海ノ章 閑話5 決着?
ビーチバレー対決は激戦を向かえた。B.B.Bが盛り返し、負けじとBARKERsも点数を取る。結果8-8になり、見ているアリサと奏は手に汗握るほどの熱い戦いになっていた。
カノンと焔はまだ平然と動けているが、レベッカと幾は大量に汗を流し、息を切らしていた。そこで、幾は何か思い付いた様子でニヤリと笑う。
幾(今こそ好機って感じかなー……勝つためにはこれをはさむしかないよなー。)
幾はまた綺麗なサーブを打った。レベッカがレシーブにかかる瞬間。
「ピピピーー!!!!!!」
レベッカ「え、何、何なのよ?」
大きな警告する笛の音が鳴りレベッカは動きを止める。ボールは地面に落ちる。しかし、アリサと奏は逆に驚いた表情でレベッカを見つめていた。
レベッカ「は?え?さっき笛の音が、……っ!!あんた!!」
レベッカは幾を見るとニヤニヤ、してやったりと笑っていた。
レベッカ「はぁ!?良いの!?能力使っても!?」
レベッカはアリサに抗議する。アリサはうーんと少し考えた後に、
アリサ「そう言えば能力の禁止はしてませんでしたわね。しっかりとビーチバレーが出来ていれば問題無いと思いますわ!」
レベッカ「なんなのよそれ!!最初に言いなさいよ!」
幾「ルールの穴を狙ってやったぞー」ニヤニヤ
レベッカ「うぐぐぐっ!じゃあこのコートを海に沈めてやるわ!!」
アリサ「そんなことしたらビーチバレーじゃなくなってしまいますわ!」
焔「おーい、レベッカ。焦ってんのかぁ?」ニヤニヤ
レベッカ「はぁ!?はぁ!?うるさいうるさい!こ、こっちも能力を使うだけよ!いくわよ!カノン!」
カノン「……命令は受けない。……好きにヤルワァア?」ニタァ
幾「ふぅー、よしよーし!準備いいかー?次行くぞー!」
奏「ピーー!!」
ぶれないサーブを打つ幾。飛んでいく所はやはり後方のレベッカ。レベッカはレシーブでカノンに渡し、カノンはアタックを仕掛ける。
バシィィン!!!─
バヂィィン!!─
もうこの戦法に慣れたと言わんばかりに焔がレシーブで後方の幾へ渡す。
幾「ほいほーいーやっちゃえ!焔!」
トスで前衛の焔へ。そこで焔は高々と飛び上がる。
焔「じゃあ─これもありだろ!!」
バジュュー!!!─
焔はジェットの感覚で手の甲から炎を吹き出してアタックを繰り出した。さながらゴムの大砲。轟音を鳴らしながら飛んでいくであろうボールは一瞬で……跳ね返り、焔、幾ペアのコートに落ちた。
焔「ちっ!!」
焔は相当悔しそうにカノンを睨み付ける。そう、カノンが顔面でブロックしたのだ。顔面で。
鼻血を垂らし呆然と尻餅をつくカノン。
レベッカ「大丈夫なの!?カノン!」
カノンは黙ってスクッと立ちあがり尻をはたく。その後、左手の甲で鼻血を拭い、じっと見たあとにそれを舐めた。
焔「あん?まさか棄権とか言わねぇよな?」
アリサ「焔!流石に謝る所だと思いますわ!」
カノン「フフ、フフフフ…」
カノンは腰を少し曲げ下を向き不気味に笑い出す。ゆっくり腰を戻して真っ直ぐ向くが目は瞑っていた。そして、目を大きく開け─
カノン「アッハッハッハッハ!!!!ウレしぃ!!これは一種の愛!!!ヤられたら…愛を返さなきゃア」ニタァ
カノンは不気味な満面な笑みで笑う。焔と幾は気味悪そうに顔をしかめる。
焔「本当気持ちわりぃやつだな。」
幾「不気味だなー…」
レベッカ「カノン、やれるわね?」
カノン「ヤれる。殺らしてくれる?フフフ、フフフフ。」
アリサ「あの…再開して大丈夫でしょうか?これ…」
レベッカ「問題無いわ。始めましょ。」
アリサと奏は戸惑いつつも開始の笛を鳴らした。
カノン「フフフ、楽しいナァ、、」ボソボソ
幾「ラストの点数。頂くぞー!」
パシンと真っ直ぐサーブは飛ぶ。
カノン「ガァァッッ!!!」
バサッ─
カノンは急に飛び出す。
幾「うわっ!」
焔「っ!?」
カノン「神よぉぉおおおお!!!」
カノンの急で凄絶なアタックは角度的に焔を捉えていた。
