ふたなりになっちゃった百合
具体的ではない程度のたいへんおちんちんな描写がありますのでご注意ください。
私、敷島理沙は今、大きな悩みを抱えている。
同級生で、幼稚園の時からずっと一緒だった真帆と色々あった末、ようやく正式に付き合うことができて、恋人同士になったのに――
「で、なに?」
真帆は気だるげな感じが強くて無表情なことが多い、気力とか元気っていうのと無縁な女の子。
一度染めた茶髪は随分色が抜けて黒くなってきたけれど、なれてしまったのか髪の毛の右だけ編み込むオシャレを覚えたらしい。
そして今、私はいつものように真帆の家で、けれど大事な話をするため椅子に座った真帆に、正座で向き合っている。
「……驚かないで、聞いてほしいんだけど」
「無理でしょ。理沙のが真面目に見えて結構ぶっ飛んでるし」
痛いところを突かれて、うっ、と声が漏れる。
実際、告白したのも、キスしたのも、エッチしたのも全部私からだし、真帆は流されっぱなしだったと思う。
それなのにまた驚かせてしまうと思うと、今から胸が痛い。
でも、これからも二人で一緒に生きていくためには、伝えなきゃ。
「実は……話すより、見てもらった方が早いんだけど」
意を決して、私はスカートを脱いで、下着に手をかけた。
「えっ、ちょっ、なになになに?」
もう驚いている真帆も、それを見てついには言葉を失くした。
私に、ついているのだ、男性の性器が。
絶句して、目を見開いてそれを見て、次に真帆は私の目を見て、言う。
「……そんなの前からついてたっけ?」
「ないよ! 今日朝起きたら突然ついてたの!!」
「うわぁ、面白い」
「面白くない!!」
真帆は、いつも色んなことがあっても動じない人だとは思ってた。
私が告白した時もこんなだったし、キスしてもそうだったし、平気な顔で嘘を吐くし。
だからこの真帆の反応も、思い切り気持ち悪がられたり、嫌われるよりもマシなんだけど。
……真剣に考えてくれてるのかな、って不安になる。
「……おちんちんだね」
「それは……まあそうだけど」
間の抜けた言葉に、少し毒気が抜かれる。しみじみ見られるとやっぱり恥ずかしいけれど、真帆も真剣っぽい表情だから悪くは言えない。真帆の場合、真剣かどうかの判断も難しい。
真帆はしばらく見た後、腕を組んで「うーん」と唸った後、また突然言った。
「で?」
「で?」
オウム返しして聞き返す。で、って?
「いや、それ問題ある?」
「あるよ!! 人前で裸に慣れないし」
「ストリーキングのご趣味が?」
「ないよ!! でも、友達と旅行とか泊りとか行ったらさ、大浴場とかでさ……」
確かに、そうそうこんなものを見せつける機会なんてない。だけど友達と一緒にお風呂とか入れないし、水着だって限られる。下着姿も少し危うい。
学校でだって気を配らないといけなくなる。
……それ以前に、私の体がどうなってしまったのか……。
「別に望美も美守も佐倉ちゃんも気にしないよ」
「私の友達はその三人だけじゃないの!」
「理沙の友達はちんちんの有無で人を判断しないでしょ」
それはそうだけど、問題はそういうことじゃない。
「私は理沙がどうなっても好きだよ」
……なのに、そんな一言だけで全部安心してしまうのは、惚れた弱みというもの。
そもそも最初に心配したことは、真帆に嫌われないか、気味悪がられないか、ということばかりだった。真帆がいつも通りだった時点で私の懸念の殆どは取り払われていたのだ。
「それに、そう悪いことばかりじゃないかもよ?」
「……え?」
「私が理沙の子供を産めるじゃん。どちらかというとアド」
思いもよらない単純な可能性を、目の前に叩きつけられた。
真帆が、私の、私達の子供を?
真帆を好きだと思ってからずっとそんな人並みの幸せを手に入れることができるだろうかなんて悩んでいた。里親だって夫婦にならないとなれないからと子供は諦めるつもりだったし、それでもいいと割り切っていた。
だけどそんな幸せな家庭が手に入るかもしれないと思うと、今度は喜びで目の前が何も見えなくなる。
「あ、それに突然ついてたんだったら、また突然目覚めたら失くなってた、なんてこともあるかもよ?」
「た、大変! じゃあ早く子供作らないと!!」
即座に立ちあがって真帆の腕を掴み、私は真帆をベッドに押し倒した。
「え? いやいやいや!! ちょっと待ってよ!! 冷静になってまだ高校生!!」
「だけどいつなくなるか分からないし……」
「そもそも初めて!! ビギナー! 焦っちゃダメ!」
初めて?
もう真帆と何度も逢瀬を交わしている、そう思ったけれどどこか冷静な頭が判断した。
確かに、真帆とは何度もキスして、裸で抱き合ったりもした。真帆の体中で舐めていないところやキスしていないところはないだろうと思う。
けれど、真帆の、つまり処女は、私は奪えていない。
私についたこれは、それができる。
言ってしまえば本物のセックスができる。
今までの行動がそうじゃなかったわけではない。
私たちは心の底から愛し合って、お互いを尊重して、一緒に気持ちよくなっていた。
だけど、だけど、やっぱり形も大事にしたい。
「じゃあ真帆、改めて」
真帆の体をベッドに押さえつけながら、服を丁寧に脱がし……ええい邪魔臭い。
「理沙もう……うわデカくなってる」
は~、とため息を吐いた真帆は体から力を抜いて、呆れた目で私を見る。
「ま、心配事がなくなってよかったよ」
「うん!」
私は笑顔で、まず真帆にキスをした。