第三章 5話 龍と商の仲
二日が経った。フランクからの連絡はまだ来ず、少し不安な思いが有ったが、気にしないようにこの日は仕事をしていた。たまに自室でパソコンを借りてやっていたが、今日は、二階事務室にある、デスクワークルームという所での勤務だ。内容は、簡単なデスクワークをしたり、オペレーターに書類を渡しに行ったりするのだ。17の自分でも出来るようアリサさんやSfの先輩方が親身になって教えてくれた。
その仕事の途中、オペレーター長の海井さんから通信が入った。
海井「芦屋。書類をファックスで送るから、その書類を、龍義隊長に持って行ってちょうだい。内容は重要書類だから変にグシャグシャにしたりしないこと。」
シュウ「はい!分かりました!ただちに持っていきます!」
シュウは送信された書類を大きめな封筒に入れ、汚れたり折れないよう、慎重に持っていった。
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七階久里浜龍義の自室前─
トントントン
シュウ「Sfの芦屋修二です。海井さんに頼まれて書類を持ってきました。」
龍義「入って良いぞ。」
シュウ「失礼します。」
シュウは中へ入る。すると、そこには、龍義も居たが、Cf隊長の伊勢原も中に居た。龍義の自室は、広く、エグゼクティブデスク(社長机)のような大きな机があり、ソファーと長い机が並んであった。そして、エグゼクティブデスク付近には本棚のようなものが置いてある。龍義はデスク側の椅子に座って、伊勢原はソファーでくつろいでいるように見えた。
伊勢原「おお、すまないね、私はこのへんにしておこうか。」
龍義「いや、大丈夫だ。構わんよ。」
シュウ「あ、えっと、失礼します。」
シュウは龍義へ持っていくが、龍義も立って近付き、シュウから書類を貰った。
シュウ「すいません、何か重要な話でもしてたようで……」
その発言に笑う伊勢原。フッと龍義も笑い、シュウは、はてなが頭に浮かぶ。
龍義「ただの昔話をしていたんだよ。商と俺は長年の仲なんだ。」
シュウ「あ、そうだったんですか!?」
伊勢原「ハハハハ!そうだよ?私と龍は昔からの仲で沢山の困難を乗り越えた仲なのさ!」
龍義「商は昔から頭が切れ、信頼できるやつだ。だからこそ、能力を持たない者が多いCfを任せられる。」
伊勢原「まぁそう持ち上げるな。天狗になって
しまったら使い物にならんぞ?」
龍義「それは困るな。」
そう二人は言い、笑い合っていた。本当、見ていると親友のように仲が良さそうで、いつも眉間に皺がより、難しそうな顔をしている龍義がここまで楽しそうにしているのも、仲が深いからなのだろう。
伊勢原「それで、今回のその書類はどんな内容なんだ?」
龍義「ふむ、」
龍義は中を取り出しペラペラとめくる。
龍義「なるほど、、どうやら、要警戒すべきノラの能力者リストのようだ。」
伊勢原「ほうほう、どれどれ、」
伊勢原は立ち、龍義の隣に行き、内容を見る。
伊勢原「確か……この五人組は解散、この二人組は焔が壊滅させ、この組織はまだ中立って形になっているな。」
龍義「今、一番警戒すべきなのは、」
伊勢原「私は天暝教だと思うね。」
龍義「そうだな。子供をさらい、殺しているという噂もある。なんとかしないといけないな。」
シュウ「天暝教ですか?」
シュウには聞いたことが無い名前だった。その物騒な説明を聞き、ついつい二人に聞いてしまった。
龍義「そうだ。シュウにも見てもらっても良いかもしれんな。」
龍義はシュウに見せるように書類を向けた。
そこには大きな杖を持つ僧侶のような人物が載っていた。
伊勢原「この時代にこんな格好して、この国の異を唱えて若者達を先導する宗教なんて怪しすぎると思わないか?」
シュウ「何かの宗教団体なんですか?」
龍義「まぁ、確かにそうだ。天暝教と呼ばれている。先導者は雲村惣泰と言う者で、能力は、照らす能力という情報だ。その持っている杖の頭を大きく照らし、神の御言葉だ、と言って反政府行動を取り続ける。子供をさらっているという情報もある。団員を潜伏させ更に情報を探らないといけない。」
シュウ「怪しすぎますね……天暝教…覚えておきます。」
伊勢原「後、気を付けなければいけないとしたら、流れの殺し屋だろうな。」
シュウ「流れの殺し屋……」
龍義「そうだ。名前はグラナ・ディーフェンベイカー。こいつは非道な殺し屋だ。今はフランクが追っているようだ。情報を後で聞かなければならないな……。」
ピコーン ピコーン
そこで、シュウに通信が入った。
シュウ「あ、あ!すいません!通信が入ってしまいました!」
龍義「おお、構わんよ。こちらも引き止めてしまってすまなかったな。今日覚えたことは覚えておいてくれ。」
伊勢原「頑張るんだぞ!シュウ!」
シュウ「はい!ありがとうございました!失礼します!」
バタン─
シュウは勢いよく出ていった。
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シュウ「はい、どうしました?アリサさん。」
アリサからの通信だった。
アリサ『今、フランクさんから連絡がありましたわ!明日、10時辺りに教育室に来てほしいそうです!』
シュウ「あ、ありがとうございます!分かりました!」
アリサ『はーい!ではまた!』
通信が切れ、シュウは小さくガッツポーズをとる。
シュウ「よし!」
明日は初めてフランクとの訓練!シュウは心を踊らせ、廊下を走って事務室まで戻っていった─