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第三章 14話 ダンとエミリア

─────────────────────


龍義「~以上が今回の任務だ。継承式から三日前までは招待された人物しか入国は許されない。待機班はその前までには入国して悟られぬよう拠点を作り、式が行われるファリハー島にて待機してくれ」


アリサ「分かりましたわ!」

ひなび「は、はい!」

剣崎「へーい」

走川「了解した!」

百々「分かった」



龍義「潜入班は、当日19:45出港の便に乗ってくれ。リスト家からの招待状を忘れずに持っていくように頼むぞ」


ダン「ああ、任せてくれたまえ」

エミリア「はーい!」

シュウ「分かりました!」


龍義「もう一度言うが、今回の任務はどう転ぶか予想がつかない。最悪な事態になりそうながならばすぐにでも報告。即撤退もしても構わない。お前たちの命は簡単には失いたくないからな」


 エミリアは得意気ににこりと笑い、手の平を胸に置き、


エミリア「守るのは私の専売特許なの!皆の命は私が保証するわ!」


ダン「流石エミリア!心強いよぉ!」


 二人はキャッキャとハグをする。


剣崎「はぁ……取り合えずは解散だな。ひなび!また近くになったら連絡くれ」


ひなび「は、はいぃ!しっかりやりますぅ!」


ダン「さあ、シュウ君!そうと決まれば、」

エミリア「一緒に準備しましょう!」


シュウ「え、ちょ、」


─────────────────────


 っと言う感じに最初のブリーフィングは終わった。その後、すぐにシュウはダンとエミリアに二人の部屋に連れていかれた。


 シュウはエミリアに椅子を出され座らされる。二人はキャッキャと楽しそうに一台のタブレットを見て話していた。


エミリア「やっぱりこれぇ?ダンはこれが良いよー♡」


ダン「エミリアー♡僕もそう思ってたんだぁー♡」


シュウ(なんだこれ)



 この一人だけ取り残された状況にそろそろ耐えられなくなりそうになるシュウ。冷たく、白い目で見続けていると、ダンはそれに気付いた。


ダン「おーごめんごめん!ちょっと僕らがラブラブ過ぎたね。別に君にエミリアと僕のイチャイチャを独り占めしてほしくて呼んだ訳ではないんだよ。ね、エミリア?」


エミリア「そうそう!この状況は少し贅沢だけど、その理由で連れてきた訳ではないわ?」


シュウ「……じゃあ、用って一体なんでしょうか」


ダン「それはー?」

エミリア「これよー!」



 バーンっとタブレットを見せられる。画面にはタキシードや豪華なドレスなどが映っていた。


シュウ「あ、これって、継承式当日に着るやつですか?」


エミリア「そうそう!そうなの!任務でも式典は式典!しかもこの式典には数々の高名貴族が集まるの!いつもの私服で行くなんて失礼極まりないわ!」


ダン「やっぱり、しっかりキメていかないとね!ダサいと女の子に嫌われるぞぉー?シュウ君?」ニヤニヤ


シュウ「んー、自分、スーツで大丈夫ですよぉ……タキシードとか着たこと無いし……っていうか、スーツとタキシードってそんな変わりませんよね?」


エミリア「Oh!」

ダン「Oh la la……」


シュウ「???」


 エミリアは口に手をやり、ダンは肩をすくめわざとらしくシュウの発言に反応する。シュウは馬鹿にされてると感じ、少し不満な顔をするが、その後、フフフっと笑うエミリアとダンにつられてシュウもえへへっと笑ってしまう。



