伝えたい気持ち
「俺って、不幸なの?」
夕飯を作っていると、ダイニングテーブルに寄りかかっていた晃がいきなり言い出す。
「な、なんでそんなこと言い出すんだよ。」
内心、ドギマギ …… でも、なんでもない振りをして切り返す。
これまでの経緯を知っている奴なら、晃のことをそう思っても仕方ない …… とは思うが、認めちゃいけない。
「う~ん、客観的に見たら?」
もう一度おれを見る。
「客観的って …… そんなん、自分がどう捕らえるかって問題だろ? 他人の評価なんか無意味だ。」
「ふぅん。でも、木村ならそう言うと思った。」
満足そうに笑う。
「何? 試したの?」
「ん、って言うか、人の幸不幸って誰が決めるんかなって ……。」
「やっぱ、なんかあったな?」
「大したことじゃないけど …… 俺って、不幸らしいよ?」
昼間、取材を受けに出掛けた先で、何か言われたのかもしれない。
「言った奴って誰?」
これまでの晃を知らない奴に限って、そういう無神経なことを口にする。
今の生活になるまで、どれだけの道のりがあったか知ったら、そんなこと言える筈がない。
「って、なんで腕まくりするかな。」
さほど気にしていない風に茶々を入れるから、ダメージを受けたのではないと思う。
でも、せっかく仕事を再開したことを祝う取材で、そういうことに触れる記者の神経を疑う。
「怒ってんの?」
「いや、『おれが幸せにしてやる』って、宣言してくる。」
ニコーと笑う。
「止めろよ。恥ずかしいじゃん。」
「だって、そうだろ?」
「大体、どうしたらそんなことできるの?」
挑むように聞くから、おれも少しムキになる。
「こうやって ……。」
ガスを止めて向き合うと、正面からぎゅ~っと抱きしめる。
「…… ……!!」
慌てた風に、腕の中でジタバタするのが可愛い。
「晃、好きだ。離さない。ずっと、傍にいて。」
「…… 幸せになった?」
晃の細い肩が、おれの腕にすっぽり填まるのが気持ちよくて、離したくなくて、このまま時が止まればいいと思う。
「…… ……。」
「やべ、おれの方が幸せな感じ。どうしよ?」
晃が何も言わないから、つい ……。
「ばか …… 苦しいよ。」
照れ臭そうに呟くから、それがまた堪らなくて、もう一度ぎゅっとした。
2009.12.26 00:33:58 作成
晃と木村 23歳 冬。
どうやら、同居しているらしいです。
『キミと一緒に 1~(明日のことを話そうの後)』の後。http://akaesakira.blog123.fc2.com/blog-entry-670.html