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マンティコア君は生き延びたい(短編版)

作者: 板屋 登

2本目です、ギャグです、色々やり過ぎました、勢いのみです。


「そこをどけリーン」

「駄目ですガーンズさん」

リーンと呼ばれた金髪神官少女と、ガーンズと呼ばれた大柄な戦士がにらみ合いを続けている。

僕の目の前で。

「どうしてこうなった……」



ーとある少年18才ー

「被害者は○○町○番地のヤカタ・シロガネ18才、○○町のコンビニエンスストアにてワゴン車と衝突、現在心配停止状態で……」


『なんだが不吉な台詞を聞いた気がする……うん、気のせい気のせい、コンビニ行ったのは確かだけど、僕はこうして元気だし、うん、何か瞼が重い気がするけど……気のせい気のせい、まぁ、起きたら受験勉強しないと……でも、今日ぐらいはこのまま寝てても良い……かな、なんか周りがポカポカしてるし、鳥の鳴き声も聞こえる……気がするけど……うん、気のせい気のせ……』

『パキン』

『な……寝返りうったら何か潰した、音からしてプラスチック製っぽいけど……背中の方に何かあったっけ?ヤバイ、確認しようか……でも、瞼開けたくない……う~ん……でもしょうがないか。』


ゆっくりと目を開けると……

「……木?」

目の前には森林……そっと目を瞑り


『何で?僕、部屋に居たハズでえっと……あ、そっか、窓だ、窓開けっ放しだったんだ、だから、公園の木が見えたんだ~。』


残念ながら、彼の家から公園までは1キロある。

目の前に見える距離じゃない。


『よし、落ち着け、まだ慌てる時間じゃないって誰かが言ってた……気がする』


再度目を開け、左右をゆっくりと見る。


「何で山の中ぁぁぁぁぁ~?!」


彼、ヤカタ・シロガネ君の周りは、大自然溢れる世界でした。


「家は?!部屋は?!ってか、そもそもここドコ?!」


頭を抱えるシロガネ君、どうやら自分の手足の不自然さに気が付いた模様。

ゆっくりと掌を見て


「僕の手に肉球があるぅぅぅぅぅ~?!」


うんニアピン、不自然なのはそこだけじゃない。


「ってから、なんで服着てないのぉぉぉぉ~?!」


いや、もっと違うトコあるでしょ?


「全身毛だらけだぁぁぁぁ~」


違う違う、そうじゃない。


「なんか……知らないトコでツッコまれてる気がする」


そうだね、プロテインだね。

そうやって一人ボケツッコミをする事10分。


「人間ですら無くなってる」


どんより項垂れてるシロガネ君。

黄金色の毛並みに蝙蝠の羽、見る人が見れば、それは「マンティコア」と呼ばれるモンスターである事が分かったハズ。


マンティコア……高位のモンスターとして有名で、フェンリルとタメを張る……との噂もあったりなかったり。


「とりあえず、羽があるって事は飛べる……かも?」


いきなりのチャレンジ精神、フラグ立てまくり?


