表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月夜と黒猫  作者: 陽夜
第1章
10/24

Mission8 start

長らくお待たせしました!ようやく再開です!

「凜ー? 置いてくよー?」


 玄関で叫ぶ海に「待ってー!!」と返しながら、あたしは急いで歯磨きを終わらせる。


 制服は朝食前に着てしまってあるので、あとは汚れないように、と外しておいたネクタイを締めるだけだ。

 未だ慣れない結びに若干あたふたしながらなんとか終え、鏡で一応身支度を確認する。


「これでよし……っと」


 慌てて洗面所を飛び出し、自室に戻って鞄を掴み取る。

 そのまま勢いよく階段を駆け下り、まだダイニングにいる人達に向かって「行ってきまーす!!」と言って外に出た。

 閉まる直前のドアの向こうから何人かが「行ってらっしゃーい」と返してくれているのを聴きながら、あたしは海と合流する。


「もう、出るって決めてた時間ギリギリじゃない」


 皆呆れ返ってるよきっと、と海。

 そのみんなの中には海も含まれてるんだろうなあ……と内心思いながら、口では「なかなかネクタイが結べなくってー」と軽く謝りながら返す。


「大体凜はいつもギリギリ過ぎ。もう少し早く起きるとかさ、何かしら工夫しようよ」


 全く、全然学習してくれないんだから……とブツブツ言い始めたこれは確実に長引くコースだ。


「あ、そうそう! 今日は待ちに待った学科別授業の日だよね!」

「確か午後の二時間だったっけ? 楽しみだなー!」


 強引にそらした話題に、なんとか海はのってくれたようだ。いかにも待ちきれない! といったような表情を浮かべて、キラキラと目を輝かせている。

 よかった、これで道中海の怒りをくらわずに済む……と思っていたら、結局「それとこれとは話が別!」と言われてきっちりお叱りを受ける羽目になったのだった。





 学園に編入して二週間が経つ。荷物の整理もようやく終わって、テールでの生活にも慣れ始めてきた。


 五月になったら足りない物──例えば圧倒的に少なくて困った服とか──を買いに街の方に繰り出そうか、と計画しているところだ。

 まだ家で荷造りをしていた時に、「なんでこんなに服がないの!?」と驚いたのは記憶に新しい。

 それもそのはずだ。あれ以来五年間、必要最低限の服しか買ってこなかったのだから。

 お金は一応家に残っていた全財産を持ってきたものの、そこの心配はなさそうだった。どうやら(ソワレ)メンバーにはお小遣いと称してお給料が支給されるらしいのだ。残高が気になっていた両親のお金を使わないで済むのはありがたい話だった。


 学校の方では普通の学力テストと、各々の実力を確認するための実技テストが行われた。

 学力テストは……うん、まあそこそこの出来。

 あたしの実技テストは動く的を三十秒以内にどれだけ正確に撃ち抜けるか、というもので、そこで久しぶりに愛銃のSIG SAUER P220を手にした。

 実弾を撃つ反動が久々過ぎたのと、不規則なスピードで動く的に多少戸惑ったものの、無難にこなせたとは思う。できることならやり直したいところだけども。


 他にも体力テストやら健康診断やら、この学園の性質故かやたらと細かいチェックがなされた。それはもうめまぐるしい忙しさで、気付いたら二週間が過ぎていた感じだ。


 数日前からは授業も始まり、今は勉強が遅れないようにしなければ、と意気込んでいるところである。


 そして今日はお待ちかねの学科別授業。五限・六限とタップリ本科授業が受けられる。別の日には一時間副科授業があるので、そちらも楽しみだ。

 副科、というのは自分の主武器の補助として使う攻撃手段を学ぶ授業で、副科武器、副科魔法、副科治療の三種類から選ぶ事ができる。

 基本は武器科の人は副科魔法、魔法科の人は副科武器……といった感じで本科と逆の科の授業を取るようなので、あたしもそれに習って副科魔法の授業を選択した。

 治療、というのは治癒魔法の素質がある人のみが取れる授業らしい。健康診断ついでの簡単なテストで適性が認められた人が受けられるとかなんとか。


 ちなみにそのテストというのが、中空のソフトボール大の大きさをしたガラス玉に手をあてるだけの簡単なものだった。

 どうやらそれだけでどういった魔法に一番素質があるのか分かるらしく、あたしの場合はガラス玉の中で火花が飛び、オレンジ色の火の粉が舞っていた。意外と綺麗で、思わず見とれてしまったものだ。

