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海ノ章 閑話2 ヴァリネシア王国へ!


 怪奇現象が度々起こると言われる、ングリムラム島西海岸の視察に行くことになったアリサ達。行くメンバーは心からワクワクし、やっとその日がやってきた。



 本部の前に荷物を持って集合し始める、アリサ、幾、恩田、ワグ。時間になっても奏が現れず、少し心配になる。



アリサ「遅いですわね…何かあったのでしょうか…?」


ワグ「寝坊するやつじゃないもんなー奏は。」


恩田「んぶぅ…俺が見てこようか?」


幾「その方が良いかもなー」



 っと恩田が本部の入口を入ろうとした瞬間、扉が開き、ドンとぶつかり尻餅をつく。


恩田「うぶぁ!」


?「あ?邪魔だよデブ。喧嘩売ってんのか?」



 そこに居たのは赤鬼…いや、焔だった。


恩田「ぶ、あ、赤鬼…」



 寝癖でボサボサの髪は見方によっては角にも見える。恐らく寝起きなのだろう。とても不機嫌なようだ。


焔「誰が赤鬼だ。ぶっ飛ばすぞ。」


恩田「ぶ、ひ、ひぃー!赤鬼だぁー!」



奏「まあまあ姉さん、やめようよ。姉さんが寝坊したせいで皆待ってくれてるんだからさ、」


 奏は焔をなだめ、焔はイライラしつつも言うことを聞いた。



ワグ「え!Bfからの応援って焔の姉さんだったのか!」


焔「なんだよ。悪いか?」


ワグ「悪くありません。」

恩田「悪くありません。」


焔「よし、んじゃあ、出発するとするかぁ」


 焔は寝癖の頭をボリボリと掻きながらダラダラと歩いていく。


奏「ちょっと姉さん!荷物荷物!」


焔「あー持ってきてくれ。」


奏「もー!」


 奏は焔の荷物も抱えてヨタヨタと進む。



ワグ「こりゃあ…」


アリサ「楽しくなりそうですわね!」ニコッ


 アリサは笑顔でワグに答える。ワグと恩田は先が思いやられる…と下向きな気持ちで到着しているヘリ乗り、最寄りの空港へ向かった。


---------------



─ングリムラム島上空


アリサ「わぁ!凄いですわ!綺麗ですわ!海水浴客も沢山いて栄えてますわね!」


幾「確かに凄いなー新しい国なのにもうこんなに観光客がいるのは珍しいなー」



 ングリムラム島は三島並ぶ内の一番北にある島だ。この三島合わせて一つの島嶼国(トウショコク)となっている。この国の名前はヴァリネシア王国と呼ばれており、絶対君主制の王国だ。その国の王はヴァリアント・フォン・リントブルムという。小さな国だが、経済的にとても豊かであり、貿易にとても力が入っている。