「よし……いくぞ」


助走を付けて寝床から飛び出し、羽を動かす。


パタパタパタパタパタパタパタパタ


羽音「だけ」が虚しく響く中、体は重力に引かれていく。


「うわぁぁぁ~」


哀れマンティコアのシロガネ君、真っ逆さまに森へと吸い込まれて行くのでした。



ー神官少女ー

森の中、少女は小さな切り株に腰掛けていた。

金髪で緑色の目をした神官少女。

彼女の胸には褐色のプレート、下位冒険者の証が輝いていた。

「はぁぁ~」

深い溜め息が出る。

まぁ、冒険者成り立ての神官だから、後方に置いとかれるのはしょうがない。

しかも、自分より上位冒険者との共同での狩り。

「何で来ちゃったんだろう……」


事の始まりは、とある依頼だった。

マンティコアが村の家畜を捕っていくというものだった。

当然、上位冒険者が片付ける案件と思っていたら

「お嬢ちゃん神官だろ?一緒に来てくれないか?」

リーダーと思われる戦士に頼まれ、危険も少なく実入りも大きいと思い参加したのだが

「私を連れてくるより、ポーションでと買えば良かったのに」

安全な位置で冒険出来るのは有難いのだが……

「こんな後ろで一人放置なんて」

ちなみに、彼女以外は数百メートル先を左右に別れて進んでいた。

巣に居るマンティコアを挟み撃ちにする為に。

「帰りたい……はぁぁ~」

独り言と一緒に出た溜め息が妙に響く。

っと同時に頭上から悲鳴と枝の折れる音が聞こえてきた。

目線を向けたリーンは目を大きく見開く。

こっちに向かって金色の物体が落下してくるのだから。

「うわぁぁぁ~?!」

「きゃぁぁぁぁ~!!」



ーとある少年改めシロガネー

「主に全身が痛い……気がする」

落下先に木の枝があり、手を打ち足を打ち腹を打ち顔を打つ。

「顔だけは痛かった……うん」

そんな事を思いながら顔を上げると、目の前には金髪の少女。

「……」

『ばっちし目が合ってます。ロックオンされてます。ヤバイです。

なんか……棒みたいなの振りかざしてるし……

やめて、乱暴する気でしょ?エロ同人みた……』

『ぽこんぽこんぽこん』

「痛い、止めて、いやホント、止めて下さい、は……鼻先はダメぇぇぇ~」



ー神官少女ー

リーンは一心不乱にメイスを振る。

急所を狙うような余裕がある訳でもなく、ただただメイスを振る。

何しろ、目の前に居るのはマンティコア。

……若干、聞いてたのと違う気がするケド……侮って食べられるなんて嫌。

そうやって、どのくらいの時間メイスを振ったか分からない……

やっと相手を見る余裕が出てきた……っと思ったら

「マンティコアがお腹見せてる」

えっと……これって確か、服従のポーズ?

若干震えてる……ような?

「な……何なの?」

「堪忍して下さい、お願いします」

なんで涙目なのよマンティコアが?!



ーシロガネー

よく分からないトコで目を覚まして飛び出したら死にかけて……

「僕……死ぬのは一回だけで良いです……うぅぅ……」

金髪の少女に殴られて喜ぶ趣味は……無い……はず


何故躊躇したし。


いや無い……うん、断言せねば……とりあえず


「僕の話を聞いて下さい、お願いします、金髪少女さん」

「変な呼び方止めてくれない?」


あ、金髪少女さんが反応してくれた。これで勝つる。



ー神官少女ー

目の前の状況をどう考えれば良いんでしょう……

お腹を見せた状態のマンティコアに尋問する神官……こめかみに指を当てながら

「神の試練?」

「僕のお腹に神様が試練を?」

「そんな訳ないでしょ!!」


『なんだろう……ツッコミもらった……この少女出来る』


なんか……マンティコアのクセに表情豊かね……


「で、君は本当は人間で、ヤカタ・シロガネって名前の男の子……なの?」

「もちろん、信じて下さい金髪少女さん」

「……リーンよ」


『?もしかして名前?呼んで良いのかな?』


「えっと……リーンさん?」

「呼び捨てで良いわ、君の……シロガネ君の話が本当だったら、私の方が年下なんだから」


『女の子を呼び捨て?それ何でゲーム?恋愛?それともエロげ……』


「今、変な事考えなかった?」

リーンさん、目が怖いです。

「思ってません、ごめんなさい」

あっ、溜め息ついてる。なんでだろう?



ー戦士ー

戦士ガーンズは悩んでいた。目の前の情景に。

「なんでマンティコアがココに居やがるんだ?!」

巣は空っぽだった。

一応、隅々まで調べたが……出てきたのは無数の動物の骨。

何個か砕けた状態で……(内一個は目の前のマンティコアが背中で砕いてたのだが)

作戦を考える為、後方に置いといた神官の小娘のトコに戻って来たら、マンティコアを捕まえてるとか……

「これは何の冗談だ?」

とりあえず、マンティコアの息の根を止めておくべきか……っと剣を構えた所

「待ってくださいガーンズさん」


「そこをどけリーン」

「駄目ですガーンズさん」


神官の小娘が庇ってるよ、マンティコアを……

「何の冗談なんだよコンチクショー」



何故かリーンさんが僕を庇ってくれてる。

「あっ、今の僕、ヒロイン枠?」

「シロガネ君は黙っていて下さい」

あ、リーンさんがまた溜め息ついてる。何で?


「ガーンズさん、このマンティコアに敵意はありません」

「だから何だ?見逃せと?」


『なんか……火花散る戦い?しかも、僕を取り合ってる感じ?ヤバイ、こんなの人生初かも……』


「シロガネ君、また変な事考えてない?」

なんで分かるのこの娘、エスパー?マミちゃん?

「シロガネ君?」

「ごめんなさい、調子に乗ってました」

とりあえずは『服従ポーズ』しとかないと……

そんなやり取りするこっちを見て、ガーンズさんって人が呆れ顔してる。何で?