ダン「まぁ、仕方ないね、シュウはまだ高校生でタキシードなんて着る機会なんて無かったろうしね!」


エミリア「ごめんなさいね?ついつい笑ってしまったわ!」


シュウ「ははは……無知で恥ずかしいです……」


ダン「いやいやいや、人には知らないこともあるさ。……まぁ、そのスーツというのはシュウ君が今着ているものだろう?」


シュウ「はい。一応BARKERsに入ってからずっと着ていますね……」


エミリア「一応BARKERsの正装はスーツですものねぇ、まぁ服を選ばなくて済むから楽だけど」


ダン「ま、僕たちはいつまでも私服だけど。ね!エミリア!」


エミリア「ねぇーダン!今日も格好良い身だしなみよ?」


ダン「ありがとうエミリア!君も全てが愛らしいよ?」


シュウ「……あのー……」



ダン「あーそうだったね、スーツは仕事用の服な訳だよ。仕事感が抜けないのさ、でもタキシードは違う。これは式典や宴会とかに着ていくのさ。だからスーツを着てこんな大きな式典に出た時、端から見たら一人だけ悪い意味で目立つだろうね」


シュウ「なるほど……周りがそうだったら確かに浮くかもですね……でもパッと見てスーツだと分かるものなんですか?」


エミリア「勿論よ!ここに来る人はただの貴族じゃないのよ?鼻で笑われるわ!」


シュウハ「じゃあ……タキシード買わないと駄目なんですね……高いイメージがありますが……」



ダン「あーシュウにはこれ着てもらうよ?」



 ダンはタブレットを右にスライドして指を指す。



シュウ「しゃ、300万!?そ、そんな高いものを!?」


ダン「ん?当たり前だろう?これくらいは払って当然だ。見てくれ、僕とエミリアの礼装はもっとするぞ?」


 ダンは自分達が買おうとしているタキシードとドレスの画像を見せる。シュウにとって、これがどうして、これほどまでに高額になるか理解が出来なかった。


ダン「ま、シュウはまだこのような服を着なくて良いよ。緊張する任務な上に高額な礼装なんて更に緊張してしまうだろうしね」


エミリア「まぁ!ダン優しい!流石ね!」


ダン「ああ、エミリア。でも君の優しさには負けるよ?」


シュウ「……でも、まだそのタキシードを買うお金が……」


ダン「ん?何を言っているんだい?僕が買ってあげるに決まってるじゃないか」


シュウ「え!!そんな!悪いですよ!」


ダン「まあ、お金は腐るほどあるんだ。文字通り腐るほどね、ね?エミリア?」


エミリア「フフフ、そうよ?私達の所持してるお金は腐るの。お金は消耗品だからね!」


シュウ「凄いなあ……これが貴族かぁ……」



ダン「じゃあ、このタキシードを買ってあげるよ!シュウのデータを仕立て屋に送って貰ってオーダーメイドで作るからね」


シュウ「なんか、そこまでして貰ってすいません……」


ダン「Non Non!そんな言葉は求めてないよ!ほしい言葉はMerci Dan! Je t'aime!これだけさ!」


エミリア「Je t'aime! Je t'aime! Dan!Je t'aime!!」


シュウ「……め、メルシー……ダンさん、」



 そこでシュウはちょっとした疑問が過る。



シュウ「あ、そう言えばダンさんとエミリアさんはどんな関係なんですか?もう結婚とか、」


ダン「結婚!?」

エミリア「結婚!?」


シュウ「け、結婚……」


 ダンとエミリアのあまりの食い付きに気圧されるシュウ。


エミリア「け、け、結婚だなんて、ね、ね?ダン?」


ダン「そ、そ、そうだよシュウ。け、結婚してるような仲だなんて、」


シュウ「え?結婚してないんですか?」


ダン「結婚したいよ!!」

エミリア「結婚したいわ!!」


ダンとエミリアは二人で声を自然と合わせてシュウに強く言ってしまう。


シュウ「そ、そうなんですか、なんとなく夫婦なんだと思ってました」


ダン「ま、まぁ、それに近いけどね……」


エミリア「私とダンは許嫁の関係なの、約束はしてるけど、まだ夫婦ではないわ」


