第三章 11話 不穏な始まり
今日は地下のトレーニング室に来ていた。フランクから、やはりどうしても達成してほしいことなのです。と念押しされて渋々ある人に声をかけたのだ。
フライト「愛しているか今日も空を!!」
シュウ(あー憂鬱だ……)
同じ系統の能力、[飛ぶ]能力を持つフライトから能力のいろはを聞いてくるよう言われたのだ。
フライト「待っていたぞ若き空の友よ!共に空について語ろうではないか!」
シュウ「えっと……語りたいのは山々なのですが、今日はフライトさんの能力について聞きたくて……」
フライト「そうかそうか!何で私が空を愛しているのか聞きたいんだな!」
シュウ「飛ぶ能力について聞きたいんですが……」
フライト「何故なら私は空の番人だからさ!愛する空を汚させはしないのだ!」
シュウ「どうやって飛ぶ能力を使ってるのかなぁって……」
フライト「きっと私は空に愛されたのだ。私は空を愛す。まさに相思相愛!空は私を選んだのだ!!」
シュウ「…………」
フライト「風は私を運び、雲は私を支える。太陽は私にほほ笑み、空は私を包み込むのだ」
シュウ「」
フライト「雨の日は私の全てを洗い流し、雪の日は綺麗なプレゼントをくれる。雷は私に説教だ。fly in the skyの時は気を付けろとな!」
シュウ「もうダメだ」
シュウの心は折れた。話が通じなければ意味がない。一礼をしてシュウが帰ろうとした時だった。
フライト「待て待て待て、待ちたまえ同志よ。何か聞きたい事があったのだろう?」
シュウ「え!?」
シュウはあまりにもまともな事を言ったフライトに驚き振り返った。
フライト「君の問に答えようというのだ。そう、私が離陸する前にね!さぁ早く!takeoffは待ってはくれんぞ!」
シュウ「あ、えっと、その、能力を!能力のレベルを上げたいんです!その為にフライトさんの飛ぶ能力を教わりたく!」
シュウはこのフライトがまたいつおかしくなるか分からなかったため、焦って言葉を繋げていく。フライトはそんなシュウの問いに歯をニカッと出して答えた。
フライト「ならば簡単!!飛んでみるがよい!!」
シュウ「……飛んでみる?ですか?」
フライト「そう、そうさ!私は飛ぶと言われたものは何でも体験した!経験した!身に削り、味わった!!君も空を愛するのなら追求するがよい!!きっと君も飛ぶぞ!!」
シュウ「……なんか若干怪しい勧誘みたいに聞こえますが……でも、それでこうやって飛べるようになった訳ですよね?」
フライト「無論だ。結果は飛べなかった」
シュウ「飛べなかったんかい!!」
フライト「ああ、飛べなかった。どれも飛んだようになるだけだったよ。だがね、それで良かったのさ。あれらの記憶は今の私を空の守護者にしてくれたからね」
シュウ「番人じゃなかったの?」
フライト「おっと、おっとっと!?もうこんな時間だ!今すぐtakeoffしなければお客さま達が待っている!!旅客機に遅延はナンセンスだ!!急げ!!」
シュウ「」
フライトは真上を向き、腕をピンと開く。シュウはこの展開についていけなく、目を点にすることしかできない。
フライト「空は味方!!敵じゃない!!takeoff!!!」
そう言ってフライトは空高く飛んでいった。
飛んでいったフライトを見て、言われた事を思い出し、自分なりに考えてみるシュウ。
シュウ「うん。分かりそうで……分からない……」
シュウがフライトの言う意味を考えている時だった。
ピピピー ピピピー
シュウの通信が鳴る。相手はアリサだった。
アリサ『シュウさま!』
シュウ「アリサさん!どうしました?」
アリサの声色は何か必死な感じが受け取れた。
アリサ『急を要するのです!応接室に来てほしいのですが、来れるでしょうか?』
シュウ「急を要する?何か有ったんですか?」
アリサ『龍義さまからのご連絡でしたの。恐らく……指名任務だと思いますわ』
シュウ「指名任務……来たか……」
シュウはバンシャサーカス団の時の過酷さを思い出す。そして、背中が冷たくなる感覚がシュウの体にジワジワ出てきた。
アリサ『私も呼ばれましたの。もし、指名任務なら私も同行することになりますわ』
シュウ「……今すぐに行きます」
アリサ『お願いしますわ』
通信が切れ、シュウは息をふぅーっと吐き切り、グッと前を向く。頬を両手でパシりと覆い、気合いを入れる。
シュウ(もう俺は足手まといなんて言わせない!)