「で、こいつが元人間って証拠は?」

リーンさんが色々説明してくれたお陰で、ガーンズさんも攻撃的じゃ無くなったケド……

「周りの人達の雰囲気は変わらないですね?」

「お前が変な事考えなければ良いだけだ、気にすんな」

いえいえガーンズさん、殺気です。特に後ろの弓持ってる人から、『俺の後ろに立つな』的スナイパーと言う感じの殺気出してます。

……会った事は無いんですが

「で、証拠は?」

あ、ガーンズさん放置してた、何かイライラした感じになってる。カルシウム足りてな……ごめんなさい、睨まないで下さい。

「反撃も何みしないで無抵抗なんですよ?きっと言ってる事は本当です」

リーンさんマジ神、金髪少女万歳、僕一生仕えま……

『ゴン』

殴られた、鼻先殴られた、何で?



こちらのやり取り見てたガーンズさんの仲間達が、呆れ顔してます。

ですよね~金髪少女に殴られるマンティコアってレアですよね?

え?そっちじゃない?

「とは言え、こっちも依頼だからな」

あっ……この展開はあかんやつ。


その瞬間

「坊ヤァァァァァ~!!」

頭上から声が聞こえて来ました。女性の声……っぽい?微妙に甲高い感じ?

「ちっ、やっぱり親がいたか?!」

ガーンズさん、それプラグ?また一波乱ありあり?もうお腹いっぱいです。



ー親マンティコアー

いつものように獲物を捕ってきたのに我が子の姿がない。

何故?あの子は産まれたばかりで飛ぶ事も出来ないはず。

ならば何処へ?

『クンクン?!人族の匂いがする?!まさか?!』


体長3メートルのマンティコア(雌)は翼を拡げて空中へ飛び出す。「坊ヤァァァァァ~!!」

叫び声が森を震わす。



ー冒険者一同ー

木々の切れ目から何か見えた……が

「あっちが本命か?」

体長3メートル級のマンティコア、依頼書にあった大きさだ。

それに『坊や』と叫び声を上げていた。

つまり……

「コイツはアレの子供か?」


あっ、ガーンズさんが僕の方見てる。若干悪そうな顔してる。元からっぽいケド。


「じゃ……じゃあ、僕はこの辺で」

さっさと離れてよう、うん、こんな所に居られるか~僕は部屋に帰……


「お前……いやシロガネ、元人間だったら『当然』強力してくれるよな?」


尻尾握りながら不吉な事言ってる~止めて~そこはデリケートなの~ニヤニヤしながら力入れないでぇぇぇぇ~



ー親マンティコアー

森の切れ目に金色が見えた。

見間違えハズも無い、あれは我が子の……

「坊ヤァァァァァァ~!!」

一直線に向かう。人族の匂いがした気がするが、どうでも良い。

『敵か居たら排除する、それだけ』

人族ごときに負けるハズがない。

マンティコアは神獣なのだから。


はい、プラグが立たました。


坊やの上に覆い被さるように着地する……っと同時に、矢と魔法が飛んで来る。

矢を羽で、魔法を体毛で弾く。

「コノ程度デ!!」

私の体に傷一つ付かない……が、少しでも動けば坊やに当たる。

「クッ……」

膠着状態……



ーシロガネー

来た来た来たぁぁぁぁ~周りを見向きもしない、いいの?罠だよ?明らかに罠だよ?えっと……僕の母さん?ってか


『じっくり見た感じ、美人さんだ』


あれ?僕の目おかしくなったの?ライオンを大きくした感じなのに美人に見える……何で?僕もマンティコアになったから?あっ、でも、リーンさんも美人……って言うか、美少女に見えたし……これが両刀つか……


『ゴン』


痛い、石が飛んで来た、鼻の頭に直撃、方向的にリーンさん?コントロールっぱねぇです。

ってかヤバイ、マンティコア母さんの目線がリーンさんの方にぃぃぃぃぃ~!!

「駄目、リーンさん逃げてー!!」


叫んだ瞬間、マンティコア母さんが飛び出した……リーンさん方へ。



ー神官リーンー

目の前にマンティコアが迫っている。

なのに

「足が動かない?!」

腰も抜けたのか、座り込む。

シロガネ君が何か叫んでる。

すべては一瞬、マンティコアの爪か牙か……私の人生はここで

「い……イヤ……」

声が掠れて……視界に怒り狂った表情のマンティコアが見えた。



ーシロガネー

かっぽかっぽかっぽかっぽ


『なんだか音がする、ついでに体が揺られてる……気がする……えっと……何があったんだっけ?確かリーンさんにマンティコア母さんが突進したのが見えたから追いかけて……んと……』


ゆっくりと目を開ける……あれ?リーンさんの顔が見える?こっち見ながら優しい目をしてる……何?ここは天国?また死んだの?