バァァン!!!!─
バァサ─
カノンの振った腕は宙を掻き、ネットを思いっきりに叩く。ボールは叩く前に割れ、破れた布が下に落ちる。カノンは着地し、いつもの表情でランファの方を向く。
カノン「……今のワタシがお前を許せると思うか?」
全員がランファを見ると、ランファは拳銃を向けていた。それは既に発砲した後だった。
ランファ「これ以上は面倒事が重なるからだ。お前のそれは簡単に人を殺すからな。」
カノン「何故!?何故駄目!?ワタシは殺しの権利があるはずだ!!!」
ランファ「バカ野郎、今は無い。時と場所を考えろトリガーハッピー。」
カノン「………」
ランファは立ちあがり、背を向けて歩きだす。
ランファ「帰るぞ。もう充分遊んだだろ。」
レベッカ「えっ!まだ勝敗が!」
ランファ「BARKERsの勝ちでいいだろう。くだらねぇ、勝ちと負けで話が決まるなら負けでいいだろう。」
レベッカ「そ、そんなぁ頑張ったのに……」
カノン「………」
レベッカとカノンは歩いていくランファに着いていく。
BARKERsの面々は呆気に取られていたが、焔が先に声を出す。
焔「お、おい!!」
アリサ「焔、やめときましょう?」
アリサは焔を制止する。
アリサ「これ以上はランファさんが言ってたように面倒事になりそうでしたし…それにボールの予備が無いですわ。」
焔「チッ、ぱっとしねぇ終わりかただぜ。」
B.B.Bメンバーは去っていく途中、ランファが周りに聞こえるが、BARKERsメンバーには聞こえない声で一言凄んだ。
ランファ「俺にはバレないと思ったか?殺されたくなかったら消えな。」
カノン「……私に言っているのか?」
レベッカ「ランファ?」
ランファ「ハッハ、違う。お前らはもう気付かなくていいことさ。」
カノン「?」
レベッカ「??」
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「ひぃ!!なんだアイツ!!なんだアイツ!!腕が無いし目が隠れてるから胸触り放題だと思ったのに!!」
ある男は砂浜から走り出す。事の展開はこうだった─
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その男の名前はトミー・ラル。41歳、データ入力の仕事をしていた派遣社員。ラルと呼ばれるこの男はある時、能力を発症した。
ラル「は、は、は、は、肌が…!」
[彩る]能力。彼は変幻自在に肌の色を変えることができる。この能力は彼の人生を大きく変えた。
何をしてもバレる事がない。
ラルはこの能力を使って様々な悪事をした。店の万引きから始まり、金を盗ったり、家に忍び込んだり、覗きをしたりなどだ。そして、ある時、ヴァリネシア王国の話を耳にし、観光地として栄え、観光客がごった返すこの国へ忍び込み、悪さをして自分の欲求を満たそうと考えた。ラルは能力を使い航空機に忍び込み、ングリムラムの海岸で好き勝手、悪事を働きまくった。
その悪事を働いて一ヶ月半程経った時だった。盲目の片腕が無いが抜群のプロポーションの女と、ブロンドの美人な女と筋肉達磨の屈強な男…?いや、女の三人が西海岸へやってきた。ここは死角もあるため、ラルにとって拠点でもあった。
ラル「うっほぉ!良い女がまた来たぜぇ!」
ラルは気分が高ぶり、様子を伺った。盲目の女だけ残して二人は居なくなったが、少したったら帰ってきた。その間、盲目の女に何かしても良かったが、戻ってきた時にバレるのは嫌だった。ラルは意外と冷静で消極的な行動の持主だった。
やはり、その後、二人の女は仲間を連れて戻ってきた。この女達も非常に美人でラルの心は高ぶりまくっていた。
ラル(男が居るが…あんなひ弱そうな男に何も出来まい。)
ラルはもう少し様子を見ることにした。すると、読んだ仲間と口喧嘩を始め、急にビーチバレーをすることになったようだ。
ラル(ビーチバレーだと!!?ぼ、ポロリもあるんじゃねぇ!?)