シュウ「よし!行くぞ!」
急いで応接室に向かっていった─
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応接室─
応接室の前に立つシュウ。トントントンっとノックし、名告る。
シュウ「芦屋修二です」
龍義「入れ」
龍義の一言を聞き、扉を開ける。
シュウ「失礼し、」
「俺も来たぞぉぉぉぉ!!!」
シュウ「ま、?グアッ!」
シュウは走ってきた謎の男に後ろから抱え上げられる形で入ってしまった。
アリサ「走川さま!?」
ひなび「か、可哀相ですよぉ」
百々「バカみたい」
シュウを後ろから担ぎ上げた者は走川だった。そして、応接室のソファーにはこの三人が座っていた。龍義は少し奥の社長椅子のような所に座って腕を組み、走川を見ていた。
走川「ハッハッハ!久しぶりの指名任務!やる気がモリモリなのだ!」
シュウ「そ、走川さん!恥ずかしいから下ろして下さいよー!」
走川「このまま走っていきたいくらいだな!」
龍義「走川、そろそろ下ろしてやれ」
走川「むむ、団長がそういうならば下ろそうか」
龍義の冷静な注意に走川はシュウを空いてる席に下ろす。
シュウ「走川さん……今度からは優しくお願いします……」
走川「ハッハッハッハ!すまないすまない!それほどワクワクしているのだ!」
シュウ「はぁ……」
シュウは頭の中を落ち着かせて周りを見た。
シュウ「やっぱ……指名任務なんですね……この五人でですか?」
龍義「いや、まだ来るはずだ。今回の任務はいささか厄介だからな」
百々「厄介……」
アリサ「危険な任務……ってことですわね」
シュウ「」ゴクッ
シュウは生唾を飲む。龍義が危険な任務というのはとても重く感じたからだ。
走川「さて、ではその他の助っ人はいつ頃来るんだ?」
ひなびは左下から生えている腕につけた時計を見て言う。
ひなび「そ、そろそろかな?」
急にドアがバンッと強く開く─
「この僕が出るんだ!皆の衆!今回の任務は楽勝だぞ!」
「ふふふ♪格好良いー!!ダンー!!」
「ま、そう言うことだ。俺達が速攻で片付けてやるぜ?」
扉前に立っていたのはBARKERsの誇る戦闘のプロフェッショナル、Bfの三雄だった!
走川「これは心強い!」
シュウ「なるほど!だから、ひなびさんも居るんですね!」
ダン「僕達を呼ぶと言うことは簡単な仕事ではないのでしょう?龍義隊長」
龍義「ああ、その通りだ。三人も適当な席に座ってくれ」
三人は席に座り、全員は龍義の言葉を待つ。
龍義「今回の任務はダンとエミリアの活躍に期待したい。」
エミリア「まあ!!私達が更に活躍が出来るところね!?ダン?私達はヒーローよ!」
ダン「ああ、エミリア!僕達のステージ!僕達の物語!僕達の愛が成すミッションな訳だね!」
剣崎「あーうぜぇうぜぇ。んで、どんな任務なんだよ」
龍義は眼を瞑る─
龍義「実は、王子の暗殺を依頼されたんだ」
場は凍りついた─