「シロガネ君、気がついた?」

「……えっと……膝枕?」


顔の横に柔らかいモノが当たってます、これは夢の……


「毛布だけど?」


で~す~よ~ね~、夢見てスミマセン、膝枕の夢よバイバイ。


顔を上げて周りを見渡す……どうやら馬車の荷台に載せられてたみたい。

馬を操ってるガーンズさんが見えました。

馬車周りを他の人達が囲んで歩いてます。

あっ、僕の背中側に居るのって弓使いさんじゃないですか、ヤダ~

「……」

相変わらず目線だけで人殺しそうな感じです。

出会って1時間程度なんですけどね。


「助けてくれてありがとう」


リーンさんからお礼貰えました、何で?


「その顔……何も覚えてないのね?」


溜め息つかれました。僕の知らない何かがあったの?教えてグー〇ルさん。


「お前さんが親マンティコアを吹き飛ばしたんだよ」


ガーンズさん、今のところ何と?僕が親マンティコア……マンティコア母さんを吹き飛ばしたと?どうやって?


「リーンに飛び掛かる瞬間、お前が風魔法で親マンティコアを吹き飛ばしたんだよ……本当に覚えてないのか?」


風魔法?何それカッコイイ、螺〇丸とか使えそう?鍛える?頑張りたいってばよ。

「……また変な事考えてるでしょ?」


だから、何で分かるのリーンさん?読心術?心眼の使い手?


「……シロガネ君」


ごめんなさい、反省してます、お腹見せます、勘弁してください、何でもしま……せん。


「ってか、僕魔法使えるんですか?」

「使った本人が言うか?」


あ、ガーンズさんの呆れ顔、もう見飽きました。

『ゴン』

「な、なんでリーンさんが殴るんてすか?」

「あっ……なんとなく」


しまったって顔してますが、表情だけですね、きっと……

「まぁ、マンティコアは風魔法で体を浮かせてるらしいからな」

ガーンズさん、情報あざっす、これで、この世界でも希望が持て……


「所で、僕は何故縛られてるのでしょう?」


良く見れば、手足に紐が……何かのプレイ?


「あ~それなんだが……俺達はマンティコアを狩りに来た……んだが」

「アッ、ハイ」

「さっきも言ったが、親マンティコアをお前さんが吹き飛ばした」

「……記憶にありませんが?」

「んでまぁ……吹き飛ばされた親マンティコアなんだが……逃げた」

「はい?」


今、聞き捨てならないセリフが聞こえたような?


「あ~これは俺予想なんだが……最愛(笑)の子供であるお前さんに吹き飛ばされた事で、混乱して逃げたんじゃないかな~っと」


育児放棄ですか?訴えてや……この世界だと何処へ訴えれば?


「でだ、このままだと俺達の依頼が失敗扱いになるんだが」


なんでこっち見るんですか?コッチヲ見ルナァァァァァ~


「お前さんを捕獲した事で代わりにならんかな~っと」

「身代わりですか?止めて~人の心が有るのなら~」


ってか、それマンティコア母さんは元気で活躍しちゃうじゃないですかぁぁぁぁ~


「俺達の依頼が完了すれば良いだよ」


良い笑顔、ガチムチおっさんのクセに。


「詐欺たー欺瞞だー弁護士さん求むー」

「大丈夫、シロガネ君は私が守るから」


リーンさん、菩薩ですか貴女。


「じゃあ、この縄をほどいて……」

「それは駄目、私の依頼失敗件数に入っちゃうから」


あんたもですかぁぁぁぁぁー!!


「命は取られないから……多分?」


多分て言った、この娘多分って……


「助けてぇぇぇぇぇー」



マンティコアの声が響く。この世は無情?



「僕は生き延びたいんだぁぁぁぁぁー」

ネタを挟むのは何処まで許されるんでしょうか?


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― 新着の感想 ―
[良い点] 笑えます。面白かったです。 [気になる点] 別に良いんですが、 マンティコアが普通に人と話せているところかな? [一言] 面白かったです。 アップテンポで話が進んでいき、落ちもコメディ…
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