ラルはこっそり着いていく。人気のないビーチバレーコートは好都合だった。ここで悪さをしようとラルは心に決めた。
だが、まずはリスクを負わないようにラッキーポロリを拝もうとバレーをするもの達の近くへ行く。
激しくなっていくバレーの試合。数々の大きかったり小さかったりするボールも暴れ、ポロリは無かったものの興奮する出来具合であった。
ラル「うっひゃあ……たまんねぇ……」
ラルは鼻血を垂らしまくりバレないよう海に少し浸かりながら見ていた。
見ていくと、急に音が鳴り出したり、手から火を出したり多彩な芸を持ち合わせて試合をするのを見て試合に集中して見てしまっていた。
ラル(この子達はサーカス団かマジシャンなのかな?こんな鍛えられた者も居るし、火を出したりしてるし……明らかに普通では無いな。ってついつい試合を見続けちまった!あの盲目の女は寝ているな?へっへっへ)
ラルは寝ているランファに近付く。鼻血が出そうになりながらも我慢し、高ぶる心を押さえて、ランファの胸に手を……その時だった。
ランファは背中から拳銃を取り出した。
ラル「がっ!?じゅ、」
そして、大きな銃声が試合の終わりを告げた。
ラル「な、な、なっ!」
ラルは驚き過ぎて腰を抜かし立てなくなる。
ランファ「これ以上は面倒事が重なるからだ。お前のそれは簡単に人を殺すからな。」
ラル「こ、ころ、、?」
(コイツら……ただ者じゃねぇ!?)
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ラル「あいつら!!ただ者じゃねぇ!!!」
ラルは行き先も決めず、一心不乱に走って逃げる。そして、彼は適当な岩陰に姿を隠した。
ラル「はぁ…はぁ…はぁ…こえぇ。なんて奴等だぜ…」
「全くだ。」
ラル「!?!?くぁっ……」ドサッ
ラルの目の前は急に暗くなり、倒れた。しかし、ラルの能力はしっかり発動している。
ミスマール「あの子達に感謝だね。捕獲が簡単にいった。」
振り向いたラルの顎に一撃を与えたのはミスマールだった。携帯を取り出し、誰かに電話を入れる。
ミスマール「こちらミスマール。解決させてもらったよ、しっかりとリヤルでね。ああ、ああ、また近々。まぁ私は雇われの身だ。金さえ貰えればキッチリと…ね。あ、そうそう、彼女達の上司へしっかりと連絡してあげてくれ。うん。では。」
電話を切り、倒れたラルを担ぐ。
ミスマール「まぁ、一人でも仕事は終わっていただろうけどね。私からは絶対に逃げられないからな。」
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西海岸では合流したワグと恩田と共に焔以外のメンバーで遊んでいた。因みに焔はパラソルの下でシートを敷いて寝ている。すると、アリサの通信機に連絡があった。
アリサ「はい、こちらアリサですわ。……え!?任務は成功!?わ、私達、なにもしておりませんわ!?……はぁ…そうですか…分かりましたわ。」
アリサは腑に落ちない表情を浮かべていた。
ワグ「ん?どうしたんだ?」
幾「仕事が入ったかー?」
アリサ「いや、そうではありませんわ。んー……なんというか、任務は成功……だそうですわ。」
一同は驚く。しかし、皆は裏で一人の人物が動いていたことを、最後まで分かることは無かった。その後は一日遊びまくり、すっかりリフレッシュして、まだ空調が直らない灼熱のBARKERsに戻った。空調が直ったのは、その数日後。チノが簡単に直してしまったという。
海ノ章─ングリムラム島視察編これにて閉幕。