 多分これで火が見えたということは、あたしの魔法適性は炎……ということなのだろう。魔法についてはよく分かっていないから、そこら辺はなんとも言えないけれど。

 ちなみに海の時は水飛沫が上がり、ゆかりの時は小さなつむじ風が起こったらしい。要するに2人の適性は水と風といったところだろうか。

 何にせよ、魔法についての知識を全く持ち合わせていない現状では、推察してもどうしようもないことだ。副科授業を楽しみに待つ他あるまい。


 ……まあそんなこんなで午後への期待を膨らませながら、午前中の授業に励んだのだった。





 そしてお昼も終わり、とうとうその時がやってきた。

 あたしと海、そして澪は一階の中央にある女子更衣室でトレーニングウェア──体育着とはまた別の、動きやすい服装だ──に着替え、実技訓練棟へ向かう。

 バスか飛行魔法で移動、というのは演習林や街での実践演習の話で、重要な建物は大体本棟の近辺にある。だから今回の移動も全て徒歩だ。


 例の如く澪に案内してもらい、三人で話しながら歩く。

 澪は小1の時に学園へ来たらしく、テールのことをよく知っていた。街は六つに分かれてて、それぞれの地区ごとに特徴があるよーとか、メールに出店してるお店もあるから、探せば知ってるお店も見つかるかもよ? とか。


「ゴールデンウィークにお出かけ?」

「そうそう。全然服持ってなかったから買いに行こー! って話になって」


 首を傾げて尋ねる澪に、あたしは軽く相槌を打ちながら答える。


「もし予定がなければなんだけど、街の方も案内してもらってもいいかな?」


 と、海。これは元々決めてあったことだ。休日に寮で街まで案内してくれそうな暇人は見つかりそうになかったし、澪に頼むのが一番だろうという話になったのだ。

 澪は少し考える素振りを見せたものの、「私でよければ案内するわ」と快く引き受けてくれた。他にあてもなかったので、嬉しい限りだ。


 その後もいくつか他愛のない話をしていたら、いつの間にか目的地へと着いていた。

 1階はロビー兼大型コロシアムのようになっていて、既に到着していた生徒達がめいめいに話をしている。


「じゃあ私はここで」


 小さく手を振る澪にこちらも応えながら別れる。澪は魔法科で訓練棟二〜五階、あたし達は武器科なので六〜十階だ。どうやら武器科と魔法科では武器科の方が若干人数が多いらしい。


 本来なら両科とも二階か六階で受け付けをして各自預けてある武器を受け取るのだが、あたしと海はそれがない。

 エレベーターで六階まで上がり、なるべく人目に付きにくい隅の方へ移動する。

 そして懐からトランプより縦が少し長い感じのカードを取り出し──そこから武器を出した。


 このカードは(ソワレ)特権で隊員全員に支給されている物らしい。様々なものを収納できる魔法の鞄のようなもので、武器や保存食などを簡単に持ち運ぶことができる。

 一般生徒は普段武器を持ち歩かず、訓練棟の管理室に預けているのでそんな装備は必要ない。けれどあたし達(ソワレ)はいつ任務で戦闘になるか分からない。だからそのための必需品だ。

 ただその特例を一般生徒に知られるのはあまりよろしくないようで((ソワレ)のことは詩音にも釘を刺されたように箝口令が敷かれているからだ)、あたしと海は端の方でそれぞれの武器……拳銃二丁とレイピアを取り出したのだった。


 不審がられないように平静を装って中心の方に戻る。

 六階は初等部から高等部までの武器科生徒でごった返している。背の高い人、低い人。見るからに小さい子、明らかに年上の人。武器も様々だが剣の人が多いだろうか。銃を使う人は──見た感じいなそうだ。


