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朝〜ファルとの喧嘩〜




 ──瞬間、エルナの顔が紅蓮に染まる。




「ザヨゴオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォッ!?」

 一瞬タイムラグがあったかと思うと、謎の叫び声を上げながらベット上をのたうち回り始めるエルナ。口から迸る痛みのせいで暴れ回らずにはいられないらしい。

「あ、あひゅい! あひゅい! いひゃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!? にゃ、にゃにたれひゃへひゃんれしゅか、ひゃおうひゃん!!」

「やっと目が覚めたか。それとここではリントの言葉で話せ」

「ひみがわひゃりまへんよっ!!」

 もう呂律が回らないくらい舌を真っ赤に腫らして怒り出すエルナだが、そのせいもあってか完全に目が覚めたようだ。

 ちなみに、今さっき口に突っ込んだのは実家の婆ちゃんお手製のgot to be strong、もとい辛味噌。婆ちゃん曰く、小匙一杯の辛さは唐辛子10本分らしい。

 ここまでされないと起きないとは、デストリヴァイスのエルフは化け物か。

「ひょ、ひょれよりも、みじゅくらひゃい! くちのなかがあちゅくててゃみゃらにゃいんれすぅ〜!!」

「だったら下に降りろ。サーシャが飲み物用意してっから」

「わ、わかりまひひゃ──ぶぺっ!?」

 口内の痛みを鎮められるオアシスに向けて駆け出したエルナだったが、早速ドジっ娘属性が発動しズッコケた。一体どうやったら何も無いところで転ぶのか理解に苦しむぞエルナ。

「おい、大丈夫か?」

「ら、らいひょわひゃいれす……。お、おうってくらはい……」

「全く、しょうがないな……ほれ」

 口内の辛さのせいでとてもじゃないが歩けなさそうなので、仕方なくおぶってやる事にした。あぁ、ますます時間が削がれていく……。

 俺の中ではとっくの昔にみんなとゆっくり朝ご飯食ってるはずなのに、このままだと食い始められるのはまだ先になりそうだ。

 しかもエルナだけならまだしも、ダルエルのやつがまだ戻って来ない。最悪、あいつ抜きで飯食う羽目になるかもしれん。出来ればみんなで一緒に食いたいが、そん時は仕方が無い。

 みんなと笑顔で一緒に飯を食えたら、どれだけ心が軽くなることか……。

「だったら何故居候の1人にこんな仕打ちをするのだ勇者っ!!」

 そんなツッコミが聞こえたかと思うと、身体中何故かズタボロになっているファルが目の前に立ち塞がった。

 息を荒げ、眼は血走り、歯を剥き出して唸り完全に怒りモードのご様子の魔王様。一体なんでそんなに怒っているんだあいつ?

「どうしたんだよファル、そんなに怒って? 俺がなんかしたか?」

「さっきあれだけフルボッコにしておいて、どの口が言うかーっ!!」

 あ、もしかして起こしに来た時のボディーブローからさっきの右足スタンプまでの一連の行為の事を言ってるのか? だったらスマン。

「分かっているのなら最初から謝れっ!! 貴様、さっきから我の存在をドブに投げ捨て続けた上に、そこから這い上がろうとする度蹴落としおって!! 一体この我を何だと思っているのだっ!!」

「ロリショージョだ!」

 この言葉以外選ぶ言葉が見当たら無いので、キッパリと言ってやる。

「貴っ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! どこまで我を侮辱すれば気が済むのだっ!? もう1度そんな事言ってみろっ、我は貴様をぶっ殺すっ!!」

「いや、お前にデストリヴァイスで何百何千年、何世代にも渡って虐げられてきた人たちから見ればこんなのまだ足りないと思うぞ?」

「うっ……! そ、それは……」

 俺が何の前触れもなく放った一言で、一気にファルの語気が引いていく。反省したとはいえ、流石に自分のしていた事に罪悪感は感じていたようだ。

 いや、"反省したからこそ罪悪感を感じるようになった"、の方が正しいか。

 ──それでもファルの暴政は反省程度で済まされるものではないが。

 俺達に倒される前のファルは、本当に私利私欲を肥やすだけの狂王。民の嘆き、恨み、怒り、怨嗟の声など雀の涙程も感じていなかったに違いない。

 腹が減れば空腹に飢える民に自分専用の食物を作らせ、暇な時は目の前で戦士達に殺し合いをさせ、自らの意にそぐわ無い者がいれば容赦なく首を落とす。




 これが狂王と言わずなんと言えようか?




 しかしその狂王も俺達に討たれ、戦いで崩れ落ちた城から自らの眼で荒れ果てた大地を眼にした事で自らの行為全てを後悔した。

 そして止まらぬ涙と共に、今までの自分と決別した──はずだった。

 その結果が目の前の"コレ"である。

「それに、あの一連の流れはドア壊した分と俺を不意打ちした分、そしてその不意打ちで関係無いサーシャを巻き添えにした分だ。充分妥当だろ?」

 一応サーシャは俺が巻き込んだようなもんだが、ついでにファルに(なす)りつけとこう。そもそもあいつが不意打ちして来なけりゃ巻き込まれなかったんだし。うん、ファルが悪いな。

「ふ、不意打ちでお前を亡き者にしようとしたのは認めるっ。それとあの外見年齢詐称(三十路前)猫の件もだ」

 あん時俺を亡き者にしようとしていたのかお前は。お仕置きとしてサーシャに今の発言した事チクってやる。

「だがそれだけでさっきのフルボッコは差し引けるだろう! 扉を壊したくらいでフルボッコなぞ、短期にも程があろう!!」

「ほぅ……なら逆に言ってやる。お前がドアを壊したせいでいくら金が飛ぶと思ってんだ? 軽く数万円は飛ぶわっ!! 修理代払うこっちの身にもなれ!!」

 思えばこの3日間、ファルの部屋の扉は様々な方法で既に数回壊された。

 最初の数回はヒンジが飛ぶだけで済んでいたが、中盤からはドア自体に亀裂を走らせたり真っ二つに叩き割ったりとやりたい放題。昨日の夜までは適当な板も木工用ボンドでの修復で事足りていたが、今日の朝のでドアは木っ端微塵。新しくドアを買い換え無いといけ無いのだ。

 それをご丁寧に俺の小遣いからきちんと精算して払ってやってる分、俺の負担はそれなりにかかっているのだ。というか修理用の板買ったせいで今月の小遣いが底をついた。ラノベの新刊買いたかったのに、畜生。

「むぅ……そ、そこまで言うなら謝る。すまなかった」

 ……なんかあっさり謝ったな。さっきまでみたいに反論して怒るかと思ったが、意外だった。

「ま、俺もちょっとやり過ぎたわ。すまん」

「ふっ。だが、貴様が封印した我の魔力を取り戻すのは諦めんからな?」

「いいだろう、何度でも返り討ちにしてやるよ」

 気付けば、俺達2人はさっきまで怒りをぶつけ合っていた事を忘れて、笑い合っていた。




「ひゃ、ひゃおふひゃん! わはひほほほわふえへまへんは!?」




 ──背中に背負ったエルナの事を忘れて。




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