ワグ「みず、うーみ!うーみ!!」

恩田「うーみ!うーみ!!」


奏「楽しそうですね、」

焔「はぁ…うっせぇなコイツらは本当…」



 そしてヘリはングリムラム島を越えて、空港がある主島のミューエ島へ到着する。皆は空港のゲートを抜ける。


ワグ「本当すっげぇな!見ろよ!向こうのホテル!上層が金ピカじゃねぇか!」


アリサ「美事ですわねー!あの一欠片だけでも随分と高い値段になるんですわよ!きっと!」


幾「空港も凄い賑いだし、綺麗だなー」


奏「降りてくる人達も上流階級っぽい方々しか居ませんね…なんか、僕たちが浮いてるような…」


焔「はぁ…落ち着かねぇな。」


ワグ「あれ?恩田はどこだ?」


 そこには恩田の姿は無く、一人ゲートを抜けられず検問を受けていた。


ワグ「マジかよ。」


幾「助けてやるしかないなー」


焔「チッ、勝手にやっててくれ。アタシは向こうの店に行ってるわ。行くぞ、奏。」


奏「え、あ、すいません!僕は姉さんを見張ってるんでお願いします!」



 焔は奏をつれて近くのカフェに行ってしまった……



アリサ「焔は本当自由なんですから!」


ワグ「姉さん不機嫌だなぁ…まぁ行くか。」



 三人は脂汗を大量にかいて焦っている恩田のもとへ向かった。



恩田「ぶ、ぶ、こ、これは俺が自分で食べる用のポテチなんだな!」


職員「あの…だから…ヴァリネシア王国への入国の際は水分や食物全般の持ち込みは禁じられていると言っているじゃないですか。これはルールなのです。」


恩田「ぶ、!そ、そんなの聞いてないんだな!」


職員「しっかりホームページや機内アナウンスでも流れてましたよ?」


恩田「ぶ、ぶ、ぶぅー!!」



 恩田はパソコンにイヤホンを付けて保存していたアニメを見て来たためアナウンスは聞いていない。自分のミスで反論が出来ない恩田は狼狽える。


職員「それにこの量は流石に怪しさ全開ですよ?全て開封してもよろしいでしょうか?」


恩田「ぶぶ!!それは駄目なんだな!!」


職員「ますます怪しいですね。あなたは何の目的でここへ来たんですか?」


恩田「ぶ、……か、観光なんだな!」



 仕事に関しては機密事項なため、深くは話すことが出来ない。



職員「……こちら5番ゲート、不審な人物にテロ行為の疑惑があるため、直ちに連行をお願いしたい。」


恩田「ぶぇー!!ち、違うんだな!本当なんだな!」


ワグ「おーい!大丈夫かー恩田ー!」



 危機一髪のところでワグ達が助け船を出す。恩田は心からホッとした顔をするが、職員は更に面倒臭そうな表情をする。


恩田「ぶ、助けてほしいんだな!大惨事になってるんだな!」


アリサ「一体どうしたんですの?」

幾「変なの持ってきてたんじゃないのかー?」


ワグ「あ、すいません!こいつは俺らの連れでして、何かあったんすか?」


 職員がジトリとワグを見て冷たく答える。


職員「この方のお仲間さまですか?あなた方も何か不審な物をお持ちになってそうですね。もう一度検問を受けて頂きたい。」


ワグ「え!」

幾「えー!」


アリサ「わ、私達は何も変なものは持ってきておりませんわ!」



 「テロリスト共は皆そう言うのだ。」


 後ろから威圧的な声が聞こえ、振り返るとそこには2mもあるような、大柄な男が立っていた。


 「こいつらが不審なもの達だな、検問官よ。」


職員「はい。お願いします、大佐。」


 その大佐と呼ばれた大男はギロッとワグ達を睨む。職員はその場から少し距離をあけ、大佐はグッと前へ来る。


大佐「テロリスト共よ、何を持ち込もうというのだね。」


アリサ「て、テロリストだなんて!酷い言い様ですわ!」

幾「私達はテロなんて起こさないぞー!」


ワグ「恩田!一体何を持ち込むつもりだったんだよ!」


 ワグは恩田に問いかけ、恩田は赤面し、ボソッと言った。


恩田「ぽ、ポテチ…」


ワグ「はぁぁ!?ポテチ程度でこんな大事になってるのかよ!!」


 ワグ達は心底恩田に呆れてしまう。


恩田「ぶ、だっ、だって日本のポテチが恋しくなるんだろうなと思って…」


大佐「それは嘘だな。この量の菓子…しかも開封も拒むときた。この俺の目は誤魔化せないぞ。お前ら全員尋問室にでも来てもらおうか。」


幾「恩田ー!さっさと開封して中身を見せろよー!」

