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怪談部  作者: 秋人
2/2

大きな窓


__________


坂井 俊介


怪談部とは、部員どうしが互いに持ち寄った怪談をみんなで共有する部活のことだ。



僕はここに入部するまで全く怪談なんて興味がなかった。

だけど部活動見学会で聴いた部長の怪談に、感動を受けたのだ。


僕がいままで見向きもしなかった怪談というものには、恐怖を与えるだけではなく、考え方、五感に、思想に刺激を与える効果がある。


例えば虫に関する怪談を聴いたとする。

すると話を聞いてる途中、聴き終わった後からだが痒くなったり、実際に自分の体には起きてないことを想像して五感が勝手に作用してしまう。


そんな効果を完璧に理解していた部長の話は、僕を本当に自分がそこに居るかのごとくな臨場感を演出し、心で恐怖させ、体で恐怖させてきた。


そんな部長に憧れて僕は怪談部に入部させてもらったのだった。

いつかは部長を越えるような怪談を_____





______________




これは私の友人N君の体験した話です。


N君の両親は彼が小学校の頃に離婚してしまい、3才年の離れた兄と父の家で生活していました。


男手一つで子供を二人育てているお父さんも、あまり稼ぎが良くなく、たまに二人の子供に手伝ってもらって生活費を稼いでいました。


N君が中学3年生になった頃、父に頼まれチラシの投函の

アルバイトの手伝いをすることにしました。



N君のお父さんが車を止めたところは丁度大きめのアパートの前で、3人で場所を分担して作業を進めることにしました。


お父さんは一戸建ての住宅を回りの、兄さんは近くのマンションを何個か担当し、N君は一戸建て数件と車を止めたところにあるアパートを担当することになりました。



マンションやアパートなどの集合住宅は、1階部分のエントランスにポストが固まっているか、たまに各部屋の前にポストがあるところと、2種類のパターンが多い。


そのアパートはエントランスにポストがあるところで、アパートの規模も大きく投函するのが凄く大変なところでした。


N君が入り口の扉を開けるとまず目に入ったのは大きな窓でした。

どうやらその窓はポストの横の部屋の窓のようだった。



N君は何故こんなところに窓があるのか不思議に思い、立ち止まってよく見てみることにしました。


その窓はとても大きくて、開けることができたならば人が一人通れそうな大きさで、丁度空き部屋なのか部屋のなかには家具は一つも無いようでした。

部屋の内装は手前側はダイニングになっており、その奥にカウンターを挟みキッチンがあり、さらに奥に洗面所があるようでした。

奥の洗面所には扉があって中が少し見える程度に扉が開いていました。

そして洗面所内の物干し竿になにかが下がっていました。



N君はなにかが下がっていることに気づき目を凝らしてみると、天井辺りから紐が伸び、黒い人形の様なものがゆっくりと揺れていました。


これはヤバいやつだ!N君はそう感じて、窓から目を反らし急いでチラシを投函し始めました。


急いで入れながらもどうしても気になってしまい、横目で窓を見てみたN君は作業を中断しようと思うほど焦りました。


黒い人形はすぐ手前のダイニングにぶら下がって揺れていたのです。


N君はとにかくチラシを全部突っ込みダッシュで車に向かいました。

急いで車に乗り込み、アパートの方を絶対見ないように横を向き、

先に作業の終わって来るまで待っていた二人に、早く車を出して、と大声で言いました。


そんなN君の様子を怪訝に思いつつもお父さんが車を前に進めたときにN君は、最後に窓の方へ振り返りました。



そこには窓なんてありませんでした。



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