美恋 ~ miren ~
純愛物語です。
特別なことは一切ありません。
だからこそ、誰にでも
読んでもらいたい作品です。
恋ってなんだろう。
愛ってなんだろう。
その答えがわからぬまま、
私はもがき続けていた。
私が経験した恋愛は、きっと私に教えてくれた。
私(佐藤 亜由美)はごく普通の大学生一年生だ。
私が彼(水野 圭太)と出会ったのは、入学して間もなくのことだった。
圭太は、バイト先の先輩だった。
同時に大学の先輩でもあった。
圭太と初めて会った時、私はまずいと思った。
かっこよくて、優しい圭太の笑顔に一瞬で心を奪われた。
だけど私にも圭太にも、当時恋人がいた。
私は絶対に好きにならないように、出来るだけ距離をとった。
けど圭太とシフトが被るたびに、学校で会うたびに、
少しずつ惹かれていく自分を止めることは出来なかった。
同時に圭太も、話を親身になって聞いてくれる私に
だんだん惹かれていったようだった。
「佐藤さんの事が好きです。付き合ってください」
その言葉をもらった時、世界で一番幸せだと感じた。
それから毎日圭太といた。
楽しかった。幸せだった。
圭太といろんなところに出かけた。
喧嘩もした。沢山した。
沢山泣いた。沢山笑った。私のすべては圭太だった。
私は人生のすべてを圭太に捧げた。
これまでいろんな人と付き合ってきたけど、
こんなに人を好きになったのは初めてだったからだ。
圭太が好き。世界で一番圭太が好き。
「あゆのこと幸せにする」
「あゆとずっと一緒にいたい」
圭太は私が欲しかった言葉を
沢山与えてくれた。
だけど、この幸せは長くは続かなかった。
圭太が別れを切り出したのは突然の出来事だった。
「あゆとの将来を考えられなくなった」
私は別れを素直に受け入れることが出来なかった。
「圭太、待って。ちゃんと話そう...?」
「何言われても、俺の気持ちは変わらないから」
「圭太...嫌だよ。離れたくないよ」
「ごめんな、あゆ。あゆにはもっといい人がいるから」
「圭太以上にいい人なんていないよ。圭太がいいんだよ」
届かなかった。何を言っても、どれだけ泣いても、
圭太は別人になったかのように、
私に二度とあの笑顔を見してはくれなかった。
毎晩泣いた。泣いた。泣いた。
圭太......圭太......圭太......。
なんど読んでも圭太はもういない。
どれだけ想っても圭太は戻ってこない。
どうして。圭太はなんで急に私を捨てたの?
私は別れの理由が全く思いつかなかった。
圭太に聞いても、あゆは悪くないとしか言わなかった。
どうしても知りたくて、圭太にしつこく聞いた。
圭太はやっと本当のことを話してくれた。
圭太は元カノと7年間付き合っていた。
つまり、中1から大学2年になるまで、ずっと。
「この前成人式で元カノと会ったんだ」
嫌な予感がした。
「元カノが、俺とヨリ戻したいらしくて病んじゃって...」
「死ぬって言いだしてる」
なにそれ。気を引きたくて言ってるだけじゃん。
そんなに簡単に死ぬわけないじゃん。
私は元カノを恨んだ。でも圭太には言えなかった。
「圭太。元カノさんの所に行ってあげて」
「私は大丈夫だから」
圭太。私はあの時大丈夫なんかじゃなかったよ。
圭太が戻ってくるのなら私だって死ぬって言いたかったよ。
だけどね、圭太を困らせたくなかった。
本当は圭太を掴んででも離したくなかったんだよ。
そばにいたかったんだよ。
圭太。私はまだあなたのことが好きです。
2か月たった今でも、忘れることなんて出来ません。
私は圭太に一度人生を捧げた。
だからこの先も、圭太だけを愛して生きていこう。
そう思っていた。
圭太に2度と会えなくても、私は圭太だけを好きでいると。
圭太と別れた後、私のそばでずっと話を聞いてくれた人がいた。
その人もまた、バイトの先輩だった。
大学も同じで歳は二つ上。
大人な考え方を教えてくれたり、
親身になって話を聞いてくれた。
その先輩には彼女がいたから、
私は逆に変に期待もせずに気楽に接することが出来た。