 とりあえずここを脱出するため、二人して今度は階段の方へ向かう。自分がどの階の訓練室で訓練なのかは事前に知らされてあるので、もうここに留まっている必要もないだろうと考えたからだ。

 エレベーターは沢山の人を乗せるために忙しく動いていたので、階段を使って上へ行った方が早い。



「凜さん、海さん」


 階段へ向かう途中で声を掛けられて振り向くと、花音が笑顔でこちらへ手を振っていた。隣にはゆかりとりまと──そしてなぜか詩音がいる。


 海と顔を見合わせてそちらに合流する。もう既に皆武器を取り出してあるようで、手に薙刀、打刀を持ち合わせて……あれ? りまは何も持ってない?

 あたしの疑問に答えるように詩音が口を開く。


「ばーか。りまは呪歌で闘うから武器は持ち合わせてねーよ」

「馬鹿って何よ馬鹿って! 普通に言えばいいでしょ!?」

「顔に出てる時点で間抜け面だって言ってんだよ。ポーカーフェイスくらい身につけろよな」


 開口一番のいつも通りの罵りにイラっとして、思わず突っ返してしまう。


「お兄ちゃんはいっつも仏頂面だけどねー」

「しおりんは……むっつり……」


 すると花音が話をまぜっ返すように、そしてりまがボソッと呟く。


「おい待てりま。誰がむっつりだ」


 流石に聞こえたのか、詩音がりまを問いただす。


「いーじゃん事実でしょ? おにーちゃん?」


 花音がさらに追い討ちをかけると、詩音はチッと舌打ちをして妹の頭を掴んだ。


「お前今度覚えとけよ?」


 あっ結構ガチなやつだこれ。目がいつもより据わっている。


「わーん許してー」


 花音の棒読み台詞を聞いた詩音はもう一度舌打ちをして、そのまま階段の方へ歩いて行った。


「いつもこんな感じなの?」

「うーん、まあ仲が良いんだからこれはこれで良いんじゃないかな?」


 隣にいたゆかりに耳打ちすると、ゆかりは苦笑しながら、何とも言えないコメントをした。ゆかりがそう言うのなら多分大丈夫なのだろう。多分だけど。


「あっ、呼び止めたのにこんな茶番繰り広げててごめんなさい! 途中まで一緒に行きましょ?」


 花音が一瞬で元に戻って歩き出す。(ソワレ)の学生隊員は訓練室の場所が固められているので、目的地は一緒だ。


 階段を使って、十階の東奥の訓練室まで向かう。呪歌のりまと拳銃のあたし、そして薙刀のゆかりは一人用の訓練室、打刀の詩音と花音、そしてレイピアの海は複数人が入れる少し大きめの訓練室だ。


 途中で前から金髪に赤い瞳をした少女とすれ違った。学校に通っている年のはずで、ここに出入りしているという事は関係者のはずなのに彼女はトレーニングウェアはおろか、制服すら着ていなかった。

 赤い服と金色の髪のコントラストが妙に目に焼き付いて、しばらく脳裏を離れなかった。



「じゃあ頑張ろうねー!」


 おおー! と拳を上へ突き上げた花音の声を皮切りに、各々自分の訓練室へと入る。

 あたしも少し緊張しながら、掌を生体認証装置にかざしてドアを開く。

 プシューッと音を立てながら、無機質なスライドドアが開く。なぜかこんなところだけハイテクだ。


「失礼しまーす……」


 恐る恐る足を踏み入れると、背後で自動的にドアが閉まる。

 そして目の前に立っていたのは、彫りの深い五十絡まりの男の人。


「お嬢ちゃんが銃使いの珍しい子かい?」

 黒い眼帯をしたその人はあたしを見てにこりと笑った。




1000hit記念絵を拍手の方にupしています。お気軽に拍手お願いします!


2017.4.27訂正

誤:3階の更衣室

正:1階の更衣室

すみません、設定整理したらこんなアホなミスをやらかしてましたorz

その他矛盾点を変更しました


2017.5.23訂正

最後に出てきた謎の男の人の口調直しました


2023.7.9訂正

現在の書き方に合わせて改稿しました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