔「ったりめぇだ」
焔(やっとだ。やっと時田を殺れる。皆の敵を討てる、ぜってぇ殺す……)
焔「……燃えカスも残さねぇ」ギギッ
焔は歯を強く噛み締めながら言う……焔のその怒りに満ちた姿は鬼が宿っているようだった。
龍義「では、行くぞ」
こうして、討伐メンバーはイタリアのドロミーティへ出発したのである。