シュウ「へぇー、許嫁……なんかアニメとか漫画ではよく聞くんですが、本当にあるんですね」


ダン「まぁ……僕がまだ幼かった頃のパパン一族は爵位も低くて貴族の中では爵位が低かったんだ」


エミリア「そうね、そこでハートリー家と昔から交流が深かったパパン家は幼かった私がダンと許嫁として合わされたって感じね」


シュウ「そうなんですね、幼馴染で……」


 そこでシュウは美果の顔が過り、言葉がつまる。ダンとエミリアは不思議そうな顔でシュウを見て止まる。


シュウ「あ、えっと、幼馴染で、好き同士になって、えっと、色々羨ましいです」


ダン「羨ましいだって!エミリア!」


エミリア「そうね!ダン!私と貴方は周りが羨ましがられるくらい、最高なフィアンセなの!」


ダン「シュウは見る目があるぞ!」

エミリア「シュウは良い目をしてるわ!」


 ダンとエミリアは満面な笑みでシュウを撫でる。


シュウ「わ!あ、ありがとうございます」



 この日、シュウはダンとエミリアの愛の深さを知る。だが、少し昔を思い出し複雑な気持ちも芽生えていた。


───────────────────


美香「私…私、あなたが憎い…憎いよ!!」



────────────────────




シュウ(……美果、)



 幸せそうな二人を眺め、一人、寂しく暗い心がシュウの蝕んでいく─



──────────────────


シュウ「待ってくれ、、待ってくれ美香!!俺はお前の事が好きなんだ!!愛してるんだ!!」


──────────────────



シュウ「……愛、」


ダン「ん?」

エミリア「どうしたの?シュウ?」



シュウ「何で、何でここまでずっと愛してるんですか?愛って何なんですか?」



 ダンはにこりとして、すぐさまシュウの問いに答えた。


ダン「何故ここまで愛してられるのか、愛とは何か、それはね、僕なりに二つあるんだよ」


シュウ「二つ?」


 エミリアも興味深そうにダンを覗く。


ダン「まず一つ、その子の嬉しそうな顔が見たいと思ってしまうこと。その子の嬉しさをずっとずっと近くで作りたい、会いたいと恋い焦がれる。起きてる時、寝てるとき、何している時もその顔が欲しい。だからこそ、その子の為に何でも出来るようになるんだ」


シュウ「……もう一つはなんですか?」


ダン「もう一つはね……」




ダン「その人の悲しい顔を見たくないって心から思った時さ。もうその時には愛になっているんだ」


シュウ「……悲しい顔を見たくないと思った時……」


エミリア「流石はダン!私もダンの幸せそうな顔が見たいし悲しい顔をさせたくないわ!」


ダン「エミリア!僕たちは愛し合ってるから当たり前さ!」


エミリア「ダン!!」


ダン「エミリア!!」


シュウ「……ありがとうございました。俺、帰りますね……」


ダン「あ、そうかい?じゃあまたね!」


エミリア「タキシードはしっかり私達が手配しておくから楽しみにね!」


シュウ「……」



 シュウは無言のままその場を離れていく。


 

 バタン─



ダン「どうしたんだろうね、お腹でも減ったのかな?」


エミリア「あ、私もお腹空いたわ!食べに行きましょ!」


ダン「うん!行こうかエミリア!」



---------


シュウ「……」



 自室へ向かうシュウ。気持ちは冷たくなり、自然と目頭が熱くなる。歩きながら涙を拭き、頭の中では美果の数々の言葉がこだまする─


─────────


美香「私…私、あなたが憎い…憎いよ!!ねぇ何で?何で殺したの?何でトモを殺す必要が有ったのよ!!」



美果「ありがとうね、シュウ」


─────────



シュウ「俺だって……俺だって、、俺だって!悲しい顔……見たくなかったよ……っ!」




 まるで自分の過去を噛み潰すかのようにそう言った─

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