そばにいたい 1
光が眩しくて、布団を被った。
「おーきーろー!!」
声と共に何かでっかいものがダイブしてきて、息が止まりそうになる。
「起きた?」
ヘヘヘと悪戯っぽく覗きこむ顔。
「勘弁してくれよ。お前、いくつだと思ってんだ。」
「だって、確実だろ? それに、朝ご飯は一緒に食べなきゃダメなんだよ?」
ニッと笑った繭結が、セーラー服の裾を翻して居間の方へ駆けていく。
…… それにしたって、いい加減自分が女子だって自覚しないとヤバいんじゃないか?
掛け布団越しでも分かってしまった胸の脹らみに、絶対アイツは妹の育て方を間違っている …… って思う。
元々、女子なんだか男子なんだか …… むしろ、男子だろ? くらいの勢いだったから、その成長を目の当たりにして、久し振りに会った嬉しさよりも戸惑いの方が大きい。
「あの起こし方、何とかならないのか?」
新聞を取って来たらしい晃に玄関で会ったから、早速ぼやく。
「こっちは、帰ってきたの4時だぜ? それから、なんだかんだやって …… 睡眠時間2時間あったかどうかって、可哀相だろ、おれ。」
「あ、なら俺も似たようなもん。寝たの3時過ぎだったから。」
今回も、撮影でひと月振りに帰って来たって言うのに、晃は相変わらずだ。
「だけど、朝飯くらい一緒に食ってやらないとな?」
なんでもないことのように言うが、一人で暮らしていた頃は食事もロクに摂らなかった奴だから、妹の為に早起きして一緒に食卓を囲むこと自体、相当な努力だと思う。
たとえそれが寝たのが3時でも5時でも、ちゃんとそこだけは押さえているのだから立派なものだ。
「2人とも遅~~い! 早くしないと遅刻だよ。」
目玉焼きとトーストの簡単な食卓を整えた繭結が口を尖らせる。
―― いや、遅刻になるのはお前だけだから …… こっそりと、心の中で呟いて晃と顔を見合わせる。
晃23歳。木村と。
『それでも手をとり笑います 1~』の後。
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