急に関係が変わったのは、その先輩(冴島 涼)が
彼女と別れてからだった。
涼は長い間彼女とうまくいってなかったらしく、
別れる別れないを繰り返していたらしい。
圭太の話を相談しているうちに、
涼に私のことを守りたいという感情が芽生えたらしい。
「彼女と別れたのは、ほかに気になる人が出来たからなんだ」
まさか自分のことだとは、思わなかった。
「そうなんだ~。なら、その人と一緒に入れるといいですね」
「冴島さんが、幸せなのが一番いいと思います」
「......」
涼は黙った。なにかを言いたそうだった。
「どうしたんですか?」
「佐藤さん。俺が一緒にいたいのは...。」
「ん? 私の知ってる人ですか?」
「......。佐藤さんなんだ」
「......っえ!?」
私はびっくりして言葉を失った。
「俺と一緒にいてくれませんか?」
すぐに返事をすることが出来なかった。
たしかに、涼といたら幸せになれそうだと思っていた。
だけど、私はまだ圭太を愛していた。
圭太と戻るつもりは全くなかった。
戻っても同じことを繰り返しそうだったからだ。
元カノの存在が消えない以上私はいつになっても二番目だから。
だけど、だからといって圭太を好きな気持ちが
消えるわけはなかった。
涼は私が圭太のことをこんなに思っていることを知っていた。
「水野君のことを、好きなままでいい」
「俺のこと、少しずつでも好きになってくれればいい」
「俺が、水野君のこと忘れさせたいんだ」
私は、人がこんなにも優しくて暖かいものなんだと感動した。
甘えていいんかな。
でもそれって、利用してるだけだよな。
忘れたいからって、好きでもない人と付き合うなんて。
私は悩んだ。
だけどその時思った。
涼のことで悩んでるときは、
圭太のこと思い出さずにいた。
もしかしたら、涼といれば本当に
圭太のこと忘れられるのかもしれない。
そう思った。
圭太。今どこにいますか?
誰と何をして、どんなふうに笑っていますか?
私、幸せになりたい。
圭太に教えてもらったことが沢山あります。
人を好きになること。
人を愛すこと。
その人のことを想うこと。
人を幸せにすること。
今ならちゃんとわかる気がするんだ。
私、今なら人を幸せにする自信があるんだ。
私は、涼と付き合うことにした。
涼は、本当に優しかった。
一緒にいて楽しかった。落ち着いた。
涼は私のことを本当に想ってくれた。
でも涼が大好きだよと言ってくれるたびに、
私はなぜか胸が苦しかった。
「好きだよ」
その一言が、どうしても言えなかった。
圭太。あなたはここまで私の中で、
大きな存在になっていたんだね。
涼と付き合っていても、
圭太と過ごした日々が蘇ってくる。
だけど、涼のことは大切だった。
好きとかじゃない、愛してた。
なにかが違う、そう思った。
圭太と付き合っているときは、
圭太のこと大好きで、大好きで、
わがままも沢山言ったし、圭太を困らせてもいた。
圭太の気持、考えてあげること
出来なかった。
でも涼のことは、すごく考えてる。
涼が私のこと大切にしてくれるから、
私も涼のこと大切に出来るんだ。
圭太。私は圭太に恋をしていた。
恋は、自分のことを考えて行動し、
愛は、相手のことを考えて行動することだと、
私は思う。
そして、恋は相手のために死ぬことで、
愛は、相手のために生きることだと。
私は気づいた。
私も元カノさんも、圭太には恋をしてる。
それは愛じゃない。
涼はそれを教えてくれた。
私に恋と愛の違いを教えてくれたんだ。
私はこの先も涼のことを愛して生きていく。
涼と、お互いのことを想いあって、
愛し合って生きていく。
圭太という存在をずっとどこかに抱きながら。
圭太への未練を抱いたまま。
圭太への美恋を。
END
人は、一番好きな人と
一緒にいれるわけではありません。
世の中には二番目三番目に
好きな人と結婚する人のほうが
多いと思います。
だけど、その隣にいてくれる人を
大切にしてください。
それが、愛だと思っています。