アリサ「そうですわ!このままだともっと面倒なことに!」


恩田「それは断る!!」



 恩田はアリサと幾の言葉をスッパリ遮った。


幾「え…」

アリサ「な、何でですの?」

ワグ「何でだよ!」


恩田「それは…」




恩田「ポテチが駄目になるからだ!!!」



大佐「これは連行だな。怪しすぎる。」


ワグ「ふざけんなよ!恩田テメェー!」



 「騒がしいと思ったら珍しいな、日本人が問題を起こすなんて。」



 今度は検問ゲートに一人の白いカンドゥーラと呼ばれるアラビアの服を着た男が現れる。


大佐「キサマ…なぜここに。」


 「まあまあ、ブラドー大佐、日本人というのは騒ぎを起こしたがらないものだ。きっと彼の菓子は本物だよ。」



 どうやらこの大佐と呼ばれた男の名前はブラドーと呼ばれているらしい。


アリサ「そうですわ!私達は観光に来ただけなんですわ!」

幾「そうだ!そうだ!それなのにテロリスト呼ばわりなんて酷すぎるぞー!」


ブラドー「ぐぐぐっ…黙れ!ミスマール!貴様が来たせいで状況が悪化しそうだぞ!」


ミスマールと呼ばれた男「んー?違うだろう大佐が来てから状況が悪化したのではないのかね?」



 ブラドーは怒りで血管が浮き出てくる。ミスマールと呼ばれた男は笑いながらブラドーの肩をポンポンと叩く。


ミスマール「まあまあ、君の日本嫌いはよく知っている。いじめるのはよして見逃してあげてくれ。そうだな…私の面子を立ててお願いしよう。」


ブラドー「キサマぁ…ギギッ……」



 そして、ミスマールは恩田が持ってきたポテチを一袋取り上げると、おもむろに開け始める。


恩田「ぶ、!俺のポテチ!」


ミスマール「まあまあ、これがなによりの証拠になる。」


 パリッと一枚食べた後に職員とブラドーの顔を見る。


ミスマール「どうだい?これで安心だろう?」



ブラドー「ぐぐぐぐっ!この俺に泥を塗りやがって…!」


ミスマール「いやいや、私は日本に君の汚名を轟かせないようにしているのさ。この国を引っ張る一人の大佐は頭が硬いとか言われないようにね。」


ブラドー「フンッ!!キサマら!しかしルールはルールだ!!この菓子は置いていってもらうぞ!!」


ミスマール「だとさ、ルールはルールだからここは我慢しないと駄目そうだ。君たち、さっさとここを出ようじゃないか。」



ワグ「お、おう!恩田!さっさと行くぞ!」

恩田「お、置いていくのは…」

アリサ「いーきーまーすーわーよ!」

幾「ポテチは日本に帰ったら沢山喰えばいいだろー!」


 ワグは恩田を引き摺って行き、アリサと幾も恩田を押してさっさとミスマールについていった。その光景をブラドーは凄い怒りの形相で睨んでいた。



ブラドー「フンッ!!だから気に食わんのだ!イラフアルドの連中は!」



----------------



 空港外─


ミスマール「良かった良かった無事に出れて。」



 ミスマールはニコニコと笑っていた。ワグ達はお礼を言った後、気になったことをぶつけてみ

た。


ワグ「なあ、ここってこういうことよくあるのか?」


ミスマール「んー…ブラドー大佐は日本のことがあまり好きではないんだよ。平和ボケしてるとかどうとか前は言っていたね。」


幾「ん?ってか何者なんだー?あんたー?」


ミスマール「ああ、私かい?私はミスマールと呼ばれている。ただのアラビア人さ。」


アリサ「ただのアラビア人があんな会話できないと思われますが…」



ミスマール「ハハハ、まぁ言えないことは沢山あるさ!君達も言えないことがあるのだろう?」



 その言葉にワグ達は驚くが、ミスマールはニコニコと笑い、



ミスマール「まあまあ、お互いに楽しい観光をしようじゃないか。良い旅になるように願っているよ。」


 ミスマールはそう言って近くにいたタクシーに乗り込む。


ミスマール「それでは、Massalam!日本人!」


 そう手を振り行ってしまった。



アリサ「なんというか…ミステリアスな人でしたわね。」


ワグ「まあ…助けてくれたからいい人なのかな?」


幾「あ、恩田が息してないぞー?」


恩田「ポ…テ…チ…」




 その後、ワグ達は焔達と合流し、船で任務地のングリムラム島へ向かった─

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