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怪談部  作者: 秋人
1/2

歩く気配



某県、某高校の三階の一番北側の教室にはとある部活があった。


その名も「怪談部」


活動内容は単純だ。

各々が怪談話を持ちより皆に披露し、共有し合うこと。

そんないつもの活動のある1日の話。






______________



世間の高校生が夏休みに沸くこの時期、8月4日のことである。

地元の学力も偏差値も高くも低くもない高校に通っているS君は、

夏休みということもあり、夜遅くまでゲームをしていた。



時間も3時を過ぎ、そろそろ寝ようとゲームの電源も切り、

部屋の電気を消して布団に入ることにした。



布団に入り、目を閉じていると寝ようとしているはずなのにやけに目が覚めてしまい、

眠くなるまで家族も皆寝静まった後の家の中の音に、耳をすませることにした。



よく耳をすませていると、1階の居間で物音がした。

S君の部屋は2階にあり階段から少し離れた場所にあり、居間と離れているし聞き間違いか、家で飼っている猫が立てた音だと思った。



またしばらく耳をすませていると、また階下で音が聞こえた。

どうやらなにかが床に落ちる音のようだった。

少なくとも猫が立てるような音ではなかった。



また少したった後、「ヒタッ…」と音が聞こえた。

今度はさっきよりも音に集中していたので、より音がはっきりと聞こえた。



また「ヒタッ…」

S君は気付いた、これは人の足音だと。

そして1回音がするたび少しずつ少しずつ、

自分の部屋に近づいて来ていることを。



そしてまた「ヒタッ…」


階段の1段目を登った音が聞こえた。



「ヒタッ…」


2段目を登ってきた。



S君の額に少しずつ汗が流れ落ち始めた。



「ヒタッ…」 「ヒタッ…」


段々と足音と、足音の間隔が狭くなっていく。



「ヒタッ…」 「ヒタッ…」 「ヒタッ…」


何かの気配が2階に近づいてくる。



「……」 「……ッ」 「ヒタッ」


ついに足音は2階に到達してしまった。

何かの気配が階段の一番上にいる。

その何かは動かずにそこに止まっているようだ。



S君は息を殺して何処かに行ってくれと必死に祈るばかりだ。



そしてまた「ヒタッ」

何かがまた動き出した。

その気配は「ヒタッ」 「ヒタッ」 「ヒタッ」

と、廊下を少しずつ進んでくる。


その気配を増していく何かが近づいてくるという重圧に、

S君は心臓が悲鳴をあげそうなほど暴れ、身体中から汗が止めどなく出てくる。



「ヒタッ」



ついにS君の部屋の扉の前についた。

S君は通りすぎてくれと祈りつつ、外の気配を探る。

気配はまだ動いていない。

S君は身じろぎ一つせずずっと耐える。

扉の前からずっと気配が動かない。



5分ほど過ぎただろうか、S君にとっては一時間にも等しかった時が過ぎS君は、ついに耐えられなくなった。


一気に布団を跳ね上げ、大きく足音を立て、扉を一気に開け放った。



そこには、誰もいなかった。


扉を開けたままの体勢だったS君は、少し考えた。



結局は自分の聞き間違いだったのかもしれないし、あるいは尖りすぎた神経が聞かせた幻聴だったのかもしれない。


S君は大きく息を吐き、扉をゆっくり閉めてから布団に戻った。

嫌な汗をかいたと嘆息し、目を閉じて少し考えた。


なぜ自分の部屋の前で止まったのだろう、扉を開けた後気配がなかったのは何故だろう。



「ヒタッ」


自分のすぐ近くで足音がした。

扉の内側だ。


S君はすべてを理解した。

何故扉の前に止まったか。何故扉を開けてから目の前から気配が消えたのか。



時計は3時30分を指したばかりだった。


夜はまだ長い。


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