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第三章 12話 黒のウィッセン


シュウ「暗……殺……」


 シュウの頭の中が苦悩にまみれる。他のメンバーもこの言葉を聞き、逆上して声を荒らげた。



アリサ「そ、そんな!私達に暗殺の任務なんて出来ませんわ!」


走川「BARKERsは殺し専門では動かないという話では無いのか!?それか余程の暴君なのかねその王子とやらは!!」


 龍義は表情も変えずに同じ冷たさをも感じるトーンで言う。


龍義「まぁ待て。まだ頼まれただけだ」


ダン「僕達が活躍……王子……っと言うことは、爵位……貴族達が関わるんだね?誰に任務を頼まれたんだい?」


 

龍義「……ウィッセン・フォン・リスト本人にだ」



ダン「っ!?」

エミリア「な、なんで!?」


 ダンとエミリアは驚きを隠せない様子だった。っと言うより、シュウだけは事の重大性に気付いていない様子だった。ウィッセンの事は走川からマフィアと絡みがあると聞いていたが、深く知らないため他のメンバーよりは驚きはしなかった。



ダン「リスト家からの依頼、王子の暗殺、そしてこの次期……まさか……王位継承を潰すつもりか!!僕達にそれをやれと言うのか!?」


エミリア「黒のウィッセンとのパイプを作るってことなの!?」


龍義「待て」



 龍義が間を入れる。各々、不満、不安、怒りや悲しみ、戸惑いが、籠る表情を浮かべ龍義の言葉を待つ。



 龍義の言葉は─



龍義「言うが、今回の任務に暗殺は無い」



 周りはホッとして少しだけ肩の力が抜けた。しかし、ダンとエミリアの顔は複雑でダンは口を挟む。



ダン「ならば話を蹴ったと?何をされるか分からない。やつの恐ろしさを知らないんだ君達は」


龍義「心配するな。やつは何も出来ん。任務は受けたからな」


剣崎「どういうこった?」



龍義「やつは確かに暗殺を提示してきたが、王子を殺したり、王位継承を潰すのが目的ではなかったからだ」


エミリア「じゃあ……何が目的なの?」


龍義「やつの目的は自分が王になることだ」


ダン「何!?」

エミリア「はぁ!?」


走川「ウィッセンが王に?一体どこの王だというんだ?……まさかとは思うが、」


 

龍義「そのまさかだ」


 シュウ以外のメンバーは絶句する。しかし、シュウは


シュウ「????」


 シュウは話に置いてかれてよく分かって居ない。ウィッセンがどこの国の王になりたいのか、王子とは誰なのかも分からない。アリサに目線でヘルプを送る。アリサはそれに気付き、場を落ち着かせた。


アリサ「一旦落ち着きましょう?シュウ様はまだBARKERsに入って日が浅いですわ。裏の世界の話や貴族の話はついていけないと思いますの」



龍義「ふむ、そうか、すまなかったな。ならば、見てもらえるのが一番早いかもしれんな」


シュウ「見る、ですか?」



 龍義は置いてあるリモコンを手に取り、皆の後方のスクリーンに向けてボタンを押す。するとスクリーンが落ちて映像が流れる。それは龍義とウィッセンが応接室で会話をしている映像だった。



─────────────────────




ウィッセン「あ、ああ。こ、これは一大事なのだ。」


龍義「ほう。」



 龍義は腕を組み、眉間に皺を寄せ、背もたれにもたれ掛かる形で聞いていた。ウィッセンの方は額に汗をたれ流し、眉毛はハの字で今にも泣き出しそうな様子だった。



ウィッセン「国が動く程の、大事な任務だ。君たちならば、隠密に終わらせてくれよう。」



龍義「さっさと言え。」




ウィッセン「」ゴクッ



 ウィッセンは生唾を飲む。




ウィッセン「王子を、王子を暗殺してほしいのだ。」


龍義「断る。自分達の手で何とかするんだな。その黒い人脈を駆使してなんとかできるだろう」



 龍義はウィッセンに冷たく言い放つ。


ウィッセン「我の手では、何ともなりそうもないのだ」


龍義「何故だ」


ウィッセン「……我は、今回の王位継承でヴァリネシアの王にならねばならんからだ」


龍義「ヴァリネシアの王にだと?お前がか?」


ウィッセン「ああ。現王ヴァリアント・フォン・リントブルムが次期王に選ぶのはイラフアルドかリストの家系からと決まっているのだ」


龍義「何かお前と関係性があるのか?」


ウィッセン「大いにあるともっ!」


 ウィッセンは片手で胸付近をぎゅっと掴み、怒りと憎しみを込めた表情で訴えた。



ウィッセン「ヴァリアントは、リスト家の養子だったからだ!!あの裏切り者がっ!!ヴァリアントを助けたのはこのリスト家だ!!なのに我では無く、存在するかも分からんと言われている、イラフアルドの小僧を王に選ぶなど!!」


龍義「……なるほどな、そういうことか」


 龍義はサングラスをずらしウィッセンを睨む。



龍義「お前は我々を勘違いしている。殺し屋でも傭兵部隊でもない。分かるか?我々の能力は簡単に人を殺すことが出来るからだ。貴様の野望など、俺から言わせてみれば下らん。さっさと帰るがいい」


ウィッセン「……能力者が関係していても手を貸してはくれぬのかね?」



龍義「なんだと?」



 ウィッセンは悪そうにニヤリと笑う。


ウィッセン「確信しているのだ。王子は異端な力を持っている」


龍義「何をほざく。存在するかも分からないとさっきまで言っていただろ」


ウィッセン「それがおかしいのだ。隠すということはきっと何かある。私の人脈や権力を使っても一向に不明なのだ。考えてみろ、不明な者を王に選ぶなぞおかしいだろう」


龍義「何故、能力持ちだと思うんだ。その根拠はないだろ」


ウィッセン「ああ、根拠はない。が、おかしいところはいくつかある」



 ウィッセンは書類をバサッと胸ポケットから出す。それを壊れた机に広げて龍義に見えるようにした。



ウィッセン「見てくれたまえ。ある時期になるとイラフアルドの経済力が爆発的に上がっている。それからずっとだ。少しも落ちずにずっと上がっている。あり得るかね?」


龍義「……」



 龍義はじっと見るだけで言葉を発しない。



ウィッセン「昔までイラフアルド家は石油の輸出がメイン家業だった。今となっては貴金属や鉄工がメインになった。ずっと、ずっと右肩上がりでな」


龍義「……」



ウィッセン「見たことがあるか?ヴァリネシア王国を、金銀財宝で輝くあの町並みを!普通では無いなのだ!」


龍義「普通では無いか、まぁ良い。お前の言い分はその根拠のなく、ただの憶説に過ぎん存在するかも分からん、イラフアルド家の王子を殺せと?」


ウィッセン「イラフアルド家の王子が能力者だったら……やってくれるかね?」



 龍義はウィッセンの思惑に勘づき、眉間に皺を寄せ睨んだ。


龍義「貴様……元からそういうつもりだったのか」



ウィッセン「分かってくれましたか、いやぁ、ありがたいですねぇ」ニヤリ



 龍義はグッと眉間に皺を寄せた後、すぐに解き眼を瞑る。



龍義「良いだろう。やってやろう、ただし、殺しではなく、だ。」


ウィッセン「それで構わない、よろしく頼むぞ?報酬は期待していたまえよ?」



 ウィッセンはニヤリと笑い、いやらしい目で龍義を見た後、ニヤついたまま帰っていった。



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