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ボブの破壊力、切れば春

作者: 風連
掲載日:2016/02/25

間宮凉子まみやりょうこ、28歳独身、通販サイトの運営会社勤務、三年半目。

伸びた〜〜。

忙しさにかまけて、3ヶ月。

カラーも、落ちて、クロ。

てか、グロい。

くせっ毛は、つらい。

ニットかぶって誤魔化ごまかしも、限界。

何せ、汗が出るのだから。

行きつけのお店、行けないし。

仲良くやってたのにな〜。

奥さんの方が、家出しちゃった。

かれこれ2年は、通ってたのに。

旦那さんは1人でやってるけど、奥さんの担当だった人達は、行けないよね、やっぱり。

髪が顔にかかってカユい。

うねって多くて、ウザい。

男って、女はオシャレの為、髪型変えてると思ってたら、アホ。

切りたいんだよ、単純に。

ア〜〜、坊主にしたい。

したいけど、昔のバイトの先輩が、女の子坊主だったけど、手間暇かかるってボヤいてた。

5ミリとかキープするのに、命かけられないし。

携帯検索。

職場のそばに30分で仕上げますって、店発見。

うそ〜、本当。

って、思ったが、女性には、女性の担当が付くって。

丸刈りされそう。

でも、限界。

毛がカユい、キモい。

仕事終わりにその店に向かう。

なんか、オシャレ。

デカデカと30分で仕上げます、とかの、のぼりとか無粋なシールとか無いし、シンプルで、モノトーン。

流石に、初めては、30分は無理でしょう。

いらっしゃいませから、コートお預かりしますで、椅子に。

カウター下の籠にバックを入れてフタ閉めたら、フワリと白いタオルがかけられ、すぐに首に巻かれた。

黒のケープが、それを追う。

担当の女の子は、ピンストライプのシャツとGパンで、腰にカフェ風の厚手のエプロンをしてる。

「どのくらい、切られますか。」

ビックリ。

そうか、そうかも。

切るための、今だ。

「毛が邪魔で、切って下さい。」

これって意味、通じるの。

その間も、髪を梳かし、スプレーで、濡らしている。

「くせっ毛ですね。」

鏡越しに、ニッコリされる。

慌ててしまって、声が出ない。

コクリと頷く。

もう、おまかせです。

心の中で悲鳴。

きゃー、そんなにザックリ。

顎の下ぐらいで、切られた。

ドサドサと髪が落ちる。

伸びていた前髪も、パッツン。

音が凄い。

ジャキジャキ、バツバツ。

聞いた事の無い音が聞こえる。

ザックリ切り落とすと、ササッと、整える。

で、掃除機で吸われた。

ついでに、ケープの上のも。

両手を使い、優しく髪全体をクシャクシャにして、空気を入れてる。

「こうして、ふんわり感出してから、毛先にワックスすると、形が出ますし、可愛いですよ。」

確かに、くせっ毛が生きてる。

押さえつけられた髪型ばかりしていたのが、わかる。

「フレンチボブって、最強なんです。

特にアゴのラインが出ると、シャープな印象の中に、女性らしさが際立ちますよ。」

前髪にも、ワックスが。

「ここは遊んでくださいね。

おろしても、分けても、軽くあげても良いですよ。

しっかりキープしたい時は、スプレーですね。」

形が、出てる。

なんだったの、前までの3時間って。

確かに、シャンプーもカラーもしてないけど。

「よろしいでしょうか。」

思わず、うなずく。

ケープが取られ、タオルが外され、籠から、バックが現れ、イスから、降り、お会計を済まし、コートをもらったら、本気で30分だった。

全て込みで。

で、次の人が、あのイスに。

さっきまでの大量の髪の毛は、床の穴に履き入れられて消えている。

まるで、イリュージョン。

店の外に出た時、嬉しかった。

ここに来る人は、皆そうだろう。

単純に髪を切りたいだけ。

牛丼屋並みの早さと満足感。

雑誌なんて読む暇無いし。

ウキウキで帰宅。

サッパリしたし、掃除機で吸われてるから、切った毛が刺さってなくて、納得。

バツバツ切ってる時、切ってる方も楽しそうだったな。

シャワーから出て、鏡を見ると、小学生の自分が現れた。

軽く乾かすとくせ毛が、ウエーブを作る。

前までは、これを引っ張りたおして、伸ばしてたけど、自由。

耳の下あたりで、フワリと遊んでる。

痒く無いし、楽。

オカッパ頭って、凄い。

ビールで乾杯しちゃった。

サラダを作りながらあれこれ思う。

なんで、あんなに疲れてたのか、考える。

髪を切ったりなんだり、緊張してたのに気づく。

それを3時間もしていたのだ。

疲れない方が不思議。

でも、そんなもんだと思ってた。

小さなハサミで、チョコチョコ切ったり、宇宙人にさらわれたみたいな格好で、スチームトリートメントして、雑誌やお茶やおしゃべり。

そういった事が好きな人もいるだろうけど、時間がもったいなかったし、腰が痛かったのだ。

レンジで冷凍庫から出して温めたヒレカツを適当に切って、サラダの上に乗せる。

これをドレッシングとマヨネーズで、食べるのが好き。

今日はトマトもキッチンバサミで切ってやったから、彩りも綺麗。

この上に粉チーズと黒胡椒プラスすれば、かなり美味しくなるし、皿1枚がありがたい。

食器洗い好きじゃ無いし、ためると、気分が落ちて、こんな料理もどきも作りたくなくなるもんね。

カツは半分残してあるから、明日の弁当用。

夕飯にお米を食べなくても、満足感のあるのにしてから、5キロ痩せたし。

携帯、チェックしてから、寝た。

起きると、髪はグチャグチャ。

まあ、そうだよね。

歯を磨いて、顔を洗って、ついでに、頭を両手でグリグリっと。

程よく湿ってから、櫛を入れる。

昨日のあの担当の女の子みたいに、ワックスを毛先につける。

前髪は、適当。

それでも、切り口が気持ちいい。

髪の毛の切りたてって、良いわ。

手洗いしてから、お弁当作り。

切って冷凍しておいた玉ねぎをフライパンに放り投げてから、麺つゆと適量の水。

玉ねぎに火が通ったら、昨日のカツを、適当にね。

1回ひっくり返して、味を衣に吸わせたら、溶き卵。

余り汁気があると、下のご飯がベチャベチャになるから、そこのとこは、しっかり考えてある。

その間に、冷凍ご飯をチン。

お弁当箱に、ご飯、醤油少々で和えた鰹節、海苔をのせて、カツの卵とじを。

あとは隙間に、味付き昆布やしば漬け入れておしまい。

朝ごはんは、チーズと珈琲。

足りなければヨーグルトをプラス。

もう一回、歯を磨いてからお化粧。

春先でまだ朝は寒いから、スヌードを巻く。

コートは軽いのにしたし、ロングブーツはやめて、アンクルに。

バックは、お弁当入れて、昨日と同じの。

外に出ると、いがいに風が強い。

スヌードを巻き直して、耳を隠すと、暖かい。

髪が軽いから、気分が良いし、背筋が伸びるみたい。

今朝は、風に吹かれて、困ってる女子の多い事。

昨日までの私だわ。

今日から、4月。

フレンチボブで、仕事もプライベートも頑張るぞ。

ふんわり揺れる毛先に、花の匂いが届いた気がした。

今は、ここまで。

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